元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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この夏、静嘉堂文庫美術館で開催されているのは、

“元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開”という展覧会。

千葉県鋸南町に産まれた絵師・菱川師宣(?~1694)を主役に据えた展覧会です。

 

元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開展
(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

本展は全4部・・・・・正確にいえば、

劇場になぞらえて、全4幕で構成されています。

序幕の「主役は庶民!」でまず展示されていたのが、

重要文化財に指定されている《四条河原遊楽図屛風》

師宣が登場するよりも前、江戸時代寛永期頃の屛風絵です。

 

十二ヶ月風俗図巻屏風:元禄期庶民の暮らし
重要文化財《四条河原遊楽図屛風》 江戸時代 寛永期(1624~44)頃 (公財)静嘉堂

 

 

画面の中央を流れているのは、鴨川。

その両岸には、女歌舞伎や見世物小屋といった、

当時の京都・四条河原の風俗が生き生きと描かれています。

師宣以前にも、庶民の姿を主題とした絵画はあったのですね。

 

さらに、序幕では、東京国立博物館が所蔵する、

菱川師宣晩年の代表作《見返り美人図》も出展されています。

(ただし、7月12日までの2週間限定展示なのでご注意ください)

 

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菱川師宣《見返り美人図》 江戸時代・元禄元~7年(1688~1704)頃 東京国立博物館蔵

(注:展示期間は6/27~7/12)

 

 

作品としてはあまりにも有名なため、

そう言えば、不思議に感じたことがなかったですが、

美人図といいながらも、女性の顔はほとんど見えません。

実は、師宣は、美人そのものではなく、

元禄期当時の最新ファッションを描こうとしたのだそう。

確かに、ファッション誌にありそうなポージングです。

 

ちなみに。

ロビーには、《見返り美人図》の小袖を完全再現したものも。

 

見返り美人図の小袖を展示

 

 

こちらの小袖は写真撮影OK!

フォトスポットとしてご活用ください。

なお、絵画には描かれていない前側も再現されています。

 

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こうして見ると、意外とポップですね。

元禄期のきゃりーぱみゅぱみゅみたいな人が着用していたのかもしれません。

 

・・・・・と、それはさておきまして。

続く第1幕「元禄!師宣劇場」が、本展のハイライト。

師宣最晩年の《十二ヶ月風俗図巻》が、

解体修理以来初、1巻まるまるお披露目されています。

本作は、江戸の町で暮らす人々の行事や風習を上下巻にわけて描いたもの。

前期では、1月から6月までの上半期が描かれた上巻が一挙展示されています。

 

十二ヶ月風俗図巻の展示風景
菱川師宣《十二ヶ月風俗図巻》上巻 江戸時代 元禄元~7年(1688~1704)頃 (公財)静嘉堂蔵
(注:展示は6/27~7/26)
 
 

 

実物を目にしてまず何よりも驚かされたのが、発色の美しさです。

まるで昨日今日に描かれたのかと疑ってしまうほどに色鮮やか。

これまでさまざまな図巻を目にしてきましたが、

歴代でも5本の指に入るくらいの華やかさがありました。

 

十二ヶ月風俗図巻の船遊びの様子

 

 

それから、やはり何と言っても、師宣の人物描写はさすがの一言。

図巻の中に、文(テキスト)は一切無いにも関わらず、

描かれている人々の感情や心情までもが伝わってくるようでした。

 

ちなみに。

 

風俗図巻:十二ヶ月風俗図巻と見返り美人

十二ヶ月風俗図巻、浮世絵の師宣

 

 

《十二ヶ月風俗図巻》の画面のあちこちに、

《見返り美人図》と似た柄の着物の女性がいました。

よっぽど師宣はこの着物がお気に入りだったのでしょうね。

 

なお、《十二ヶ月風俗図巻》の下巻は、

後期(7/28~8/23)で一挙展示予定とのこと。

上巻と下巻、是非ともコンプリートしたいものです。

 

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さてさて、第2幕は「菱川、宮川の流れ」

こちらで特に見逃せないのが、師宣による重要文化財《歌舞伎図屏風》です。

 

十二ヶ月風俗図巻の展覧会展示

菱川師宣《歌舞伎図屏風》 江戸時代 元禄5~6年(1692~93)頃 東京国立博物館蔵

(注:展示は6/27~7/26)

 

 

役者総出の華やかな歌舞伎演目『太平楽大おどり』と、

思い思いに楽しむ庶民の姿が画面いっぱいに描かれています。

 

十二ヶ月風俗図巻 浮世絵の人々

十二ヶ月風俗図巻の庶民の暮らし

(もちろん、あの着物の女性も!)

 

 

さらに、こちらの幕(章)では、師宣と、

同時代に活躍した杉村治兵衛らによる版画や絵本の数々も紹介されていました。

 

菱川師宣の十二ヶ月風俗図巻の一部

浮世絵 菱川師宣 江戸風俗図巻

 

 

美術品としては、画巻や屛風絵のほうが見ごたえはありますが。
元禄期の当時師宣の人気を不動にしたのは当然ながら、
庶民たちが手に取ることができた絵本や版画だったわけで。
そういう意味では、師宣の魅力がより詰まっているのは、これらのほうと言えそうです。
 
 
本展のラスト、大詰となるのは 「元禄リバイバル」
師宣の実子や直系の弟子など、いわゆる菱川派とされる絵師もいましたが。
師宣の死後、英一蝶や宮川派といった、
師宣をリスペクトする絵師たちによっても、その作風が受け継がれました。
さらに、江戸の後期になると、琳派の鈴木其一も、
師宣にインスパイアされた元禄風の作品を描いています。
 

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鈴木其一《雪月花三美人図》 江戸時代・文政期(1818~30)頃 (公財)静嘉堂蔵
 
 
ちなみに。
そんな“元禄リバイバル”のきっかけを作ったのは、戯作者の山東京伝とのこと。
大田南畝が編纂したものを原型として、京伝が加筆した、
日本最古の浮世絵師伝とされる『浮世絵類考』において、
師宣が浮世絵の始祖と位置づけられたのだそうでした.。
 
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大田南畝 原撰 山東京伝 追考『浮世絵類考』 江戸時代 文政期(1818~30)頃 (公財)静嘉堂
 
 
これにより、「浮世絵の源流=元禄期の師宣」が定着。
多くの絵師たちが、元禄期を意識するようになったのです。

つまり、江戸文化のルーツは、師宣にあり。

しいては、千葉県にあり。

千葉県出身の身として、千葉県が少し誇らしく感じられた展覧会でした。

星星

 

 

 

 

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