韓流ミュージカル、また一本。可愛い見た目で中身はかなり社会派。
最近、本当に韓国発ミュージカルの上演が増えました。今年に入ってからもう何本目でしょう。今回もビジュアルだけ見ると、衣裳は超クラシック。色彩設計は完全に少女漫画の世界。ところが内容は――官能小説家の女性の波乱万丈の人生。
華やかな見た目とは裏腹に、扱っているテーマはかなり重い。女性が創作すること自体がスキャンダルになり得た時代を背景に、社会と闘う女性表現者の物語です。
可愛い顔して、かなり刺してくる作品
物語が突きつけてくるのは、驚くほど現代的な問題。
・女性蔑視は当然の空気として存在する
・成功した瞬間だけ称賛する社会
・自由な女性はすぐ「淫乱」とラベリングされる
・世間体ばかり気にして、自分の好みすら口にできない社会
・好意を拒絶されるとセクハラや嫌がらせに転じる男性像
少女漫画のような舞台美術なのに、やっていることは完全に社会劇。韓流ミュージカルらしい、「エンタメの顔をした問題提起」でした。
憑依型女優ここに極まる
アンナ役の咲妃みゆが圧巻。芝居も歌も、物語が進むほど役へ深く入り込んでいき、後半はもう“演技”というより存在そのもの。
可憐な外見とのギャップが凄まじく、舞台上の空気を完全に掌握していました。彼女が中心にいることで、かなり危うい題材が一本の作品として成立していたと思います。
退団後に花開いた ― 花乃まりあ
そして今回、個人的に強く感じたのが花乃まりあ。宝塚在団中は正直、あまり恵まれた環境ではなかった印象があります。花組という組自体、娘役が前面に出にくいカラー。さらに相手役だった明日海りおは、良くも悪くも「私が、私が」と舞台の中心を強く引き寄せるタイプ。もし娘役をしっかり立てる男役が相手だったら、在団中からもっと早く開花していたのでは――と今回改めて思いました。
退団後の今は、芝居も歌も自由度が増し、役の幅が一気に広がっているのが分かります。“宝塚を出て本領発揮するタイプ”の典型例かもしれません。
配役について正直に
ローレライの田代万里生は女形ではなく女装役。ただ、力量を考えるとやや役不足。もっと物語を牽引する役で観たかったという印象です。チラシを見た段階ではかなり期待していました。ビジュアル的にも作品世界にハマりそうで、「これは面白い役になりそう」と思っていたのですが――実際に舞台で観ると、残念ながら物語の中であまり機能していなかった印象。女形ではなく女装という立ち位置も中途半端で、登場しても場面の温度が変わらない。結果的に「出ているのに効いてこない」ポジションになってしまったのが惜しいところです。
一方、ブラウン役の小関裕太は、芝居そのものは悪くないのですが、歌唱になると途端に不安定。特に歌いにくいフレーズに入った瞬間、はっきり分かるレベルで崩れるのが気になりました。音域の変わり目、高音への跳躍、ロングトーン――いわゆる「難所」で急に声が痩せたり、音程が浮いたりする。つまり、表現以前にまだ技術が追いついていない状態に見えてしまうんですよね。
ストレートプレイ中心の俳優がミュージカルに挑戦するのは歓迎ですが、今のミュージカル界は観客側の耳もかなり育っています。今後もミュージカルを続けるのであれば、年齢的にも発声・呼吸・支えといった基礎をしっかり作らないと厳しい時期に入っているのでは、と感じました。
今回はナンバー的にも、役のボリューム的にも、
田代万里生 ↔ 小関裕太
配役が逆だった方が、舞台全体はずっと落ち着いた気がします。
可愛い顔して、なかなか鋭い韓国ミュージカル
少女漫画みたいな衣裳と色彩。でも中身は、女性が成功することへの社会の違和感をずっと突きつけてくる作品でした。
売れるまでは軽視。
売れた瞬間に称賛。
そして少しでも枠から外れると「問題のある女」。
……これ、時代劇じゃなくて今の話ですよね。
重たいテーマなのに観劇後の足取りは不思議と軽い。説教されるわけでもなく、答えを押しつけられるわけでもない。ただ、「ああ、分かるな」と思わされる。最近、日本の舞台とは違う角度から刺してくる作品が増えた気がします。今回もまさにそれでした。
【キャスト】
アンナ:咲妃みゆ
ブラウン:小関裕太
ドロシー:花乃まりあ
ジョンソン:エハラマサヒロ
ジャック:中桐聖弥
アンディ:加藤大悟
ヘンリー:KENTARO
ヴァイオレット:伊東弘美
コーレル:可知寛子
ジュリア:栗山絵美
メアリー:高井泉名
クロエ:井上花菜
判事:伊藤広祥
警官:感音
検事:坂元宏旬
フクロウ:シュート・チェン
商人:鈴木大菜
主人:米良まさひろ
スウィング 市民:池田航汰
スウィング 花売り娘:石田彩夏
ローレライ:田代万里生
【スタッフ】
脚本:ハン・ジョンソク
作曲:イ・ソニョン
演出・上演台本・訳詞:小林香
音楽監督:桑原まこ
美術:松井るみ
照明:高見和義
音響:山本浩一
振付:三井聡・港ゆりか
衣裳:中村秋美
ヘアメイク:前田真里
歌唱指導:吉田華奈
稽古ピアノ:戸谷風太・西寿菜
演奏コーディネイト:新音楽協会
翻訳:桜庭有紀子(株)VOICEエージェント
演出助手:福原麻衣
舞台監督:松井啓悟
宣伝美術:西村恭平
宣伝写真:ソンジン
宣伝:ディップス・プラネット
HP制作:生田竜司
宣伝映像:千葉哲郎
票券:渡邉可奈子・インタースペース
制作デスク:服部愛
制作:佐粧恵・高橋優里子・大川未希子
キャスティング協力:一倉梨紗
アシスタントプロデューサー:小栗稜
プロデューサー:松本有希子(AMUSE CREATIVE STUDIO)・イ・ギョンビン(AMUSE ENTERTAINMENT INC.)
アソシエイトプロデューサー:木田波子
エグゼクティブプロデューサー:小見太佳子(AMUSE CREATIVE STUDIO)・清山こずえ(AMUSE ENTERTAINMENT INC.)
主催:AMUSE CREATIVE STUDIO・AMUSE ENTERTAINMENT INC.
企画・製作:AMUSE CREATIVE STUDIO




