ただでさえ、真冬の極寒の寒さの中、いよいよ最後の冬将軍がやってきた。
武佐岳から吹き降ろしてくる北風は、それまでとは違っている。
流氷は、網走沖から斜里の海岸に接岸し、知床半島をグルっと囲んで、とうとう羅臼にまで南下してきた。
例年と同じ、去年よりも二週間ほど早い。
しばれるね。
氷が入ってきてるからね。
寒いでもなく、冷たいでもなく、痛いでもなく、痺れるでもない。
流氷の上を通ってくるのだろう今のこの時期の北風は、肌を細い細い針で突き刺してくるような、ピリピリとした刺激を感じさせた。
標準的な日本語では言い表せられない。
その土地の方言だけでしか伝えられないこの抽象度の低さは、ここの冬が季節の中でどれだけ長く、厳しく、そして美しいのかをよく表していると思う。
リアルゴールデンカムイみたいな師匠は、こんな寒さの中でも、結氷した湖の上で、テントも建てずに釣りをしている。
師匠(満78歳)はもはや、気力だけで身体が動いているような、永倉新八みたいな(土方歳三ではない)おじいさんだ。
おかげさんで、私のおやつは、毎日、毎日、毎日…干したコマイ(たまにチカ)だ。
塩をして一晩干して、柔らかいうちに焼いて食べるのも美味しいが、一晩で取り込まずに、カチカチになるまで外で干し続けたやつを金槌で叩くと、焼かずとも、小さいものなら骨までそのまま食べられる。
コマイは釣りたては、独特のクセのある臭いがあるのだが、クセの強いものほど、干すと驚くほど美味しくなるのは、魚の不思議なところだ。
芋とか、コマイとか、漬物とか、そんなんばっかり食べてると、たまに発狂しそうなくらい酸っぱいものを食べたくなる。
新鮮な青物が取れない体が、ビタミンCを求めるのは当然だ。
スーパーの果物売り場の柑橘類は、伊予柑、デコポンが、主戦であるが、その片隅に甘夏がちょこんと鎮座しているのを見つけた。
最近は、緑色のひよこちゃんのカッターが附属されてない。
でも、ちゃんと取っておいて良かった。
この嘴の長さが絶妙だ。
果実まで傷付けることなく、皮に切込みを入れられる。
脳天を突き抜ける酸っぱさを堪能したあとは、本命である皮の調理に入る。
3回ぐらい茹でて、グラニュー糖を入れて煮て、乾かす。
簡単だが、時間がかかってめんどくさい。
ほぼ砂糖の固まりだが、僅かな酸味と苦味が、その甘さを絶妙に中和して、手が止まらない。
大変キケンな食い物である。
これは、後日、山行のために取っておく。
糖分はシャリバテ(強度の疲労感)に即効性があり、ビタミンCは疲労物質の蓄積を防ぐからだ。





