江戸時代の近江商人の言葉で
「三方良し」があります。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」。
それを発展させたことばで
私が大事にしているのが
「五方良し」です。
三方に
「作り手」と「未来」を加えて
「作り手良し、売り手良し、買い手良し、社会良し、未来良し」
の、五方です。
この考え方を2022年に知ってから
ことあるごとに意識してきたのですが
2025年の締めくくりに
「五方」の一つ一つについて
具体的にことばにしてみようと思います。
1回目の今日は「作り手良し」。
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あなたは今日、目覚めてから
何を手に取り
何を口にしましたか?
温かいお茶やコーヒー
お気に入りのマグカップ
柔らかな肌触りの服…
私たちの周りには
誰かが「作ったもの」が
あふれています。
かつて、私は
何かを買うときに
「どれだけ安いか」
「どれだけ便利か」ばかりを
気にしていた時期があります。
でも、あるとき
ふと思ったのは
「この安さを実現するために
どこかで誰かが
無理をしているのではないかな」
ということ。
例えば
大量生産されて使い捨てられる物。
その裏には
納期に追われ、心をすり減らしながら
正当な報酬を得られずに働いている
誰かがいるかもしれません。
もし、作り手が
苦しみや犠牲の中で
品物を生み出しているとしたら
その物には、
目にはみえなくても
どこか重たいエネルギーが
宿ってしまうように思うのです。
その一方で
「作り手良し」が
満たされている状態は
幸せが湧き出る泉のようです。

友人の日本画家さんが
こんなお話をしてくださいました。
「色を作るとき、
心の余裕がなくてトゲトゲしている状態だと
不思議にうまくいかないんです。
そんなときは
ゆっくりお茶を飲んだり
窓の外を眺めたりして
自分をととのえることからはじめます。
私自身が”幸せ”を感じながら描いている絵は
見てくださる方からも
”この絵を見ていると幸せな気持ちになります”と
言っていただくことが多いんです」
彼女自身が
作品を生み出すことに向き合い
適切な環境で
自分の才能に誇りを持って
正当な対価を受けとっている。
そうして生み出された彼女の絵を
私も自宅に飾っているのですが
ことばを超えたあたたかさが
見る側の胸にまで
じんわりと伝わってきます。
これこそが
「作り手良し」の力です。

作り手は、作家とは限りません。
農業でも工業でも、
工程の一部を担っている場合であっても
作り手が心身ともにすこやかで
喜びをもって生み出しているとき
その品物や作品には
受けとる人に伝わるような
幸せの「光」が宿るのだと思います。
「作り手良し」を意識するのは
決して特別なことではありません。
日々の生活のなかで
こんなところに注目してみてはいかがでしょう。
◆「誰が作ったか」が見えるものを選んでみる
近所の直売所の野菜や
作家さんの小物など
誰が作ったのかイメージできると
すべてのものに「作り手」がいることが
徐々に実感できてきます。
◆長く大切に使えるものにお金を払う
長く大切に使うことは
「作り手」の技術と時間を
尊重することにつながります。
◆「ありがとうございます」を
ことばで、あるいは心の中で伝える
目の前の品物を通じて、
その向こう側にいる「作り手」と
つながる感覚です。
私たちが「作り手の幸せ」を願って
品物を選ぶとき、
その温かな循環は
巡り巡って私たちの元へと
返ってくるのです。
今日、あなたが使っているものの中から
一つ選んで
「これを作ってくれた人、ありがとう」
と、
心の中でつぶやいてみてください。
それだけで
あなたと作り手の間に
温かい光のラインがつながります。
次回は、品物のバトンを渡す役割である
「売り手良し」について
お話しますね。
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