岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問うための賞。
それが、岡本太郎現代芸術賞。通称TARO賞です。
プロアマ問わず誰でも応募可能で、国籍・年齢の制限はなし!
さらには、表現の技法も一切制限ありません!
高さ5m×幅5m、奥行き5m以内という規定さえ守れば、
平面でも立体でも何でもありの現代美術界のガチンコ賞レースです。
川崎市岡本太郎美術館の長期休館前最後となる、
第29回のTARO賞は前回を上回る644点の応募があり、
そのうち21人(組)がめでたく入選を果たしました。
なお、第29回からの新ルール(?)として、
第一線で活躍する現役作家が、ゲスト審査員として加わることに。
記念すべきその初回のゲスト審査員は、福田美蘭さんが務めました。
さて今回、大賞にあたる岡本太郎賞の栄冠に輝いたのは、
兵庫県出身の高田哲男さんによる《FUKUSHIMA5000》です。
その中で福島県沿岸部の浜通りを訪れた際、
除染土を詰めた黒のフレコンバッグが山積みになった光景に衝撃を受けました。
テレビやネットなどでは報じられない情報を発信したい。
そこで自分自身が見聞きしたものをドローイングで描くことに決めたそうです。
その数、実に5440枚!
震災の日から今日までの日付に相当する数だそうです。
これほど膨大な量がありながらも、まだ完全には復興できていないわけで。
発生から15年という月日の経過が、
長いようで短いようでもあることを痛感させられました。
続く岡本敏子賞に輝いたのは、
馬場敬一さんによる《死と再生のイニシエーション》。
かつて馬場さんは鬱を患っていたそうで。
その苦しんだ経験から生み出されたという独自の神話的世界を、
自我・髑髏・女神による三位一体の形式で体現した作品とのことです。
なお、木彫のようにもメタルのようにも感じられる、
不思議な質感を持つ素材の正体は、ダンボールを樹脂で塗り固めたもの。
その表面は木炭やアクリル絵具で仕上げられているようです。
“鬼気迫る表現”とはまさにこのこと。
美術館という空間で対峙しても、足がすくみましたが、
もし、この光景を廃墟の地下室で目にしたなら震えあがること請け合いです。
ところで、前回の第28回では、
特別賞受賞作品が、たった1点のみでしたが。
長期休館前最後の大盤振る舞いなのでしょうか、
今回は、なんと6点もの作品が特別賞に選ばれています。
それら6作品の中でとりわけ印象に残ったのが、
宇佐美雅浩さんによる《Manda-la in Hiroshima 80 years after the atomic bombing》です。
壁で仕切られた薄暗いスペースの奥に、
2点の巨大なプリント作品が展示されています。
そして、頭上を見上げるとそこには、エノラ・ゲイを彷彿とさせる爆撃機がありました。
そう、こちらは広島に投下された原爆をテーマにしたインスタレーション作品。
壁に飾られた左の写真は、広島市を舞台にしたもの、
右は、被爆者の救護に奔走した隣りの東広島市の人々を取材したものです。
どちらも画面内に要素があまりに多すぎるため、
合成写真やコラージュのように感じられますが、なんとCG一切なしの実写!
入念な構想と準備を重ねた上で撮影されたものなのです。
宇佐美さんは学生時代より25年近くにわたって、
この一連の「Manda-la」シリーズを制作しているのだそう。
たった1枚。されど1枚。
1枚の写真とは言え、隅々まで鑑賞すると、
長編映画を1本分観たような見ごたえがありました。
それと、もう一つ特別賞受賞作の中で、
強く印象に残っているのが、吉村大星さんの《丁寧な対話》です。
さらに、近づいて観てみると、未完成の部分があります。
これって、もしや・・・・・と思ったら、その“もしや”でした。
鉛筆や色鉛筆で緻密な描写をするアーティストとして、
“六本木クロッシング2007”の出展作家の1人に抜擢され、
57歳で遅咲きの画家としてブレイクするも、その6年後に突然逝去した吉村芳生。
吉村大星さんはその実の息子さんなのだそうです。
本作はその父の未完の作とまったく同じ寸法、構図、手法で描かれたもの。
父の意志を子が受け継ぐ。
壮大なドラマを見た気がしました。














