新トップコンビお披露目。宝塚ファン歴が長くなるほど、実は少し身構える公演でもあります。お披露目 × オリジナル作品。
期待と同じくらい、不安もある組み合わせ。そして今回その予感、かなり正直に当たりました。
『恋する天動説』宝塚オリジナルあるある全部入り
1960年代ブライトン。モッズvsロッカーズ抗争、身分違いの恋、勘違い結婚騒動。設定だけ並べると面白そうなんです。本当に。
でも宝塚オリジナル作品特有の問題が全部出てしまいました。
✔ 下級生まで役を作る
✔ 台詞を均等に振る
✔ 人物だけ増える
✔ 物語は進まない
結果——芝居は主要人物数人で回しているのに、舞台だけ長い。間延び。これに尽きます。たまたま初宝塚だった会社の同僚もお誘いしていたのですが、「安っぽいコメディですね。この人たち全員あの受験を突破してるのかと思いながら見てます」……容赦ゼロ。でも、初見の感想って案外本質なんですよね。
お披露目公演オリジナルとサヨナラ公演オリジナル。宝塚史上、名作より“証明される駄作率”の方が高いのもまた事実。今回も残念ながらその系譜。スターの魅力ではなく、作品構造がスターの足を引っ張るタイプでした。
それでも安心できる新トップ
新トップ・暁千星。前トップに続き音楽学校首席。まず立ち姿の説得力が違う。さらに今回は、
・『1789』
・『ME AND MY GIRL』
代役主演経験が効いている。「トップを観ている安心感」がもう完成しているんです。トップに就任したからトップに見えるのではなく、すでにトップとして舞台を成立させる技術を持っている。芝居ではまだ“あてがき不足”を感じたものの、本領はやはり次でした。
『DYNAMIC NOVA』で空気が一変
ショーが始まった瞬間、劇場の温度が変わりました。正直に言うと——ショーだけリピートしたい。
NOVA=新しい星。
お披露目にこれ以上ないテーマ。そして暁千星が完全にショースターとして機能する。
・得意のジャンプの迫力
・長身を活かしたマント裁き
・早く大きな振りでも雑にならない緩急
トップになった瞬間、身体の使い方が「主役仕様」に変わったのが分かります。あてがきの力とは、こういうこと。
瑠風輝、大売り出し
今回のもう一つの主役は間違いなく瑠風輝。宙組時代のクール路線より、星組の体育会系熱量が圧倒的に似合う。むしろ今の方が自然。
見た目も完全に上級生の顔になり(下級生顔じゃない、学年を重ねて魅力的になるタイプのスター)、ショーの半分近くでセンターを担う存在感。中組時代は歌の人という印象でしたが、ダンスの星組でもしっかりポジションを確保。
ただ少し気になるのが——トップと同期という配置。かつてなら「別格スター」ポジションだった存在を、現在は二番手に据える流れが続いています。星組だけでなく雪組・宙組も同様。
お披露目を安全運航させるには理想形だけど、数年後の番手構造、大丈夫?という不安は残ります。
若手が躍動する今の星組
二番手と三番手以降の格差が大きいので、若手はイキイキ。ショーになると突然色気が爆発する天飛華音。彼女も上級生顔のスターですね。そして稀惺かずと。彼女は若手顔のスターかな。女装まで含めて目立ちポジション連発。今勢いに乗ってます。
今の星組の面白いところは、トップ一極集中ではない。下級生に見せ場をどんどん与える。でもトップは余裕で主役に収まる。
理想的なピラミッド。これ、舞台の中心がショースター出ない時に良く使う手法ですが、トップも二番手も舞台に余裕があるので、相乗効果でとんでもないことになってます。組として非常に健康的な状態。
詩ちづるという“これからの女王”
新トップ娘役・詩ちづる。歌・ダンス・芝居、苦手分野は見当たらない。ただ今はまだ「上手い人」止まり。星組の女王としての“位取り”はこれから。お披露目としてはむしろ健全、理想的なスタート。ここからどう色を持つのか楽しみです。
ふと思い出したスター
今回の舞台を観ながら、ある人が頭をよぎりました。二番手時代、休演したトップの不在を守り、地方公演では事実上トップとして全国を回った存在。麻路さき。肩書きより先に、舞台がその人をトップにしてしまうタイプ。暁千星にも、あの系譜を感じます。
「宝塚の枠を超えたスター」と「宝塚のスター」
二代連続でショースターがトップを務める星組ですが、前トップは、宝塚の外へ自然に拡張できる“宝塚の枠を超えたショースター”。そして暁千星は——“宝塚の伝統を引き継いだショースター”。衣装の着こなしがまず美しい。マントも燕尾も、衣装に支配されない。そして何より。動かなくてもスター。ただ立つ。ただ静止する。それだけで舞台の視線が集まる。大柄で立役者系。スケールで魅せるダイナミックな男役。どこか懐かしい。鳳蘭の系統を思わせる、舞台そのものを背負うタイプのスターです。
