SPRING わきあがる鼓動 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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箱根にあるポーラ美術館で開催中の展覧会、

“SPRING わきあがる鼓動”に行ってきました。

 

ポーラ美術館SPRING展の鹿とロゴ

 

 

本展のテーマは、「SPRING」。

創造の原動力となるアーティストの内側から“わきあがる”力や、

作品に対峙した鑑賞者の内側から“わきあがる”力に光を当てた展覧会とのことです。

・・・・・う~ん、わかったような。いや、やっぱりよくわからないような。

とりあえず、観てみることにしましょう!

 

会場に入ってまず目に飛び込んできたのは、

現代美術家の大巻伸嗣さんによるインスタレーション。

《Liminal Air Space-Time》です。

 

布のインスタレーションと箱根の森

大巻伸嗣《Liminal Air Space-Time》 2025年 作家蔵

 

 

1枚の巨大な薄い布が、床下に設置されたファンによって、

上昇と下降を繰り返し、ふわりふわりと姿を変え続けるという作品です。

 

大巻伸嗣《Liminal Air Space-Time》 2025年 作家蔵

 

 

仕掛けとしてはシンプルながら、その動きは飽きずにずっと観ていられました。

背景に箱根の自然が見えていることもあって、

時々、布が作り出す形が箱根の山々のようにも感じられます。

 

そんな大巻さんによるプロローグから始まった本展。

第1章では、「はじまりの山―箱根」と題し、

ご存じ歌川広重の《東海道五十三次 箱根》を筆頭に、

 

歌川広重《東海道五十三次 箱根》

初代歌川広重《東海道五十三次之内 箱根 湖水図》 1833-1834年(天保4-5) 個人蔵

(注:展示期間~2/12)

 

 

古来より、多くの人たちの高揚感を湧きあがらせてきた観光地、

「箱根」が描かれた浮世絵や近代洋画の数々が展示されていました。

 

箱根の海と富士山、山の風景画

左)チャールズ・ワーグマン《富士遠望図》 1867-1890年(慶応3-明治23)頃 静岡県立美術館

右)渡辺文三郎《富士遠望》 1868-1912年(明治元-45)頃 府中市美術館

 

 

実は意外にも、2002年の開館以来、ポーラ美術館が、

「箱根」の地そのものに焦点を当てたのは、今回が初めて。

こちらの章では、箱根町および箱根町教育委員会全面協力のもと、

箱根町立郷土資料館の貴重なコレクションが中心に紹介されています。

なお、箱根で「SPRING」といえば、もちろん「Hot Spring=温泉」も。

箱根の温泉にまつわる資料や絵画も併せて紹介されていました。

 

浮世絵と裸婦画の展示

左)五姓田義松《温泉の図》 1868-1882年(明治15)頃 星野画廊

右)中澤弘光《山の湯》 1913年(大正2) 個人蔵

 

 

続く第2章でフォーカスされていたのは、

箱根を描いた現代アーティストによる作品の数々。

イケムラレイコさんが広重の浮世絵にインスパイアを受けて描いた作品や、

 

箱根の風景と人物を描いた絵画
箱根の風景を描いた浮世絵と近代絵画

イケムラレイコ《Hiroshige series》 2013年 個人蔵

(注:会期中展示替えあり)

 

 

丸山直文さんが箱根仙石原を取材して描いた作品にスポットが当たっています。

 

image

丸山直文《水を蹴る・仙石原(そこでは)》 2023年 ポーラ美術館

 

 

イケムラさんと丸山さんという組み合わせは、

率直に言って、意外で新鮮な印象がありましたが、

どちらも箱根を描いた絵とあって、絶妙にマッチング!

