● シュルレアリスムと美術 イメージとリアリティをめぐって 展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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今回ご紹介する美術展は、横浜美術館で現在開催されている “シュルレアリスムと美術”。
シュルレアリスムに関する作品が、日本各地の美術館から一堂に集められたというスペシャルな美術展。

 

この美術展は、豊田市美術館、次いで宇都宮美術館を巡回し、

そして、今開催中のここ横浜美術館で千秋楽を飾ります。
会期終了は、12月9日。

この二度とないような美術展を見るチャンスは、あと2週間も期間がありません!

 


さて、この美術展をより楽しんでいただくために、今回は、こんな企画を用意しました。


それは、とに~が選ぶ “注目の作品 ベスト5”
ここでは、一気に発表してしまいましょう!


 

5位  ジョルジュ・デ・キリコ 《ヘクトールとアンドロマケ―の別れ》


4位  ルーチョ・フォンターナ 《空間概念》


3位  草間彌生 《無題(イス)》


2位  マン・レイ 《埃の培養》


1位  ジョゼフ・コーネル 《ソープ・バブル・セット:コペルニクスの体系》

 


ここでは、紙面の関係上、4位のフォンターナの作品のみをピックアップ。
フォンターナは、キャンバスという2次元の世界を、

ある方法で3次元の世界にしてしまうという手法を発見した芸術家。


その方法は、ナイフで切りこみを入れるというもの。

すると、キャンバスの向こうが見えるわけで。

そこに奥行きという3次元の概念が生まれるわけです。

「何だよ、そんなことかよ!誰でも思いつくよ!」 と、思った方もおられるでしょう。

 

しかし、今流行りの “そんなの関係ねぇ!” というギャグにしかり、

すでに懐かしさを感じる “ゲッツ!” や “なんでだろう~” にしかり。

ブレイクする芸というのは、誰でも思いつきそうで、思いつかないようなものなのです。

 

そうした一芸芸人が、テレビや巡業で、同じギャグをやり続けるように、

フォンターナもまた、キャンバスに切り込みを入れて、

3次元にするという芸術(ギャグ?)を執拗にやり続けました。


ちなみに、フォンターナのこの手の作品には 《空間概念》 という名前が付けられています。

今回の美術展で見られる作品は、そのうちの一つです。
彼の作品に何度か出会ってきましたが、毎度毎度 《空間概念》

何だか悲しくなってきてしまうのは、僕が芸人だからでしょうか。

 


さて、作品を紹介したところで、今度は注目の芸術家を紹介。
今回の主人公は、シュルレアリスムを代表する芸術家、マックス・エルンストです。
彼は、 “シュルレアリスムの鬼才” と呼ばれるドイツの芸術家。
今回の美術展に展示されている全125点の作品のうち、

実に19作品が、マックス・エルンストの手によるもの。
そのことからも、いかに、エルンストがシュルレアリスムを代表する画家であるかがわかると思います。

 


そして、そんなマックス・エルンストを紐解くキーワードは、何と【みんなのうた】にあったのです。

ちなみに、【みんなのうた】は、1961年4月にスタートし、

現在もNHKで放送中の、今年で46年目を迎える超長寿番組。

この番組から生まれたヒット曲は、1000曲以上。
日本人の誰もが一度は見たことがある番組なのではないでしょうか。

 


話は戻って。
日本ではあまり知られていないエルンストですが、

彼が美術界に残した功績は、とても大きいものがあります。

それは、彼が様々な技法を編み出したこと。

 

そのうちの一つに、 “コラージュ” があります。
これは、「絵の具以外の物を組み合わせて画面に貼り付けることで、特殊効果を生み出す」というもの。
エルンスト作品は、著作権の関係上、今回ご紹介できないのが残念ですが、

 

美術展で見られるエルンストのコラージュ作品に 《白鳥はとてもおだやかに…》 というものがあります。
この作品では、画面の中に、白鳥の写真や天使の絵が切り貼りされています。
とは言え、言ってしまえば、単なる貼り絵。これのどこが、芸術的なのでしょうか?

