コレクションの舞台裏 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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埼玉県立近代美術館で開催中の展覧会、

“コレクションの舞台裏”に行ってきました。

 

コレクションの舞台裏展 埼玉県立近代美術館

(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

会場に入ると、まず目に飛び込んできたのは、美術品ではなく。

 

埼玉近美の学芸員机と展覧会ポスター

 

 

誰かの仕事机でした。
こちらは、本展を担当した学芸員さんの仕事机・・・というてい、とのこと。

そこからなんとなーく予想がつくように、

本展は美術館の舞台裏、すなわち学芸員さんの仕事にスポットが当てられています。

埼玉県立近代美術館のコレクションの総数は、約4200点。

その中から、学芸員さんがそれぞれの視点で収蔵品を選び、

調査研究の成果をもとに展示する、アンソロジー形式の展覧会です(一部借用作品あり)

 

最初のテーマは、「キスリングとアンドレ・ドラン ―来歴、画商、コレクターをめぐって」

こちらで掘り下げられていたのは、

20世紀前半のフランスで活躍した2人の画家の作品です。

1つは、キスリングの《リタ・ヴァン・リアの肖像》

 

埼玉近代美術館の絵画:女性の肖像

 

 

この絵のモデルであるリタ・ヴァン・リアの夫は、

パリでヴァン・リア画廊を営むレオナール・ヴァン・リア。

ヴァン・リア画廊は、シュルレアリスムの画家、

マックス・エルンストの紹介にも力を注いでいたそうで。

そんな当時の最先端のアートを扱う画廊だっただけに、

リタも最先端のファッショナブルな女性として描かれているようです。

 

そして、もう1つ紹介されていたのが、アンドレ・ドランの《浴女》

 

裸婦の絵画、埼玉県立近代美術館

 

 

この絵をかつて所蔵していたのは、コレクターであり、

美術評論家や画商としても活躍した福島繁太郎です。

父から莫大な財産を相続した福島は、

1920年代から 30年代初頭にかけて、パリに滞在しました。

モンパルナスを中心に画廊を巡っては、作品を収集する。

そんな羨ましいことこの上ない人生を送った人物です。

とそれはさておき、福島はある時、ドランの作品に心惹かれ、

それ以来、ポール・ギョーム画廊に通って新作を買い集めたそうです。

現在わかっているだけでも、ドランの作品を24点も所蔵していたとか。

埼玉近美が所蔵する《浴女》はもちろんそのうちの1点で、

1927年刊行の高村光太郎による『ドラン集』にも図版が掲載されているそうです。

 

 

続くテーマは、「田中保、アトリエへの招待 ―パリの新発見資料から」

フォーカスされているのは、ヒゲがダンディーなこちらの人物↓

 

男性のポートレート写真(埼玉県立近代美術館)

 

 

埼玉県に生まれ、シアトルとパリで活躍した画家・田中保です。

裸婦画に定評があり、「裸婦のタナカ」と呼ばれていたとか。

本展でも、これでもかとばかりに裸婦画が一挙展示されています。

 

絵画「コレクションの舞台裏」の女性と猫

美術館の裸婦画とイーゼル

 

 

ところで、2022年に埼玉近美で、彼の大規模な回顧展が開催されましたが。

その回顧展の情報に目をとめた人物から、驚くべき知らせがもたらされました。

田中が1924年から亡くなるまで17年間暮らしたパリのアトリエから、

書簡や写真、スケッチブック含む資料がまとまって発見されたとのこと。
それらの現物はパリから持ってこられなかったようですが、

本展では、学芸員さんによるパリでの最新調査の模様が紹介されていました。

 

 

さて、本展では他にも。

岩手県の盛岡に生まれ、盛岡で活動した、

美術家でもあり美術史の研究者でもあった村上善男や、

 

コレクションの舞台裏展示風景

 

 

日本における女性抽象絵画の先駆的存在で、

“アンチ・アクション”展でも紹介されていた田中田鶴子など、

 

埼玉県立近代美術館の抽象画2点

 

 

 

さまざまな作家にスポットが当てられていましたが、

個人的にもっとも印象に残っているのは、細田竹なる女性画家です。

本展を通じて初めてその名を知りましたが、それもそのはずで、

“美術史上に名を残すことはなかったものの、埼玉で地道に活動を続けた作家”とのこと。

埼玉近美のコレクションには、細田の作品が2点あり、

どちらも彼女自身によって寄贈されたものだそうです。

そして、その2点は長らく舞台裏で眠っていたのだとか。

それだけ聞いて、大したことがない絵なのだろうと、高を括っていたのですが。

ところがどっこい、実物を観たらどちらも素晴らしかったです。

 

掛軸:浴衣姿の女性と扇
近代美術館の屏風絵、女性が座る様子

 

 

これだけの実力の持ち主が、まだ埋もれていたのですね!
この画家を舞台裏から発掘した学芸員さん、グッジョブです。
是非、本展を機にブレイクしてもらいたい。
そして、いつか細田竹展を開催してもらいたい・・・と思ったら。
現在確認されている彼女の作品は、この2点だけなのだそう。
田中保の回顧展を機に、彼の新資料が発見されたように、
本展を通じて、細田竹の作品が1点でも見つかることを願っています。
星
 
 
 
ちなみに。
埼玉近美では現在、アーティスト・プロジェクトの最新版として、
“江頭誠「夢見る薔薇 ~Dreaming Rose~」 ”が同時開催中です。
 

花柄の馬の彫刻 埼玉県立近代美術館

彫刻と花柄のタペストリー

 

 

江頭さんは、花柄の毛布を素材にする唯一無二のアーティスト。

実は意外にも、花柄の毛布は戦後日本で独自に普及したものなのだそうです。

江頭さんは美大生の頃、家に遊びに来た友人に、

実家の母から譲り受けた花柄の毛布を「ダサい」と揶揄われたそうで。

それを機に、花柄の毛布で作品を制作するようになったそうです。

 

・・・・・・・・・・・え?

花柄の毛布ってダサいんだ。。。(汗)

40代を迎えた今日の今日まで、

自分も実家から譲り受けた花柄の毛布を使っていました。

 

 

 

 

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