日本の色 染司よしおか 吉岡更紗の仕事 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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現在、三鷹市美術ギャラリーで開催されているのは、

“日本の色 染司よしおか 吉岡更紗の仕事”という展覧会です。

古都京都で江戸時代より200年続く染屋「染司(そめのつかさ)よしおか」。

本展は、その伝統的な仕事をたどるものです。

 

日本の色 染司よしおか展ポスター

(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

ちなみに。

お恥ずかしながら、存じ上げなかったのですが、

タイトルの“吉岡更紗”は、染司よしおかが作っている更紗ではなく、

2019年より代表を務めている6代目の染織家のお名前とのこと。

そんな吉岡更紗さんは、2023年に『情熱大陸』で取り上げられてもいるようです。

 

 

さて、本展は染司よしおかの4代目、吉岡常雄の仕事の紹介から始まります。

明治以降、日本に化学染料が伝わると、京都の染屋の多くが化学染料に切り替えました。

染司よしおかもその例外ではなく、2代目から使い始め、

3代目も安定して大量に染められる化学染料を使い続けたそうです。

そんな染司よしおかに転機が訪れるのは、戦後のこと。

正倉院展で古い染織品を目にした4代目が、

千年以上も昔の色のあまりの美しさに感動し、古代染色の研究を始めました。

4代目が特に熱心に研究したのが、「帝王紫」という色。

 

染司よしおか 古都の作品2点
 
 
古代の海洋国家フェニキアで生まれた染色方法とされており、
わずか1グラムの色素を得るために2000個もの貝が必要となる非常に貴重な色です。
古代ローマやエジプトでは、皇帝や貴族しか使用が許されなかったそう。
それゆえ、「帝王紫(ロイヤルパープル)」と呼ばれているのです。
4代目は、この色を忠実に再現するために、
なんと16年間かけて、38ヶ国も巡ったのだとか!

その苦労を知った上で改めて、帝王紫を観ると、希少で高貴な色に思えてきました。

なお、常雄の子・吉岡幸雄が5代目を継ぐと、

化学染料を使うのを一切やめて、天然染料のみを使うように。

そのスタイルは、現在の6代目にも受け継がれています。

 

染司よしおかの染料サンプル展示
染司よしおか、染料の展示

 

 

そんな染司よしおかの堅実な仕事ぶりは、

日本を代表する古寺からも厚い信頼を受けており。
東大寺修二会(お水取り)で使われる、
造花の椿を作るための和紙の染色を4代目の代から担当しています。
他にも、石清水八幡宮に捧げる御花や、
薬師寺の伎楽装束の復元も担当しているそうです。

 

染司よしおか展の展示作品
人形による染司よしおか展の展示

 

 

本展の目玉となるのは、5代目による『源氏物語』に登場する色彩の再現。

『源氏物語』54帖で色が表現された箇所368色を、
その半生をかけてすべて再現することに成功しました。
もちろん、すべて自然由来の染料で。

まさに、彼のライフワークです。

 

日本の伝統衣装、襲の色目再現

染司よしおか展の色彩豊かな展示風景

 

 

しかも、5代目は、ただ色を再現したのではなく、
平安王朝の「襲 (かさね)の色目」も完全再現しました。
 

日本の色 染司よしおか 展覧会

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「襲の色目」とは、衣を重ねることで、

衿や裾、袖口の重なりの色彩を楽しむこと。

今でいうレイヤードスタイルです。

確かに、復元された当時の衣装を観てみると、

襟だけでなく、裾や袖口もレイヤーになっていました。

平安時代の女性は、そこでオシャレを楽しんでいたのですね。

 

日本の色 染司よしおか展の衣装

 

 

なお、「襲の色目」はそれぞれ名前があり、

シーズンごとの組み合わせもあるそうです。

 

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5代目は、そんな「襲の色目」を、実に240種も再現したのだそう。

自然由来の伝統色は1色単体でももちろん美しいですが、

組み合わせられることで、その美しさが何倍にも増幅されていました。

 

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初めて目にする色の組み合わせばかりなのに、

不思議と、どこか懐かしい気持ちになったのは、

日本人のDNAに「襲の色目」の美意識が組み込まれているからなのかも。

今後、服装を選ぶときは、「襲の色目」を意識しようと思いました。

星

 

 

ちなみに。

本展のラストを飾るのは、吉岡更紗さんのお仕事です。

彼女は、4代目から続く古寺での伝統的な仕事もしつつ、

ホテルや空港などパブリックな空間を飾る仕事もしているそうで。

そんな更紗さんによるインスタレーションが展開されていました。

 

吉岡更紗のグラデーションインスタレーション

 

 

タイトルは、《日本の色 グラデーション》

 

吉岡更紗のグラデーション展示
染司よしおか、日本の色グラデーション

 

 

それぞれの伝統色そのものの美しさに、

グラデーションによる淡いニュアンスが加わることで、

5代目の染織とはまた違う独自の柔らかさがありました。

5代目が“華やか”ならば、6代目は“たおやか”といった印象です。

 

なお、更紗さんのインスタレーションを観た後に、

改めて本展のポスターを目にして、気づいたのですが。

展覧会のタイトルが・・・・・

 

日本の色 染司よしおか 吉岡更紗の仕事展
 
 
グラデーションとなっていました。
なんて粋なデザインなのでしょう!
 
 
 
 

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