ちひろ美術館・東京で開催中の展覧会、
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
展覧会名の「ヒロシマ」と「トマト」のフォントが、
『アメトーーク』のフォントを彷彿とさせるものがあり、
なおかつ、可愛らしいトマトの絵も添えられているので。
なんとなく、ポップな展覧会を想像していたのですが、
内容はその真逆も真逆の、ズシンと胸に響くものでした。
本展の主役は、88歳を迎えた今もなお現役で、
絵画や絵本、装丁など幅広く活動を続ける司修さんです。
本展の冒頭に展示されていたのは、
そんな司さんが20代で上京してすぐに描いたという作品。
タイトルは、《モルモットの哀詩》(1959年)。
当時世界各地で行われていた水爆実験をテーマにした作品です。
悲しみや恐怖、憤りといった感情が、画面からひしひしと伝わってきました。
その隣に展示されていたのは、
《カプセルに包まれたドーム》(2005年)という作品。
初期の絵画とは作風が打って変わって、
シュルレアリスムを彷彿とさせる一枚です。
ゼリー状(?)の黄金色の立方体の中をよくよく観ると、
繭のようなものがあり、さらにその中に原爆ドームがあります。
こちらの作品もまた、原爆に対する不条理や不穏さが感じられました。
さて、本展のハイライトともいえるのが、
絵本『まちんと』の原画全点の一挙公開です。
松谷みよ子さんが文を手掛け、司さんが絵を描いた『まちんと』。
広島の原爆で被爆した女の子を主人公とした絵本です。
タイトルの「まちんと」とは、広島弁で「もうちょっと」の意味。
トマトを“まちんと”欲しがる被爆した少女のために、
母親はトマトを求めて街に出ますが、なかなか見つかりません。
そうしている間に少女は亡くなり、その魂が鳥になった―というお話です。
原爆を取り扱った絵本や漫画、映画は数多くありますが、
他の作品と比べて、『まちんと』は全体的にタッチが柔らかな印象でした。
原爆が投下された場面も、悲壮感はそこまで感じられません。
だからこそかえって、松谷さんの文と併せた時に、
少女の日常や尊い命が奪われたという理不尽さが際立ちます。
お恥ずかしながら、本展を通じて『まちんと』を知りましたが、
この絵本は是非とも多くの人に読み継いでもらいたい、と心から思わされました。
戦争や紛争で世界的に情勢が不安な今まさに、読むべき1冊です。
ちなみに。
本展では、『まちんと』の他にも、
司さんが手掛けた絵本の原画の数々が紹介されています。
何よりも印象的なのは、絵本によって作風がまったく違うこと!
作風どころか、技法もまったく異なります。
会場では、これらの原画に加えて、
司さんが装丁を担当した書籍の数々や、
近年制作した立体コラージュ作品も紹介されていました。
あまりにも作風がバラバラすぎて、
およそ1人の作家の個展とは思えなかったほどでした。
なお、図書室では司さんによる書籍や、
関連書も紹介されており、手に取って読むことができます。
気になる本がいろいろあったのですが、
展覧会をたっぷりと鑑賞してしまい、時間が足りず。
時間にまちんと余裕をもって訪れなかったのが悔やまれます。

ちなみに。
司さんが初めて手掛けた絵本は、
アンデルセンの『みにくいあひるのこ』だったそうで。
本展ではその原画も紹介されていました。
さらに、それと関連して、ちひろ美術館・東京では、
“アンデルセン生誕220年 ちひろと見つめるアンデルセン”も同時開催中です。















