日本美術界をざわつかせた展覧会“ざわつく日本美術”の開催から4年―
この夏、待望の(?)続編が、サントリー美術館で開催されています。
その名も“まだまだざわつく日本美術”です。
本展のプロローグで紹介されていたのは、《袋法師絵巻》。
日本の三大性愛絵巻に数えられている絵巻です。
展示風景
《袋法師絵巻》(部分) 一巻 江戸時代 17~18世紀 サントリー美術館
パッと見、そこまで“ざわつく”要素が無さそうに思えますが。
高貴な女性の後ろに描かれた袋にご注目ください。
おわかりいただけただろうか…
こちらを見つめる怪しい男の存在に。。。
実は、彼は心霊の類いではありません。
むしろ、誰よりも人間らしいといいましょうか。
その正体は、高貴な女性に招かれて忍び込んだエロ法師です。
女主人は侍女たちに向かって、「胸が痛いから早く寝たい」と訴えています。
実際はそんなことはないのですが、
そういうことにして、侍女たちを部屋から早く追い出そうとしているのです。
そして、袋の中にいる法師と早く関係を持ちたいと思っているのです。
なお、本展の会場のあちこちには、
この袋法師がひょっこりはんしていました。
本展の公式キャラクター的な立ち位置なのかもしれません。
さてさて、前回の“ざわつく日本美術”では、
陶磁器や掛軸の裏側をあえて見せる「うらうらする」や、
硯箱や蓋物をあえて離して展示する「ばらばらする」など、
全部で6つの斬新な展示スタイルが話題となりましたが。
続編となる今回も、それは健在です!


「ぎゅうぎゅうする」や「ちくちくする」など、
新たな6つのコーナーが用意されていました。
会場風景
手前:《東こぎん 着物》 一領 江戸~明治時代 19世紀 サントリー美術館【展示期間:7/2~7/28】
ちなみに。
「ぎゅうぎゅうする」とは、“○○尽くし”なデザインの数々を紹介するコーナー。
それらのデザインの中に何が、どこに、どう表されているのかを、
くどいほど説明し尽くした“キャプション尽くし”が試みられていました。
《色絵寿字宝尽文八角皿》 鍋島藩窯 一枚 江戸時代 17世紀末~18世紀初 サントリー美術館
確かに、くどかったです(笑)。
くどかったですが、ここまで徹していると、
もはや清々しさ、感動すら覚えるレベルでした。
いいぞもっとやれ。
今後もこのスタイルを貫いて欲しいです。
なお、全6つのコーナーの中で、
個人的にもっとも感銘を受けたのは、
2章の「おりおりする」のコーナーでしょうか。
こちらでは、サントリー美術館が所蔵する屛風絵の数々が紹介されていました。
一般的に屏風絵は、フラットに展示するか、
あるいは、規則正しくジグザグに折って展示されています。
しかし、当時の屏風が描かれた絵を観てみると・・・・・
谷文晁《石山寺縁起絵巻(模本) 第五巻》(部分)
江戸時代 7巻のうち 19世紀 サントリー美術館 【展示期間:7/2~7/28】
必ずしも、規則正しく折られているわけでないことがわかります。
屛風はあくまでパーティションのようなもの。
持ち主が自由自在に折り畳んで、使用していたわけです。
それを踏まえて、こちらのコーナーでは、
あえて屏風絵を自由に折々して、展示していました。
雲谷等璠《孔雀図屛風》 江戸時代 八曲一双 17~18世紀 サントリー美術館
【通期展示(扇替あり)】
岸駒による《猛虎図屛風》も、折り方が変わることで、
トラが今にもこちらに向かって飛び掛かってきそうな雰囲気に。
通常に展示するよりも、緊迫感が3割増しになっていたような気がします。
岸駒《猛虎図屛風》(右隻) 六曲一双のうち 文政5(1822)年 サントリー美術館 【右隻の展示期間:7/2~7/28】
なお、これらのフリースタイルな屏風の折り方を観ていたら、
「自分だったらこう曲げるのに!」と思う方は少なくないでしょう。
そんな方々のために、実際に折ってみることのできるコーナーも設けられていました。
試しに、《猛虎図屛風》を、このように折ってみると。
虎が隅に追いやられているような雰囲気に。
ちょっと大人しくなったような印象すらあります。
折り方一つでイメージがだいぶ変わるものですね。
ちなみに。
もう一つ特に印象的だったのは、「らぶらぶする」のコーナー。
その名の通り、恋愛をテーマにした章です。
男女の恋愛から、鼠と人の恋愛まで、
日本美術におけるさまざまな恋愛が紹介されていました。
それらの中でもっともざわざわしたのは、《おようのあま絵巻》です。
《おようのあま絵巻 下巻》 2巻のうち 室町時代 16世紀 サントリー美術館【通期展示(場面替あり)】
“おようの尼”とは、日用品(御用)を商う尼のこと。
ある日、年老いたおようの尼が、
一人で侘しく暮らしている老僧の庵を訪ねました。
そして、身の回りの世話をする若い女性を斡旋すると約束します。
若い女性がやってくることに心踊らすジジイ。
おようの尼の言いつけ通り、恥ずかしがり屋の女性のため、部屋を暗くして待ち続けます。
しばらくすると、白い布で顔を隠した女性がやってきました。
ともにご飯を食べ、ともにお酒を嗜み、そしてベッドイン。
しかし、翌朝明るくなってから、隣を見てみると、なんと女はおようの尼だったのです!
おようの尼は、これも前世からの縁、
似合いの2人だと口説いてきたそうですが、
ジジイは呆れてものも言えなかったそうです。
ちゃんちゃん。
世の中にはたくさんの物語がありますが、
これほど「どっちもどっち」なお話はないでしょう(笑)。
なお、ジジイ曰く、若い女性の手を取った瞬間、
「若い人にしては手がゴワゴワするなぁ」と内心では思っていたとのこと。
いや、手以外にも気づくポイントがいろいろとあっただろ!
┃会期:2025年7月2日(水)~8月24日(日)
┃会場:サントリー美術館
┃https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2025_3/

