意外なコラボレーションを堪能させて頂きました。

 
意外なコラボといえば、第3章も。
こちらでは、アメリカを代表する画家パット・ステアの大作と、
神奈川県湯河原町を拠点に活動する陶芸家・小川待子さん。
2人の女性作家が意外な競演を果たしています。
 

image

小川待子《月のかけら 25−P》 2025年 作家蔵(手前)ほか

 

 

とりわけ注目したいのは、小川さんの新作《月のかけら》です。

 

小川待子《月のかけら》 陶芸作品
小川待子《月のかけら 25−P》(部分)

 

 

調整と冷却を何度も繰り返すことで、

白い陶土の塊に、透明なガラス釉を融合させているのだそう。

自然界には存在しないはずなのですが、あまりに違和感がなく、

地中の奥深くで長い間眠っていた鉱石のようにも思えてきました。

 

さてさて、展覧会の後半となる第2会場では、

モネを筆頭に、ゴーガンやスーラ、シニャックなど、

同館の西洋近代絵画コレクションが中心に紹介されています。

 

ポーラ美術館のモネ作品3点

クロード・モネ《睡蓮の池》 1899年 ポーラ美術館(中央)ほか

 

 

それらの中には・・・・・

 

ゴッホ《アルルの橋》ポーラ美術館所蔵
フィンセント・ファン・ゴッホ《ヴィゲラ運河にかかるグレーズ橋》 1888年、ポーラ美術館

 

 

ゴッホの作品も!

しかも、前回の展覧会と同じく、

同館が所蔵する3点のゴッホが出展されています。

まさか、本展でも引き続き、すべてのゴッホが観られるだなんて。

ある意味、前回以上に“ゴッホ・インパクト”でした(←?)。

 

なお、こちらの空間でも、「現代アート×西洋絵画」の意外なコラボが楽しめます。

特に、アンゼルム・キーファーの巨大な絵画と、

アンリ・ルソーによる作品群の組み合わせは新鮮!

こちらもインパクト絶大でした。

 

箱根の美術館に展示された緑の抽象画

アンゼルム・キーファー《ライン川》 2023年、個人蔵(右)ほか

 

 

さて、本展もいよいよ、エピローグ。

最後に待ち受けていたのは、名和晃平さんの代名詞ともいうべき「PixCell」シリーズです。

本展のメインビジュアルにも採用されていましたが、

「PixCell」シリーズの作品は何度も目にしたことがあるので、

正直なところ、“あぁ、また鹿なのかー”くらいの気持ちはありました。

ところが、実物を観て、いい意味で期待が裏切られました。

会場に設置されていたのは、人間よりも大きな「PixCell-Deer」。

しかも、2体が距離を置いて、対峙する形で向き合っています。

 

名和晃平「PixCell-Deer」2体展示

「エピローグ/名和晃平」より

左)名和晃平《PixCell-Deer#74》 2024年 ポーラ美術館

右)名和晃平《PixCell-Deer#72(Aurora)》 2022年 個人蔵

 

 

想定外の光景に、純粋に驚かされましたし、

2体の作品から湧き出す“場”の力に、ただただ圧倒されました。

なお、1体の鹿は、もともとの色をしていますが、

もう片方の鹿の剥製は、毛皮が緑色に染められています。

それゆえ、表面のクリスタルボールに、眩い緑色が浮かび上がっていました。

 

ガラス球体の集合体、光を反射

名和晃平《PixCell-Deer#72(Aurora)》(部分)

 

 

まるで玉虫のような美しさ!

これまで観た「PixCell」シリーズの中で、断トツに心を鷲掴みされました。

 

さて、本展をすべて観終えて、結局のところ、

「SPRING」というテーマは、わかったようなわからなかったような…(笑)

ただ、箱根についても知ることができて、

日本を代表する現代アートも堪能できて、

ポーラ美術館の王道のコレクションも堪能できて。

その上で、ここでしか味わえないマッチングも楽しめる。

非常にバランスの取れた展覧会でした。

グラフで表したなら、完璧な六角形を描いていることでしょう。

文句なしの3ツ星です!

星星星

 

ちなみに。

別に言う必要はないのですが、強いて残念ポイントを挙げるならば、

本展を冬の寒い時期ではなく、「春=SPRING」に観たかったことくらい(笑)

特に箱根の景色と溶けあう大巻さんのインスタレーションは、

春から初夏にかけて、山々が青々した頃のベストシーズンに観たかったです!

 

 

 

 

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