○半導体の産業史① 【半導体は誰によって考案されたのか?】
初期の頃のコンピュータは、今日のものとは違い半導体ではなく真空管を用いていました。故に体積は大きく処理速度は遅く、全く実用的なものではありませんでした。このような状況下で、日本人の江崎博士が、2種類の合金を組み合わせた場合の電気特性から、真空管に変わるダイオード(半導体)のアイデアを考案し、後にノーベル賞を受賞したのです。
しかし、江崎博士のアイデアを実用化したのは日本ではありません。アメリカの企業が産業用に実用化し、世界は本格的なコンピュータ社会へと進んで行きました。スタンフォード大学を中心としたシリコンバレーに集うアメリカの産学(産業界と学術界)が世界を牽引し、モトローラやインテルなどのアメリカ企業が世界の半導体シェアの殆どを握っていたのが1980年代初頭までです。
○半導体の産業史② 【アメリカの衰退 と 日本の台頭】
1980年代になって、LSI(大規模集積回路)が製造されるようになり、アメリカの技術者は、製造技術より設計技術を重視するようになってゆきました。ホワイトカラーの主張がブルーカラーの主張を抑え、製造技術者の志気を押し下げたのです。
しかし半導体の信頼性のネックは実は製造技術にあったのです。1980年代中盤から、アメリカが日本に遅れだした原因は、基本的にはアメリカの判断ミスですが、具体的には製造技術の軽視にあったのです。
○半導体の産業史③ 【世界一となった日本の奢り】
1986年から1991年までの6年間、日本の半導体シェアはアメリカを上回り世界一となりました。日本の産業界はこれに安住し、従来の経験と勘に基づく設計生産技術に執着し、学術的に裏打ちされたパーフェクトを目指してはいませんでした。
今日の半導体は、学術的理論限界のほぼ70%に近い性能を持っているのですが、アメリカを凌ぐ信頼性から世界一のシェアを誇るようになっていた頃の日本の半導体性能は、理論限界のわずか30%程度だったのだそうです。
○半導体の産業史④ 【アメリカの復活 と 日本人研究者】
アメリカは自国の判断ミスに気付き、セマティックという生産技術に特化した産学一体の研究所を即座にスタートさせていました。この研究所に集う企業の中で、インテル社だけは従来の生産方法の見直しを考えていました。インテル社は、日本の東北大学で新しい半導体産業用の生産技術を作り上げていた大見博士に協力を要請しました。1987年のことです。これにより、アメリカの半導体産業は完全復活の基礎を再構築していたのです。
(江崎博士と大見博士の先見的なアイデアを先に産業化したのは、いずれも日本ではなくアメリカでした ! )
インテルの技術者は、「なぜ博士は、こんなことまで我々に教えてくれるのか」 と訊ねたそうです。これに対して大見博士はこう答えました。「日本の半導体技術は間違いなくアメリカから技術を教わってここまで育った。私はその恩返しをしているのだ」 と。
○半導体の産業史⑤ 【韓国・台湾の躍進 と その背景】
韓国のエレクトロニクス企業・サムソンの躍進には目覚しいものがあります。1990年代からのサムソン躍進の背景は、日本企業の東芝がエレクトロニクス事業から撤退していた時期に、東芝の技術者を高額の給与で引抜き採用していたという経緯もありますが、90年代初頭からサムソンの生産ラインの技術指導をしてきたのは、インテルを復活させたのと同じ大見博士であり、博士が教鞭を取る東北大学の技術が導入されていたことでした。
それは韓国のサムソンばかりではなく、台湾の半導体最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)なども同様です。
日本国内より先に、韓国・台湾に技術を提供してきた大見博士は、その理由をこう語っています。「日本人は欧米に負けてもあまり憤慨しないが、韓国や台湾に負けたら、本気で強い国になろうと努力するだろう。逆説的だが、韓国や台湾を強くすることが日本を長期間にわたって繁栄させる道である」 と。
○半導体の産業史<近未来> 【日本は必ず復活する】
大見博士の研究アイデアを実現するには、多くの産業技術が必要になります。高品質の半導体は、通常環境下のままで出来るようなものではないからです。エレクトロニクス産業以外の16社の技術複合集積化が必要なのだそうです。その中で、たった一つの技術がBクラスだと、完成品の半導体品質はBクラスになってしまします。異なる産業16社すべてにAクラスの技術を供給できる産業技術力を持った国は、現在の世界に日本、唯一国しかありません。産業技術の複合集積化によって作られた製造環境下で機械を用いるならば、半導体の性能は飛躍的に高まり、製品の多様化、製造期間の超短縮化を揃って実現できるのだそうです。
産業技術の複合集積化は、半導体産業以外でも必要不可欠な要因になっています。故に日本の優位は半導体産業以外にも及びます。「人件費の安い中国に企業が流出し、日本の産業は空洞化する」 という悲観的な意見を語る人々がいます。しかし、日本の産業技術力は、半導体産業が勃興する以前から人手を介さずに圧倒的な高付加価値の製品を作ることを実現し続けてきているのです。
「恩を仇で返そうとする恥知らずな反日国家」 に対するセキュリティー対策が万全でありさえすれば、日本の繁栄に死角はありません。
<了>
出典は、こちら、
2026年以降の半導体