この春、国立西洋美術館にて、
リトアニアを代表する画家チュルリョーニスの、
日本で実に34年ぶりとなる大回顧展が開催されますが。
銀座メゾンエルメス ル・フォーラムでは現在、
リトアニアとアルメニアとにルーツを持つアーティストで、
作曲家のアンドリウス・アルチュニアンによる日本初個展が開催されています。
展覧会のタイトルの“Obol”とは、古代ギリシャ神話に登場する冥界の川の渡し賃。
古代ギリシャでは、この銀貨を死者の口に含ませる風習があったそうです。
日本で言うところの六文銭に近いものがありますね。
本展には、そんなObolをモチーフにした作品も出展されていました。
ところで、冥界をテーマにした本展では、
会場内に漆黒のように黒い作品が点在しています。
例えば、こちらの《Breakfast at Persephone's》。
ペルセポネといえば、ギリシャ神話に登場する春と豊穣の女神です。
彼女は冥界の王ハデスに一目惚れされ、冥界に無理矢理連れてこられました。
地上に帰ろうとするも、冥界のザクロを4粒食べてしまったため、
1年のうちに4か月だけは冥界に留まらねばならなくなってしまいます。
その期間が、地上における冬というわけです。
そんなペルセポネが命名された作品だけに、
黒い果物かごの上には、ザクロの形をした立体物が乗っていました。
・・・・・・・と思ったら。
本物のザクロなのだそうです。
表面を覆っているのは、アルチュニアンが、
作品によく多用するというビチューメン(瀝青)なる素材。
数百万年前の藻類が地中で圧縮されることで誕生する天然のアスファルトです。
日本では新潟市で採れるそうで、本作にはその新潟産のビチューメンが使われています。
なお、ビチューメンはゆ~~~っくりと動き続けているとのこと。
これらはつねに微妙に姿を変え続けているようです。
しばらく眺めてみましたが、どうにも動いているようには見えませんでした。
にわかには信じがたいので、会期中に何度か足を運んでみたいと思います。
さて、本展ではビチューメンを素材にした作品だけでなく、
《Chyron》というインスタレーション作品も展開されていました。
壁面の黒いアクリルに、英語と日本語で、
冥界を想起させるテキストがレーザーで投影されます。
しかし、それらのテキストの中には、文字が反転しているものも。
さらに、本展にはもう1点、
《Now We Rise and We Are Everywhere》という、
彼のサウンドインスタレーションが出展されています。
絶えず動き続けるビチューメンのように、
音は途切れることなく、ずーっと流れ続けていました。
「ビニョ~~~~~ン」というか、「ドニュ~~~~~ン」というか。
もちろん冥界には行ったことがないですが、
もし、冥界に音が流れているなら、たぶんコレです。
なお、アルチュニアン的には、“777”という数字が冥界っぽいそうで。
(日本人的には、むしろ超ラッキーナンバーですが)
この《Now We Rise~》は、777分続くのだそうです。
777分=12時間と57分。
メゾンエルメスの開館時間は、11時から19時までの8時間。
残念ながら、オープンから閉館までいてもすべてを聴くことはできません。
ちなみに。
本展は、冥界は冥界でも、
冥界のクラブをイメージしているのだとか。
そのことを知らずに、自分は日中に訪れてしまいましたが、
クラブ感を味わうのであれば、日没後に訪れるほうが良さそうです。












