現在、竹久夢二美術館で開催されているのは、
“夢二でたどるアール・ヌーヴォーとその周辺”という展覧会。
アール・ヌーヴォーという切り口で夢二の芸術を紹介する展覧会です。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヨーロッパを中心に流行した芸術様式。
それが、アール・ヌーヴォー。
その影響は海を越えて、やがて日本にも。
当時、流行の最先端を走っていた夢二も、
もちろん、その影響は少なからず受けており、
千代紙や装丁などに、アール・ヌーヴォー様式を取り入れています。
ちなみに。
紹介されていた中には、こんな千代紙もありました。
千代紙「きのこ」
アール・ヌーヴォーでキノコといえば、
エミール・ガレの《ひとよ茸》のランプが連想されますが、
夢二はおそらく、それにインスパイアされて、この千代紙を制作したのでしょう。
ただし、モチーフとなっているのは、ベニテングタケ。
見た目こそポップですが、毒キノコです。
さて、展覧会ではアール・ヌーヴォーの影響以外にも、
海外の芸術家から影響を受けた夢二作品も一部紹介されていました。
例えば、こちらの挿絵。
画題を訳すと、「ノクターン:青とピンク」となります。
これはおそらく、ホイッスラーの「ノクターン」シリーズを意識したものでしょう。
また、ホイッスラーの霧で霞んだような橋の絵の雰囲気も意識したのでしょう。
女性の顔や輪郭、着物の柄までがモヤモヤしています。
そのせいで、ちょっと怪談チックです。
また例えば、こちらの歌集に掲載された口絵。
明らかに、ウィリアム・モリスの影響が見て取れます。
書かれている文章も英文かと思いきや、
和泉式部の有名な和歌をローマ字表記したものでした。
さらに、海外の芸術家に影響を受けたといえば、こちらの作品も。
《黒猫を抱く女》
パッと見は、夢二の代表作の一つ、
《黒船屋》とほぼ同じように思えますが、
よーく見ると、輪郭線がギザギザとしています。
懐かしの玖保キリコさんのイラストをどこか彷彿とさせるものがありました。
実はこの線は、オーブリー・ビアズリーの輪郭線を意識したものなのだそう。
なお、夢二の残した文章によれば、
浮世絵師の磯田湖龍斎も、襟の輪郭をギザギザで表現していたようで、
浮世絵好きのビアズリーはその影響を受けていたのかもしれない、とのこと。
信じるか信じないかはあなた次第です(←?)。
ちなみに。
そんな《黒猫を抱く女》に合わせて、本展では特別に、
弥生美術館が所蔵するビアズリーも一挙出品されていました。
三菱一号館美術館でのビアズリー展は人が多くて、
“ゆっくりと鑑賞できなかった・・・”とお嘆きの皆さま、
竹久夢二美術館は今ならまだ、独り占めするように鑑賞できますよ。

なお、本展では夢二の作品だけでなく、
アール・ヌーヴォーに影響を受けた同時代の作家も紹介されています。
それらの中には、藤島武二や岡田三郎助も。
さらには、あのスティーブ・ジョブズも愛好家の一人で、
Mac初披露時のデモンストレーションにも採用した橋口五葉の新版画もありました。
夢二にビアズリーに五葉に。
意外な取り合わせが終始楽しめる展覧会でした。
なお、同時開催として、“100 年前の夢二”も開催中。
今からちょうど100年前、1925年の夢二の作品が展示されています。
それらと併せて、少年山荘についても紹介されていました。
少年山荘は、1924年に夢二自らが設計した、
夢二唯一の建築作品とも言えるアトリエ兼住居です。
来訪者が多かったようで、雑誌編集者はもちろん、
夢二ファンの若い女性も頻繁に出入りしていたそう。
小説家の山田順子もそのうちの一人。
夢二と恋愛関係になったそうです。
もし、夢二が現代に生きていて、SNSをやっていたなら、
間違いなくDMを開放して、女性ファンとやり取りしていたことでしょう












