この夏、アーティゾン美術館で開催されているのは、
“エットレ・ソットサス―魔法がはじまるとき、デザインは生まれる”という展覧会。
アーティゾン美術館開館以来初となるデザインをテーマにした展覧会です。
本展の主役は、エットレ・ソットサス(1917~2007)。
20世紀イタリアデザインを代表する巨匠です。
生誕100周年の2017年には、イタリアを含む各国の美術館で、
大規模な回顧展が開催され、近年、その評価はますます高まっています。
本展は、そんなソットサスを日本で初めて本格的に紹介するものです。
出展されているソットサスの作品は、実に100点以上!
これらはすべて近年になって、石橋財団が収集したものだそうで、
その一大ソットサスコレクションが、本展で初めてお披露目されています。
さてさて、本展は時系列に沿って、
全部で5つのセクションで構成されています。
まずセクション1では、1950年代後半のソットサスの仕事を紹介。
この頃の彼は、イタリアの企業と協働していました。
例えば、1957年にトスカーナ地方で設立された家具メーカー、ポルトロノーヴァ。
ソットサスは設立の翌年に、アートディレクターに就任し、
ストライプ柄のプラスチック・ラミネートで全面が覆われた、
現代の目で見ても斬新な家具を次々にデザインしました。
また、ソットサスを語る上で絶対に欠くことができないのが、オリベッティとの協働。
デザインコンサルタントとして就任した彼は、
伝説的なタイプライター「ヴァレンタイン」を生み出しています。
ボディに鮮烈な赤色を採用し、
あえて内部の構造を露出させたその大胆なデザインは、
単なるオフィス用品に、オブジェとしての魅力を与えました。
そんな本作は、近代デザイン史における最高傑作の一つとも称され、
MoMAことニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションにも認定されています。
続くセクション2では、1960年代の活動を紹介。
この時代、日本でも安保闘争が起こるなど、
世界中で反体制的な社会運動が展開されていました。
ソットサスもまた、反体制的な立場から、
“デザインはどうあるべきか”を深く問い直していたようです。
そんな中で初めてインドやアメリカを旅行し、カルチャーショックを受けます。
こうして誕生したのが、「トーテム」シリーズ。
構造物として、ただそこに存在するだけで成立する作品群です。
本展のハイライトともいえるのが、セクション3。
1981年にソットサスが立ち上げた前衛デザイン集団、
伝説的な「メンフィス」の活動を紹介するセクションです。
メンフィスは、若いデザイナーや建築家らが、
ソットサスの自宅で酒を飲んでいた際に結成されました。
グループ名は、結成の際にソットサスの家で、
繰り返し再生されえていたというボブ・ディランの曲,
『メンフィス・ブルース・アゲイン』に由来するするそうです。
当時のデザイン界の主流だったのは、
ドイツのバウハウスの流れを汲むモダニズムなデザイン。
それに対し、メンフィスのメンバーは、合理性を排除し、
ビビッドな原色や幾何学的パターン、非対称的なフォルムなど、
感情に訴えかけるようなユーモラスなデザインを重視したのです。
その斬新なデザインは、瞬く間に1980年代のデザイン界を席巻しました。
なお、メンフィスのメンバーは国際食が豊かだったのも特徴の一つ。
日本人では、ソットサスの盟友である倉俣史朗や、
国際的に活躍した建築家・磯崎新も「メンバー」に参加しています。
本展では、そんな倉俣による大理石テーブル《トウキョウ》も展示されていました。

ちなみに。
ソットサスに負けず劣らず、
斬新な本展の会場デザインを手掛けたのは、
クラマタデザイン事務所出身の五十嵐久枝さんです。
本展で特徴的な展示壁や展示ケースの筒状のものは、紙管とのこと。
シルバーで覆われているのは、ナフサ不足が原因ではありません。たぶん。










