映画『国宝』をご覧になりましたか?
世襲と非世襲の二人の歌舞伎役者の生きざまを描き、
興行収益は170億を突破し、
邦画実写作品第1位が目前の作品です。
主人公は、非世襲ながら、芸の道に命を捧げ、
歌舞伎界を上り詰めていく吉沢亮演じる喜久雄。
けれど、歌舞伎の世界というのは、
現然たる縛りがあって、
主役や良い役を張れるのは世襲の人のみ。
実際はとても難しいことなのです。
一般家庭の出身者は歌舞伎界に入るのも狭き門で、
良い役につくこともまずできません。
そんな中、養成所を出て、
三代目市川猿之助ひきいる澤瀉屋(おもだかや)に入り、
市川春猿として多くの役を演じ、
今は新派で河合雪之丞として活躍されている、
雪之丞さんの半生記が出版されました!

最初、「河合雪之丞さん、はて?」と思っていたのですが、
春猿のお名前は知っていました。
1990年代前後は、
猿之助の「スーパー歌舞伎」は大人気で
よくニュースで取り上げられてしましたし、
そこで活躍される美しい女形の春猿さんが
養成所出身であるのも聞いていたのです。
また十数年前に一時期歌舞伎に興味を持ち、
何度か歌舞伎座などに行ったとき、
春猿さんを拝見しました。
本では、雪之丞さんが歌舞伎に興味を持たれた幼少期から、
澤瀉屋での話、現在のお話までがつづられていて、
それがとても興味深くて面白くて、
ページをめくるのが止まらず、
一気読みしてしまいました!
雪之丞さんが養成所に入ったのは15歳の時。
今から40年前、昭和の終わり近くです。
養成所に入った人は、
「良い役は世襲の人のみだから、良い役にはつけない」
そう聞かされて、
納得した人だけが残っていきます。
歌舞伎と猿之助に憧れてこの世界に入った雪之丞さんも、
それは納得していました。
そして当時の歌舞伎界も「それが当然」でした。
けれど、猿之助は「実力があれば」と
非世襲である雪之丞さんもどんどん登用していきます。
それは、スーパー歌舞伎で人気絶頂、
「お客さまを呼べる」猿之助だからこそ、
できたことでもありました。
そしてそれが、歌舞伎界を変えていくことにもなったのです。
そのようなお話もとても興味深く。
また猿之助を深く尊敬する雪之丞さんの深い思いにも胸を打たれます。
「非世襲のくせに、いい役について」
そのやっかみもたくさんあったはずです。
けれど、それもさらりとかわして、
ひたすら
「お客さまに良いものを見ていただくため」
に、一生をかけて芸の道にまい進する姿。
そういう思いでいる方々たちが作る舞台、
見てみたくなります!
本には、「中の人」だけが知っている知られざる歌舞伎界のお話や、
舞台がもっと面白くなる見方、
さらには「本当の女よりも女らしい」と言われる
「女方が教える、現代女性へのふるまい方のアドバイス」
というのもあって、興味深かったです!
今の歌舞伎役者さんのことにも触れていて、
彼らの舞台にも興味がわいてきました。
映画『国宝』とはまた違った、
けれど本物の「非世襲の歌舞伎の女方」のお話。
映画『国宝』がもっと面白くなる!
「歌舞伎の世界」が近くなる!
「一生を芸に捧げている人」の強くて深い思いを知ることができる!
何よりも、雪之丞さんの語り口が、
とてもやさしくて分かりやすいので、
難しくなく面白く読むことができるんですよ。
いやー、良い御本でした!
歌舞伎に興味がある人もない人も、
おススメの一冊です!
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