現在、天王洲のWHAT MUSEUMでは、
現代リアリズム絵画のトップランナーの1人、
諏訪敦さんの約3年ぶりとなる大規模個展が開催されています。
その名も、“諏訪敦|きみはうつくしい”です。
まず最初の展示室で紹介されていたのは、
これまで諏訪さんが発表してきた作品の数々。
花やガラス、豆腐といった、脆いものや壊れやすいものが、
作品のモチーフとして多く選ばれていることに気づかされます。
また、骨格標本も多く登場。
濃度の差はあれど、どの作品にも、
「死」の香りのようなものが漂っているようです。
続く展示室ではさらに、「死」の要素が強まります。
(注:この部屋のみ写真撮影が禁止です)
“喪失を描く”と題して、故人を描いた作品が並べられていました。
生前の姿が描かれているため、
パッと見は、普通の肖像画なのですが。
「故人を描いたもの」と知った上で観ると、
どうしたって、「死」を想起せずにはいられませんでした。
100年前、200年前の肖像画だって、
描かれたモデルは当然、現在は生きていないわけで。
そういう意味では、同じはずなのですが、
一般的な肖像画には、「死」の匂いは感じたことがありません。
この違いはどこから生じているのか。
故人を描いた絵に囲まれながら、グルグル考えてしまいました。
さてさて、3番目の展示室は、
諏訪さんの家族を描いた作品で構成されています。
章タイトルは「横たわる」。
病室で横たわる父を描く、「死」をテーマにした作品もある一方で、
まどろむような表情を見せる猫や、
すやすやと眠る子どもを描いた作品もあり、
この展示室では「死」だけでなく、「生」も感じられました。
4つ目の展示室は、「語り出さないのか」と題し、
本展のために制作された新作群が展示されています。
空間の中央には、手術台のようなものが置かれ、
その上には、儀式めいた怪しげなものが並べられていました。
さらに、周囲を囲む絵画群も・・・・・
どことなく宗教めいています。
何らかの秘密結社の儀式にうっかりと紛れ込んでしまったかのような。
ゾワゾワとした気持ちになる展示空間でした。
なお、展示の解説によると、これらの作品群は、
「食物穀物起源神話(※)」をテーマに制作されたとのこと。
つまり、「死から生へ」を意識した作品群と言えそうです。
(※殺された神の身体から作物が生まれるという神話。『古事記』など世界各地に見られる)
最後の展示室で紹介されているのは、
本展のメインビジュアルにも登場する最新作《汀にて》。
デビュー以来、諏訪さんは人物画を多く制作してきましたが、
コロナ禍では、モデルを使った対面の制作ができなくなってしまいました。
そうした理由もあって、コロナ禍以降、諏訪さん曰く、
「人間を描きたいという気持ちを失ってしまった」のだそう。
その頃に、アトリエにあった古い骨格標本などを、
ブリコラージュ(寄せ集め)して人型のようなものを制作したそうです。
本展には、その実物もインスタレーション的に展示されています。
最新作の《汀にて》は、それをモチーフに描いたもの。
これは人物画なのか、静物画なのか。
そもそも何でこのようなものを描いたのか。
諏訪さん自身もまだよくわかっていないのだそう。
そんな謎の最新作《汀にて》が誕生した理由は、
本展を丁寧に読み解いていけばわかるのかもしれません。
現代日本を代表するリアリズム画家の展覧会ゆえ、
描かれているモチーフ自体は、もちろん何なのかわかりますが。
何を描いているのか?何を現わしているのか?
それらに関しては、もっとも謎めいていました。
考察好きの皆さまにオススメしたい展覧会です。













