■最後の伊賀者
作者:司馬遼太郎
出版社:講談社
発売日:1986/11/10
ページ数:320ページ
驚異的技能と凄じい職業意識を持つ怪人たち、
伊賀忍者はいかにしてつくられどのように生きたか。
城取り、後方撹乱、探索密偵等、
戦国の武器として使いちらされた危険な傭兵、
詐略と非情の上に成り立つ過酷な働きが、
歴史の動きに影響を与えた不思議な人間たちを、自在に描く短編等。
魅力溢れる7編を収録。
(講談社公式HPより)
「現在、府中市美術館にて、
東京の美術館では初となる長沢蘆雪の大回顧展が開催され、
連日、大行列が発生するほどの人気を博しています!
多くの人を引き付けるその最大の理由はやはり、
蘆雪の描くモフモフの犬、通称“蘆雪犬”の可愛さにあるのでしょう。
今ではすっかり蘆雪は、江戸時代を代表するカワイイ絵師です。
とはいえ、数年くらい前までの蘆雪は、
「奇想の絵師」の一人として、お世辞にも“良い”イメージはなかったような。
師である円山応挙に3回も破門されていますし。
そんな蘆雪の良からぬイメージを、
日本人に植え付けるきっかけの一つとなったのが、
司馬遼太郎が昭和40年に発表した『蘆雪を殺す』という物騒なタイトルの短編です。
どんな内容なのかずっと気になっていたものの、
ついつい先延ばしにしていましたが、この機会に読んでみることに。
『蘆雪を殺す』が収録されている短編集『最後の伊賀者』を手に取ってみました。
結論から言えば、この短編は、
蘆雪のマイナスプロモーションでしかなかったです(笑)
蘆雪は大阪の芝居小屋で変死しました。
弁当を食べている最中に、急にお腹を押さえて苦しみ出し、
やってきた医者に対し、「毒を盛られた」と語ったとされています。
食中毒だったのか。はたまた、他殺だったのか。
真相は闇の中ですが、司馬遼太郎は小説の中で、
蘆雪を恨む架空の人物による犯行を匂わせています。
タイトルの『蘆雪を殺す』は、それを含めて付けられたのでしょうが。
ただ、この小説で描かれる蘆雪は、プライトが異常なほど高く。
師匠や目上の人物に対して横暴なふるまいをするわ、
お金がないにもかかわらず、あえて立派な家に住むわ。
さらには、内縁の美しい妻を奉公人よばわりすることで、
“これだけの女を下女にしている”という、よくわからない見栄を張るわ。
もし、これが事実なら確実に炎上案件。
蘆雪は社会的に殺されることになるでしょう。
まさしく“蘆雪を殺す”小説でした。
なお、 この短編集には、与謝蕪村に師事し、
のちに京都四条派の祖となった呉春(松村月渓)を、
主人公に据えた『天明の絵師』も収録されています。
呉春の作品は良くも悪くも、そこまで個性的ではない気がしますが、
本作では、呉春を何でも器用にこなせるキャラクター設定にしていました。
しかも、器用だからこそ、面白みに欠ける人物という設定。
司馬遼太郎の描く呉春像が正しいか、正しくないかは別として。
この斬新なキャラ設定のおかげで、呉春という絵師に初めて興味が持てました。
ちなみに、田原藩の家老で絵師でもあった渡辺崋山は、こんなことを言っていたようです。
「(呉春の)絵を女人に例えれば、呉春の絵は妾のようなものだ。
媚びの技術がめだって吐き気をもよおす」
さて、余談ですが。
『蘆雪を殺す』と『天明の絵師』は独立した短編なのですが、
「なんだ、こんな冬瓜野郎か」、「なんだ、あんな冬瓜あたま。―」と、
どちらの作中にも共通して、冬瓜が悪口として登場していました。
どてかぼちゃに、おたんこナスに、頭がピーマンに。
野菜は何かと悪口に使われがちですね。
(星4つ)」
~小説に登場する絵画~
長沢蘆雪《方寸五百羅漢図》

