現在、茅ヶ崎市美術館で開催されているのは、
“うつわの彩り-𠮷田耕三と北大路魯山人”という展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
書家であり篆刻家であり陶芸家であり、特に美食家としても知られる北大路魯山人。
そんな彼にスポットを当てた展覧会は、これまで日本各地で数多く開催されてきましたが。
本展には、もう一人の主人公がいます。
それが、𠮷田耕三(1915~2013)。
茅ヶ崎に居を構えた美術評論家です。
お恥ずかしながら、本展を通じて、
初めて𠮷田耕三の存在を知ったのですが、
まず何よりも印象的だったのが、その経歴です。
あの日本画家の速水御舟を叔父に持つ𠮷田は幼い頃より、
御舟とその仲間たちに可愛がられたこともあり、日本画家を目指します。
しかし、東京美術学校に入学するも、御舟イズムを受け継いだ彼と、学校の教えが合わず、
日本画の道を諦めることとなります。
復員後、𠮷田が選んだのは陶芸の道。
世界的な陶磁学者で陶芸家・小山富士夫に弟子入りし、
その後、小山のつてで荒川豊蔵、川喜田半泥子、そして北大路魯山人と、
日本を代表する陶芸家たちのもとで次々と修行に励んだのでした。
ところが、𠮷田は開館1年目の東京国立近代美術館に就職。
プレイヤーでなく、陶芸の研究者としての人生を歩みました。
本展で紹介されているのは、そんな𠮷田が生涯で集めた陶磁器のコレクション。
彼のコレクションがまとまった形で紹介されているのは、今回が初めての機会だそうです。
さて、展示室1では、𠮷田の師匠らの作品や、展覧会などで携わった陶芸家たちの作品を紹介。
それらの中には、濱田庄司のお皿もありました。
なんでも、𠮷田が東近美在籍時代の最後に手掛けたのが、濱田庄司展だったそう。
その展覧会を無事に開催すべく、定年を半年ほど延長したのだそうです。
他には、陶芸界の鬼才・加守田章二の作品も。
実は、𠮷田こそが加守田章二を世に送り出した張本人。
加守田の才能にいち早く気づき、彼の生前に何度も展覧会を開催しています。
そんな縁もあり、加守田の作品は、他の作家よりも多く紹介されていましたが。
それ以上に本展で紹介されているのが、𠮷田耕三コレクションの中核をなす魯山人作品です。
本展では、なんと魯山人作品の多くが、ガラスケース無しにむき出しで展示されています。
料理好きでもあった𠮷田は、これらの器を実際に使用していたそうで。
その雰囲気を味わってもらえたらと、思い切って露出展示することにしたそうです。
続く展示室2が、本展のハイライト。
「食を飾る、彩りの器―魯山人の食器」と題し、
魯山人による織部や志野などの食器が一堂に会しています。
魯山人の食器をまとまった形で観て、
改めて感じたのは、どれも美味しそうだということ。
食べ物が盛り付けられていないのに、器自体で、なぜか美味しそうに感じられるのです。
ちなみに。
こちらの展示室には、お皿以外にも、
箸置きやティーカップなど、さまざまなタイプの食器が展示されています。
もし、この中にある食器をどれか一つ貰えるとしたら(←そんなことはない)。
かなり悩ましいですが、こちらの《織部櫛目汁注》を選ぼうと思います。
すき焼きの割下かドレッシングかソースか、
中に何を入れようが、これが食卓にあるだけで、
ライフスタイルがワンランクアップすること請け合いです。
さて、本展のラストを締めくくる展示室3でも、
𠮷田コレクションの魯山人の食器が紹介されていました。
ただ、その隣に何やら不思議なものが並べられています。
実はこれらは、𠮷田耕三お手製の保存箱。
しかも、段ボール製です。
作家名や作品名、上部と側面にある絵はすべて油性マジックで書かれています。
これらを描いたのももちろん𠮷田自身です。
本展で紹介されていたのは、ほんの一部でしたが、
ほとんどのコレクションにそれぞれ、この特性ダンボール箱が作られているそうです。
段ボールをこれほど巧みに使いこなすのは、もう中学生か吉田耕三くらいなものでしょう。
𠮷田耕三という興味深い人物が知られて、
ためになった展覧会だね~ためになった展覧会だよ~。


















