新宿を代表する美術館、SOMPO美術館が、
今年2026年にめでたく開館50周年を迎えます。
それを記念して、特設サイトもオープン!
美術館に縁のある一人として、僭越ながらメッセージを寄せさせて頂きました。
さて、開館50周年のSOMPO美術館では現在、その記念として、
実は初となる「新宿」をテーマにした展覧会が開催されています。
その名も、“モダンアートの街・新宿”。
そんな意外な真実が明らかになる展覧会です。
左)荻原守衛(碌山)《香炉》 1909年
右)荻原守衛(碌山)《灰皿》 1909年 ともに株式会社中村屋蔵
こちらの第1章で特にフィーチャーされていたのが、
中村屋サロンの中心メンバーの一人であった中村彝(つね)。
中村彝《頭蓋骨を持てる自画像》 1923年 油彩/カンヴァス 101.0×71.0cm
公益財団法人大原芸術財団 大原美術館
水戸から上京した彼は一時、新宿中村屋裏にあった、
碌山が洋館を改装したアトリエで活動をしていましたが、
最終的には新宿区下落合にアトリエを新築しています。
17歳で肺結核を発症した彼は、37歳で亡くなるまで、
約20年間にわたって病魔と闘いながら制作を続けました。
外出がほぼままならない彝がもっぱら描いたのは静物画。
本展にはそんな彼の静物画の代表作、
《カルピスの包み紙のある静物》も出展されています。
一見すると、カルピスの包み紙は描かれていないよう思えますが、
実は青地に白の水玉のテーブルクロスのようなものが、カルピスの包み紙です。
実は、お馴染みの白地に青の水玉の包み紙は、戦後に採用されたもの。
もともとは、彝の絵に描かれているように配色が逆でした。
カルピスが誕生したのは、1919年7月7日のこと。
七夕に誕生したことにちなみ、天の川をイメージして、
青い夜空に白く光る星を水玉模様のようにデザインしたのだとか。
・・・・・と、カルピスのトリビアはさておきまして。
続く第2章は、「佐伯祐三とパリ / 新宿 往還する芸術家」。
この章の主役は、日本とパリを行き来しながら、
30歳の若さでこの世を去った洋画家・佐伯祐三です。
佐伯と言えば、自画像を多く残した画家としても知られていますが、
本展では、その中でも代表的な《立てる自画像》が出展されていました。
日本美術界に鮮烈な足跡を残した夭折の画家・松本竣介と、
彼が下落合に構えたアトリエ『綜合工房』をフィーチャーした章です。
松本竣介《立てる像》 1942年 油彩/カンヴァス 162.0×130.0cm
神奈川県立近代美術館 ©上野則宏
本展のメインビジュアルにも採用されている松本最大の自画像、
《立てる像》の背景に描かれているのは、新宿の街並みなのだそう。
横浜を取材した代表作の「Y市の橋」シリーズや、
池袋モンパルナスの画家だったというイメージから、
彼に、新宿の印象はほとんど抱いたことがなかったですが。
実は、新宿にゆかりのあるシティボーイだったのですね。
こちらの《N駅近く》は、中井駅を描いているそうです。
松本竣介《N駅近く》 1940年 油彩/カンヴァス 97.0×131.0cm 東京国立近代美術館
なお、池袋モンパルナス繋がりで、松本と交流のあった、
寺田政明(俳優の寺田農の父)の作品も紹介されていました。
寺田政明《ひまわり》 板橋区立美術館蔵
電動丸のこのカッターかと思いきや、
そのタイトルには、《ひまわり》とありました。
ひまわりをモチーフにしているのに、どこか禍々しい印象があるのは、
もしかしたら、ゴッホの《ひまわり》の影響を受けているのかもしれません。
SOMPO美術館の《ひまわり》と、見比べてみるのも一興です。
ちなみに。
ひまわりと言えば、もう1点、
小泉清による《向日葵》も出展されていました。
小泉清《向日葵》 1943年 早稲田大学 會津八一記念博物館蔵
実は、小泉清は、『ばけばけ』でお馴染みの小泉八雲の三男。
交流のあった武者小路実篤の家で、
いわゆる「芦屋のひまわり」を目にして、
大いに影響を受け、この《向日葵》を描いたそうです。
影響があまりに強烈だったのか、ゴッホ以上に荒々しい筆致となっています。
ひまわりと言われれば、ひまわりに見えますが、
ノーヒントで観た時は、一瞬タコスかと思いました(笑)
さてさて、本展を締めくくる第4章は、
「阿部展也と瀧口修造 美術のジャンルを越えて」です。
この章では、下落合にアトリエを構えた阿部展也と、
西落合に暮らしていた評論家・美術家の瀧口修造の2人に注目。
当時、阿部のアトリエに集っていた人物として、
“アンチ・アクション”でも取り上げられている3人の女性画家、
芥川(間所)紗織、宮脇愛子、福島秀子の作品も紹介されていました。
冒頭の中村屋サロンこそ、新宿駅近辺でしたが、
中村彝や佐伯祐三、松本竣介、阿部展也、瀧口修造など、
新宿区は新宿区でも、落合にゆかりのある作家が多かったような。
(途中、一瞬だけ池袋にゆかりある画家も登場しましたし)
展覧会としては十分見ごたえがありましたが、
タイトルは、“モダンアートの街・落合”のほうが、しっくりくるかも(笑)


┃会期:2026年1月10日(土)~2月15日(日)
┃会場:SOMPO美術館
┃https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/modern-art/
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