イクラの味 | 想像と創造の毎日

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写真は注釈がない限り、
自分で撮影しております。

  例年よりもさらに秋鮭が捕れない。
  カラフトマスに至っては、ほぼゼロだというから驚きだ。

  そんな中でも師匠は、規制のためにごくわずかしか許可されていない釣り場の場所取りの為に、夜中に泊まりがけで出掛けていく。
  
  私も行きたいのだが、その壮絶な戦い(?)に参加する勇気がない。
  
  昔からのルールを守って釣る地元民と一見さんの間で起こる小競り合いを聞いていると、万年初心者の私がそこで上手く竿を投げられる自信がないのだ。

  それでも師匠は、私が行きたいと言えば、仲間たちにお願いして、いい場所を開けてくれるだろう。
  しかし師匠やその仲間たちに怒鳴られる覚悟はあるが、身勝手な釣り人たちとの小競り合いに耐えられる気がしない。

  そんなんじゃダメだ!と師匠はいう。
  自分が取った場所から絶対離れず、マナーが悪い奴には怒れなければ、鮭なんて釣れないぞ!

  …って、おい。
  小心者の私にそれができると思いますか?

  だけど、秋鮭釣りは、あらゆる釣りの中でも最高に楽しい種類の釣りだ。
  特に砂浜でのぶっこみ(おもりと餌をつけた竿を投げて待つだけの釣り。投げ釣り)ではなく、ゴロゴロとした岩場での、釣竿を持ったまま投げては、リールを巻くことを繰り返す浮きルアーやフカセ釣りがすこぶる楽しい。

  かかったときのググッ!とくる重さ。自分が海に引っ張られてしまいそうなほどの引きで、ようやく自分の足元に手繰り寄せられたときのあの感動。
  特にオスは引きが強く、右へ左へと竿が引っ張られる。
  周囲の釣り人たちは、絡まるのを防ぐため、自分のリールを巻いて、頑張れ!と私に声をかけてくれる。
  揉めても、喧嘩しても、誰かが釣れるとなぜか嬉しくなるのが、秋鮭釣りのいいところだ(ただマナーが悪いやつはみんな無視する)。
  
  技術も去ることながら、コミュニケーション能力が試される。
  人間力を上げるなら、激混みの釣り場へ行くのが良いだろう(笑)。
  

50℃のお湯の中に入れる


  ここへ来て師匠ですら、まだ2匹しか釣れていない。

膜に箸をぶっさして、グルグル回すとイクラがほぐれる


  今年の飯寿司の分だけは、なんとか確保していただきたいところだ。


何度か水を入れて表面に浮いたゴミや皮を流す


 秋鮭って、正直別に美味くない。

 卵巣や性巣に栄養を取られるから、身がパサパサしている。

 同じシロザケである、夏に沖に回遊してくるトキシラズの方が、何倍も美味い。


イクラの量に対し、3%の砂糖を入れる


  けれども、山漬けにすると抜群に美味しいのも確かだ。

  がっちり塩をして、熟成させると旨味が凝縮される。

  脂が多いトキシラズでは、あの味は出ないだろう。

  保存性も低い。


木べらで優しく掻き混ぜると、白っぽかった色が鮮やかなオレンジ色に変わる


  自身では食えないいくらを作っていると、いつも虚しい。

  家族や友人たちのために作るのだけど、美味しそうに食べているのを見ていると、心底羨ましいと思う。


イクラの量の6分の1の醤油を加えて、一晩置く


  オレンジ色にピカピカ光るいくらは、一体どんな味がするのか?

  昔、少しだけ食べてみたことがあるけれど、プチッと弾けた粒からドロっとした脂が口の中に広がって、飲み込んだ途端に、喉が痒くなって、呼吸が苦しくなって、味わうどころではなかった。


その間、何度か掻き混ぜて、出来上がり


  ねえ、どんな味?どんなふうに美味しいの?

  私はイクラ以外の魚卵は食べれるし、どれも大好きだけど、イクラの方が美味しいの?


  そう聞くと、ほとんどの人が、イクラの方が美味しいと言った。


  粒が大きいから、弾けたときの脂の味が濃いらしい。


  それじゃあ、全然、わからない!

  茹でたイクラよりも、そんなに美味しいの??


  茹でたイクラは食べられる。

  汁物にするとめちゃくちゃ美味しい。

  そんなことをするのは、うちだけらしいが。

  釣り好きな父が秋になると毎日秋鮭を持ってくるので、イクラが嫌になるほどうちにあった。

  生で食べるのに飽きた祖母が、よく味噌汁や醤油汁に入れていたのである。

  しかしどうして、茹でると食べられると気付いたのか、よく覚えていない。


  生のイクラは、茹でたよりも美味しいの?とどちらも食べる娘にある日、聞いてみた。

  

  茹でたのも美味しいけど、生の方が断然美味しいよ。と娘は言った。


  私には食べてみたくても、絶対に知ることのできない味がある。

  例えば東南アジアの珍しい新鮮なフルーツとか、とれたてのホタルイカの踊り食いとか、ここでは味わえなくても、現地に行くことができれば食べられるだろうけど、イクラの味だけは、こんなに身近にあるのに知ることができない。

  私は釣れるのに!もらえるのに!

  美味しく味付けできるのに(たぶん)!

  世の中に、こんな悔しいことがあるか?!

  いや、ない!

  

  スプーンで混ぜながら、一口だけ!と口へ運ぼうとするのだが、病院行きになると自分が苦しいし、めんどくさいし、確実に具合が悪くなるのを承知で食べて、みなさんの保険を使うのも世間にご迷惑ですので、止めておきます。