宝塚は、不思議な場所です。新トップが誕生するたびに「新時代」と言われるのに、本当に胸が震える瞬間は、いつも——どこか懐かしい宝塚に再会した時。暁千星の星組は、きっとそういう組になる。次の公演が待ち遠しい。そう思わせた時点で、お披露目はもう成功なのかもしれません。そして私たちは新しい星を観に行くためにまた劇場へ足を運びましょうぞ。
【恋する天動説/キャスト表】
アレックス[モッツのリーダー格]:暁千星
シンシア[ホテルグループ社長の孫娘]:詩ちづる
レスリー[ロッカーズのリーダー格]:瑠風輝
ドロシー[ホテルグループ社長]:万里柚美
クラーク・ミラー[医師]:美稀千種
ゴードン[シンシアの叔父]:輝咲玲央
エース[テーラー]:ひろ香祐
ピート・ダグラス[王立天文台所長]:朝水りょう
バーバラ[ハウスキーパー]:澪乃桜季
ブルース[ロッカーズの若者]:夕渚りょう
ウィリアム[若き日のドロシーの恋人]:天希ほまれ
モーガン[観光協会の協会長]:蒼舞咲歩
ブレンダ[ハウスキーパー]:七星美妃
ザック[ロッカーズの若者]:希沙薫
ティモシー[シンシアの兄]:碧海さりお
ランドルフ[ティモシーの友人]:鳳真斗
オズワルド[ティモシーの友人]:夕陽真輝
ロビン[アレックスの弟分]:天飛華音
ロレイン[ゴードンの妻]:天愛るりあ
コラン[モッツの若者]:奏碧タケル
カイト[ギャング]:凰真斗愛
レイチェル[ドロシーの秘書]:瑠璃花夏
デニス[ロッカーズの若者]:紘希柚葉
ジェイコブ[ティモシーの友人]:羽玲有華
ジュディー[テーラー]:星咲希
ミケーレ[レスリーの彼女]:綾音美蘭
ゲイル[モッツの若者]:碧音斗和
ジュード[モッツの若者]:御剣海
ヘンリー[ロッカーズの若者]:世晴あさ
バーニー[ドアマン]:遠海らいあ
バート[アレックスの弟分]:稀惺かずと
イヴリン[モッツの娘]:鳳花るりな
アレックス・ニュートン[ブライトンFCのファン]:大希颯
リチャード[コンシェルジュ]:彩紋ねお
スウジ[メイド]:瞳きらり
ジャスパー[ロッカーズの若者]:青風希央
マチルダ[メイド]:彩夏こいき
キャラ[シンシアの妹]:乙華菜乃
クリスティ[モッツの娘]:愛花いと
ランス[モッツの若者]:風間さや華
ニール[モッツの若者]:飛翠真凜
シェリー[モッツの娘]:咲園りさ
ルーク[ロッカーズの若者]:樹澄せいや
バリー巡査長[警察官]:朝稀さいら
エイマー[モッツの若者]:世奈未蘭
カーラ[ティモシーの友人]:詩花すず
チャム[ロッカーズの若者]:和波煌
ケイト[キャラの友達]:舞羽陽
ゾーイ[ロッカーズの娘]:美玲ひな
若き日のドロシー:藍羽ひより
トーマス[ベルボーイ]:桃李拍
エリカ[キャラの友達]:茉莉那ふみ
ジェマ[ロッカーズの娘]:乙妃優寿
ベン[モッツの若者]:聖流輝
イアン[ロッカーズの若者]:瑠羽らいと
デイジー[キャビン・アテンダント]:紘咲羽莉
シリル[モッツの若者]:珀亜れい
フレディ[ロッカーズの若者]:風希咲玖
ラムジー[ロッカーズの若者]:早瀬まほろ
【恋する天動説/スタッフ】
作・演出:大野拓史
作曲・編曲:玉麻尚一
作曲・編曲:高橋恵
音楽指揮:西野淳
振付:平澤智
擬闘:清家三彦
装置:木戸真梨乃
衣装:大津美希
照明:氷谷信雄
音響:大坪正仁
映像:九頭竜あき
小道具:増田恭兵
歌唱指導:KIKO
演出助手:谷垣開
振付助手:鶴美舞夕
衣装助手:浦本菜々子
照明助手:嶋田友紀子
音響助手:廣木翼
音響助手(東京宝塚劇場):切江勝
舞台進行:片桐喜芳
稽古ピアノ:森口幸子
【DYNAMICNOVA/スタッフ】
作・演出:稲葉太地
作曲・編曲:高橋恵
作曲・編曲:太田健
作曲・編曲:江口寛至
音楽指揮:西野淳
振付:御織ゆみ乃
振付:若央りさ
振付:平澤智
振付:大村俊介[SHUN]
振付:百花沙里
装置:國包洋子
衣装:河底美由紀
照明:氷谷信雄
音響:秀島正一
小道具:下農直幸
歌唱指導:柳本奈都子
チアリーディング指導:KANA
演出助手:雑賀ヒカル
振付助手:鶴美舞夕
振付助手:谷本ゆき
装置助手:山本真澄
照明助手:嶋田友紀子
音響助手:溝谷博
舞台進行(東京宝塚劇場):片桐喜芳
【共通スタッフ】
舞台美術製作:宝塚舞台
演奏コーディネート(東京宝塚劇場):ダット・ミュージック
制作:岩本繁
制作補:塚本佑紀
制作補:藤倉尚吾
企画・制作:宝塚歌劇団
製作・主催:阪急電鉄


