現在、表参道のGYRE GALLERYで開催されているのは、
“SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体”という展覧会です
GYRE GALLERYで開催される展覧会は、
基本的に毎回、コンセプトが難解なのですが、
本展は史上最高難易度と言っても過言ではありません。
公式ホームページに掲載された展覧会概要によれば、
本展は、気候変動やテクノロジーの特異点を経た
「50年後の未来(2076年)」という視座から、
現代という時間を遡及的に審問(Retrospective Inquiry)する思想的実験場です。
物理的な光の分布としてのスペクトラムのみならず、
ジャック・デリダが提唱した「憑存在(ハントロジー)」における
亡霊(Specter)の多義性を探求します。
・・・・・とのこと。
10回くらい読み返してみましたが、
1つも意味がわからず、絶望的な気分になりました。
その後、公式ホームページにある『本展の核心』や、
会場で配布されていたハンドアウトのテキストなどを読んで、
なんとなくわかってきたのは、本展のいう「50年後の未来」とは、
絶え間ない降雨と大洪水によって人間不在の物質世界へと変貌した未来だということ。
その時代における“美”とは何かを問う・・・という設定の展覧会であるようです。

さて、まず会場の冒頭に展示されていたのは、
今年の下半期に森美術館での大規模個展が控える森万里子さんの作品です。
クリスタルそのものは無色透明なのですが、
照明が当たることで、クリスタルの先端や内部、
クリスタルが作り出す影に、美しい色彩が生まれていました。
実に幻想的なクリスタル。
『ファイナルファンタジー』シリーズの世界観を実写化したようなクリスタルでした。
続いて紹介されていたのも、キラキラとした作品。
名和晃平さんによる《PixCell》シリーズです。
《PixCell》シリーズといえば、鹿の剥製やカメラといったオブジェが、
その全体を無数のガラスビーズで覆われた立体作品の印象がありますが。
本展では、珍しい平面作品の《PixCell》シリーズが紹介されていました。
(正確に言えば、ガラスビーズが覆っているので立体ではあるのですが)
一体、どんな画像がガラスビーズに覆われているのでしょうか。
いちばんたいせつなことは、目に見えない。
『星の王子さま』のあの名言が頭をよぎります。
さてさて、森万里子さんや名和晃平さんといったベテランだけでなく、
本展では他にも、√K Contemporaryで個展が絶賛開催中の草野絵美さんや、
今注目の気鋭の作家たちも参加しています。
その中で特に印象に残っているのが、熊谷亜莉沙さん。
光と闇のコントラストが実に劇的で、
カラヴァッジョの絵画を彷彿とさせます。
これほどの実力の持ち主ながらも、
熊谷さんは1991年生まれで、本展の参加作家では最年少です。
杉本博司さんや須田悦弘さん、ソフィ・カルなどを扱う、
日本を代表する現代美術ギャラリーの一つ、ギャラリー小柳にて、
このキャリアにしてすでに、4度も個展が開催されているそう。
今後ますます注目が高まることは確実です。
なお、本展には熊井さんの油彩画2点の他に、ドローイングも出展されていました。
ドローイングでもその実力の高さをいかんなく発揮。
とりわけ水面と煌めく光の表現は絶品でした。
もう一人、印象に残っているのは、山田晋也さん。
山田さんは東洋思想に根差し、
日本画独特の技法によって抽象絵画を描いているそうで。
本展には、3点の抽象絵画が出展されています。
・・・・・と思ったら、展覧会のラストにもう1点。
まったく異なる作風の作品が出展されていました。
本展はホームページやハンドアウト、
会場内にも、やたらとテキストがあるものの、
肝心の作品についての説明はほとんど無し。
この作品についても《渡し》という題名以外わかりません。
床に何気なく置かれた小汚い靴も、
おそらく作品の一部と思われますが、もしかしたら誰かの忘れ物なのかも。
なお、掛軸に描かれているのは、
きっと三途の川を渡る女性なのでしょうが。
なぜか船頭は、鳥山明ロボみたいな恰好をしていました。
ちなみに。
本展にはもう一点、現代音楽の作曲家・池田謙さんによる、
《Disappearance of Baby-Mind(心身の消失)》も出展されています。
バッハやヴェートーベンの楽曲、雅楽や民謡だけでなく、
ヒトラーやガンジー、三島由紀夫、ドナルド・トランプの言葉、
松田聖子の『赤いスイートピー』やAKB48の『ヘビーローテーション』など、
さまざまな音がリミックスされたサウンドインスタレーションです。
展示室内に絶えず鳴り響いていたのですが、
音のトリップ感が強すぎて、酔いそうになりました。
















