「東の岸田劉生、西の小出楢重」と称された、
大阪生まれの近代日本を代表する洋画家の一人、小出楢󠄀重。
その実に25年ぶりとなる大規模回顧展、
“小出楢重 新しき油絵”が府中市美術館で現在開催中です。
日本画科で学び始めた楢重でしたが、
どうしても西洋画科の夢が諦めきれず、のちに西洋画科に転科。
最終的には、50人中5番目という好成績で卒業を迎えたそうです。
そんな長い暗黒期(?)を抜け出すきっかけとなったのが、
楢重の代表作の一つで、重要文化財にも指定されている《Nの家族》。
自らの家族をモチーフとした1枚です。
ちなみに。
その隣には、ほぼ同じ構図の《芸術家の家族》が展示されています。
おそらく《Nの家族》よりも前に描かれたものとのこと。
見比べてみると、台の上に置かれた果物が違ったり、
ホルバインの画集がなかったり、と異なる箇所がいくつもありました。
2点を見比べて楽しめる貴重な機会となっています。
さて、洋画家として遅咲きのデビューを果たした楢重は、
34歳の頃に、念願のヨーロッパ行きの機会に恵まれました。
畳の部屋に、ソファや椅子を運び込みました。
また、和服を捨て、洋服を着るようになったそうです。
さらに、食生活も西洋式に一新!
生涯にわたって、意地でもパンとバターを食べ続けたそうです(笑)。
さてさて、展覧会では、西洋式に生活を改めた、
シン・小出楢重時代の作品も多数紹介されています。
楢重は、こんな言葉を残しています。
「日本人の黄色に淡い紅色や淡い緑が交つてゐるのも
私は白色人のもつ単調な蛾の様な不気味さよりも、
もつと異常のあたたか味と肉臭をさへ、私は感じる事が出来ると思ふ」
・・・今の時代なら、いろんな理由で、
アウトな発言であるような気もしますが(笑)。
時代背景を配慮して、そこはツッコまないことにしまして。
《横たわる裸身》 1930年 石橋財団アーティゾン美術館
裸婦画にかけた楢重の情熱を知った上で改めて観ると、
どれも西洋のヌード画にはない独特の魅力が感じられました。
裸婦画なのにいやらしさは一切なく、
不思議とずっと観ていられるものがあります。
さすがは「楢重の裸婦」「裸婦の楢重」です。
ちなみに。
本展では、楢重の油彩画だけでなく、
楢重が得意としたガラス絵や日本画、
《めでたき風景》 1926(大正15)年 大阪中之島美術館
谷崎潤一郎の小説『蓼喰ふ蟲』をはじめ、
楢重が手掛けた装幀なども紹介されています。
実は多彩な人物だったのですね。
名前は知っていても、どんな人物なのか、
イマイチ掴みどころのなかった小出楢重ですが、
本展を通じて、彼の人となりや作品の面白さに気づかされました。
おそらく、この展覧会を機に楢重ファンが増えるはずです。


最後に、今回の出展作の中で最も印象に残ったものをご紹介。
《枯木のある風景》です。
実はこの作品は、楢重にとって未完の絶筆。
人ならざるものが見えてしまっていたのかも。
信じるか信じないかはあなた次第です。
┃会期:2025年12月20日(土)~2026年3月1日(日)
┃会場:府中市美術館
┃https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/koide_narashige.html
















