この夏、静嘉堂文庫美術館で開催されているのは、
“元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開”という展覧会。
千葉県鋸南町に産まれた絵師・菱川師宣(?~1694)を主役に据えた展覧会です。
本展は全4部・・・・・正確にいえば、
劇場になぞらえて、全4幕で構成されています。
序幕の「主役は庶民!」でまず展示されていたのが、
重要文化財に指定されている《四条河原遊楽図屛風》。
師宣が登場するよりも前、江戸時代寛永期頃の屛風絵です。
画面の中央を流れているのは、鴨川。
その両岸には、女歌舞伎や見世物小屋といった、
当時の京都・四条河原の風俗が生き生きと描かれています。
師宣以前にも、庶民の姿を主題とした絵画はあったのですね。
さらに、序幕では、東京国立博物館が所蔵する、
菱川師宣晩年の代表作《見返り美人図》も出展されています。
(ただし、7月12日までの2週間限定展示なのでご注意ください)
菱川師宣《見返り美人図》 江戸時代・元禄元~7年(1688~1704)頃 東京国立博物館蔵
(注:展示期間は6/27~7/12)
作品としてはあまりにも有名なため、
そう言えば、不思議に感じたことがなかったですが、
美人図といいながらも、女性の顔はほとんど見えません。
実は、師宣は、美人そのものではなく、
元禄期当時の最新ファッションを描こうとしたのだそう。
確かに、ファッション誌にありそうなポージングです。
ちなみに。
ロビーには、《見返り美人図》の小袖を完全再現したものも。
こちらの小袖は写真撮影OK!
フォトスポットとしてご活用ください。
なお、絵画には描かれていない前側も再現されています。
こうして見ると、意外とポップですね。
元禄期のきゃりーぱみゅぱみゅみたいな人が着用していたのかもしれません。
・・・・・と、それはさておきまして。
続く第1幕「元禄!師宣劇場」が、本展のハイライト。
師宣最晩年の《十二ヶ月風俗図巻》が、
解体修理以来初、1巻まるまるお披露目されています。
本作は、江戸の町で暮らす人々の行事や風習を上下巻にわけて描いたもの。
前期では、1月から6月までの上半期が描かれた上巻が一挙展示されています。
実物を目にしてまず何よりも驚かされたのが、発色の美しさです。
まるで昨日今日に描かれたのかと疑ってしまうほどに色鮮やか。
これまでさまざまな図巻を目にしてきましたが、
歴代でも5本の指に入るくらいの華やかさがありました。
それから、やはり何と言っても、師宣の人物描写はさすがの一言。
図巻の中に、文(テキスト)は一切無いにも関わらず、
描かれている人々の感情や心情までもが伝わってくるようでした。
ちなみに。
《十二ヶ月風俗図巻》の画面のあちこちに、
《見返り美人図》と似た柄の着物の女性がいました。
よっぽど師宣はこの着物がお気に入りだったのでしょうね。
なお、《十二ヶ月風俗図巻》の下巻は、
後期(7/28~8/23)で一挙展示予定とのこと。
上巻と下巻、是非ともコンプリートしたいものです。
さてさて、第2幕は「菱川、宮川の流れ」。
こちらで特に見逃せないのが、師宣による重要文化財《歌舞伎図屏風》です。
菱川師宣《歌舞伎図屏風》 江戸時代 元禄5~6年(1692~93)頃 東京国立博物館蔵
(注:展示は6/27~7/26)
役者総出の華やかな歌舞伎演目『太平楽大おどり』と、
思い思いに楽しむ庶民の姿が画面いっぱいに描かれています。
(もちろん、あの着物の女性も!)
さらに、こちらの幕(章)では、師宣と、
同時代に活躍した杉村治兵衛らによる版画や絵本の数々も紹介されていました。
つまり、江戸文化のルーツは、師宣にあり。
しいては、千葉県にあり。
千葉県出身の身として、千葉県が少し誇らしく感じられた展覧会でした。


















