ぼくらがデュフィに惹かれる理由 その3 《電気の精》
デュフィの生涯の中で、一番の代表作と言えば、こちらの作品↓

これは、1937年デュフィが60歳の時に、
パリ万国博覧会のパビリオン・光の館のホールを飾るために描きあげた作品です。
そのタイトルは、 《電気の精》 。
これは、何と何と縦10メートル×横60メートルという超巨大な壁画!
どれくらい大きいのかと言いますと、
バスケットボールのコートが、15メートル×28メートルですから、
バスケットのコートを横に2面くっつけたくらい大きいわけです!
いやぁ、参りました。。。
(↑何に?)
ただ、この絵。
「大きいから、凄い」 というだけではありません。
ちょっと、一部を観てみましょう。

これまで紹介してきたデュフィの作品とタッチは、ほぼ変わっていませんが、
実は、決定的に違う点があります。
それは…
油彩画であるということ!
今まで紹介してきたデュフィの絵は、ほぼ水彩画。
あの独特な透明感ある色合いは、水彩画だからこそだったのですね。
が、これは、壁画。
さすがに水彩で描くわけには、いきません。
“あれ?でも、油彩画なのに、水彩画とそんなに違いがなくない?”
そう。
これが、この絵の真に凄い部分。
油彩画ながら、水彩画のような色合いを放っています。
一体、どんな魔法を使ったのでしょうか?
その秘密が、これです↓

マロジェという化学者によって作られたメディウムという新素材。
何と、このメディウムを、油彩絵の具に混ぜるだけで、あら不思議!
油彩絵の具が、透明感のある質感に大変身!
これで、水彩画のような瑞々しい油彩画が描けますね!!
さらに、メディウムには、こんな効果も!
メディウムを混ぜることで、油彩絵の具が流動的なものに!!
(ちょっと緩~くなるのです)
このメディウムを使うことで、
デュフィらしい色彩と、デュフィの特徴である即興的な筆運びが、
油彩画でも再現可能となったのです。
まさに、デュフィ待望のアイテムだったのです。
ところが、そんな素ン晴らしいメディウムですが、
開発された当時は、デュフィ以外の画家は、誰一人見向きもしませんでした。
むしろ、バカにしていたくらいで…。
しかし、今現在、メディウムは多くの水彩画家に使われています。
そのようにメディウムをポピュラーにしたのは、
デュフィとマロジェの、いわばコラボレーション超大作とも言える 《電気の精》なのです。
これは、例えるならば…
当時の日本では、誰も見向きもしなかったラップ(=即興的音楽)を、ポピュラーにしたあの名曲。
【小沢健二】 とスチャダラパーによる 『今夜はブギー・バック』 のようなもの。
ちなみに、この曲は、日本にラップを浸透させたとともに、
コラボレーション楽曲の先駆けと言われています。
発表されてから十年以上経った今でも、楽曲としての人気が高く、
KICK THE CAN CREWのKREVAや竹中直人、そして、宇多田ヒカルもカヴァーしているほど!
最近では、NISSANのキューブのCMにも使われていますよね。
さて、《電気の精》と『今夜はブギー・バック』には、
こんな共通した観賞の楽しみ方も。
『今夜はブギー・バック』 の歌詞に注目です。
「♪ブギー・バック シェイク・イット・アップ 神様がくれた 甘い甘いミルク&ハニー」
「♪クールな僕は まるでヤング・アメリカン」
「♪最後にはきっと 僕こそがラブ・マシーン」
太字になっている言葉は、
実は、70年代のソウル・ディスコのヒット曲のタイトル。
ここに挙げたのは、ほんの一例で、
歴史的なヒット曲のタイトルが、数多く歌われています。
一方、 《電気の精》 の絵の中には、
電気の歴史に貢献した科学者や哲学者など歴史的な人物が数多く描かれているのです。

よく見ると、人物の下には名前が描いてありますね。
フランス語と、電気の歴史に明るければ、さらに楽しめます(笑)!
エジソンやアルキメデスくらいは、さすがにわかりますが。
さぁ、デュフィのお話は、ここでおしまいです。
あとは、実際に、その目で観て作品をお楽しみ下さいませ。
きっと、
「♪コレよくない? よくないコレ?
よくなく なくなく なくなくない?」
と、デュフィの魅力にハマってしまうことでしょう。
では、また。次回の “とに~の美術家列伝” で。