 

それを説明するのにピッタリなのがこの曲。
http://jp.youtube.com/watch?v=XcN_7tf9ONY

 

『コンピューターおばあちゃん』 です。

 


【みんなのうた】では1981年に放送され、あの坂本龍一が編曲したことでも知られる人気曲。
歌の歌詞というのは、えてして、現実なり想像なりの世界を、忠実に言葉にしたものです。

 

ところが、この『コンピューターおばあちゃん』という歌の歌詞。

“コンピューター” と “おばあちゃん” という全く関連性がない言葉を一つにすることで、

生みだされていることがおわかりでしょうか。

実際に “コンピューターおばあちゃん” なる存在がいるわけではありません。
つまり、関連のないモノを合わせることで、独自に生まれた世界観が誕生しているわけです。

 

これと同じことを絵の世界で表現したのが、エルンストの編み出したコラージュ。

関連のないものを無造作に張り合わせることで、そこに生まれてくる関係性を一つの芸術としたのです。

ここには、偶然の力が働いています。

これがエルンストの考えた無意識の作り方でした。

 


彼は、他にも、デカルコマニーやフロッタージュ、

グラッタージュといった実験的な表現技法を開発しています。

(詳細は、またまた割愛させて頂きます。全て中学校の美術の教科書に出ていたハズですよ)

と、これらのエルンストが編み出した表現技法と、同じような手法で作られた曲が、

実は【みんなのうた】にもあるのです。


それは、2002年にヒットしたこの曲。

http://jp.youtube.com/watch?v=_alSpRl2JR4

 

タイトルは、『テトペッテンソン』。


 

この曲が流れた当時、多くの方の耳からこの曲が離れなかったのだとか。
『テトペッテンソン』 は、『だんご3兄弟』や “ピタゴラスイッチ” という番組をヒットさせた

佐藤雅彦さんプロデュースの曲。
もともとは、フランスの 『可愛い太鼓』 という歌。

ここに無意味な日本語の歌詞をつけることで、「意味から離れた自由な歌」を作ろうと

実験的に作られたのが、この 『テトペッテンソン』 なのです。

 

この 『テトペッテンソン』 とエルンストの作品に共通するのは、

まず、どちらも偶然性に頼っているということ。

出来上がった作品から、偶然浮かび上がるイメージが重要視されています。
また両方とも、子供にでも出来るような技法だというのが、特徴的だと言えます。

 


ここで、皆さまに思い出に残る【みんなのうた】を思い浮かべていただきたいのですが、

何が思い出されましたか?
何曲か思い出してみると、【みんなのうた】の曲には一つの傾向があることに気付くかと思います。

それは、もの寂しい曲が多いということ。


『ちいさい秋見つけた』 『大きな古時計』 『北風小僧の寒太郎』 『山口さん家のツトム君』 etc…。
これは、“ポンキッキ” や “お母さんといっしょ” のヒット曲には見られない傾向です。

というのも、実は【みんなのうた】は、子供向けの教育番組ではなく、

子供も楽しめる全世代向けの音楽番組なのだとか。


だからこそ、こうしたもの寂しい曲が多いのは、

日本人が昔から心惹かれてきた “もののあはれ” といった

静寂感にマッチしているからなのではないかという気がします。


 

話が少し反れましたが、実はエルンストの作品も

【みんなのうた】と同じようにもの寂しい作品が多いのです。
ですから、きっと多くの日本人に受け入れやすいのではないでしょうか。

 

エルンスト作品が、もの寂しいのには、一つの理由があります。
その答えも、【みんなのうた】の名曲の中にありました。

それは、【みんなのうた】で不動の人気を誇るこの曲に。

http://jp.youtube.com/watch?v=XQMMqiU2WDA

 

1984年にヒットした大貫妙子さんの 『メトロポリタン美術館』 です。

 


舞台は、夜のひっそりとした美術館。

石像やミイラが動き出し、歌の最後では、主人公の女の子が

“♪大好きな絵の中に閉じ込められた” というバッドエンディングっぷり。
およそ、子供向けと思えないほど、空恐ろしい歌。


そんなことから、この曲には、一部の人には “トラウマソング” とも呼ばれているのです。

実は、エルンストの作品に寂しいものが多いのは、

彼には “トラウマ” があったからだと言われています。

彼の作品には、「鳥」がよく描かれています。

 

それは、15歳のエルンスト少年が大事に飼っていたインコが死んで

すぐに妹が生まれたという実体験によるもの。
この体験により、彼は生と死がごっちゃになってしまったそうです。
それだけなら、まだわかるのですが、鳥と人間がごっちゃになってしまったとか。

…すごいトラウマです。

 


と、こうして、エルンストが、無意識の世界を作り出す技法を研究し編み出したり、

自分の心のうちを描き続けたことで、シュルレアリスムという運動は発展しました。


そして、このシュルレアリスムという運動の灯は消えることなく、今も続いているわけです。
シュールな世界が受けて、今空前の人気を誇る『おしりかじり虫』が、

【みんなのうた】で放映されているのは、

エルンストが蒔いた種が花開いたからと…言えるのかも知れません。

 

さぁ、“シュルレアリスムと美術” を見るために、

「バイオリンのケースとトランペットのケースをトランク代わりにして」、

横浜美術館(ミュージアム)へ行こう!