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 このタイトルのゴルファーを私は知らない。聞いたこともない。第二次世界大戦を挟んだ時期、圧倒的な強さを誇ったゴルファーだという。
小説のように記述されているので、とても読みやすい本だった。
 
 
【ゴルフの本質】
 かつて、ある記者が、「ホーガンはゴルフの本質を体得した」 と書きました。確かに、ある時期はそうだったのかもしれません。しかし、他の多くの記者と同様、彼にはゴルフの本質というものがわかっていなかったのです。ゴルフが私の本質を明らかにしてくれたのです。 (p.263)

 

 

【ボビー・ジョーンズ】
 4大メジャーを制していたボビー・ジョーンズとホーガンがプレーする場面が描かれている。第6章である。
 ホーガンの人生にとっても、この本の中にあっても、おそらくここが要の部分であるようだ。
 ジョーンズは、ホーガンに具体的なことは何も答えず、「愛と恐れ」 について語っている。
 ホーガンとバル(妻)の会話。
「どうだったの?」
「うん、すばらしいラウンドだったよ。でも、ジョーンズは、僕が期待していたことについては話してくれなかった」
「何を期待してたの?」
「僕のフックを直すコツとか、完全なスイングの方法とかさ」
「それじゃ、ジョーンズはあなたに何を話してくれたの」
「バル、彼は、僕は今でも勝てるといってたよ」
「私も、そうあなたに言ってたでしょ、ベン」
「そのほかに、彼は何を話してくれたの?」
「愛と恐れについて、ずいぶん話してくれたんだ」 (p.138-139)

 

 

【愛と恐れ】
 優秀な成績を収めるようになった頃、濃霧の道路状況で大事故を起こし、再起不能かと思われたホーガン。ファンからの暖かいファンレターを見て、リハビリによる奇跡的な回復が実現していった。
 ジョーンズの語っていた、「愛と恐れ」 という言葉に形容される人生のありさまが、良きにつけ悪しきつけ、この頃からホーガンの人生に顕著に現れてくるようになる。ジョーンズは、まるで預言者のように、ホーガンの人生の未来に言葉を残していたという感じだ。
 並みのプレーヤーや、並みの人生を送っている人では、この 「愛と恐れ」 の顕著な支配力・影響力について強く思い至ることはないのかもしれない。極端な振幅で極度に左右にあるいは上下に振れた経験のある人が、冷静に自らの心を見通した時、初めてその支配力・影響力の何たるかを知ることが出来るのであろう。
 私は、「愛と恐れ」 の影響力について、ジェラルド・ジャンポルスキーという著者の手による 『愛と怖れ』 という本を、読んで知っているのみである。ジョーンズのように4大トーナメントを通じて体重がかなり減ったというような苛烈な人生体験によって認知しているわけではない。
 それでも、読書の効用はあるものと思ってはいる。
 
<了>