【ここは今から倫理です。】哲学の学び 善く生きる | マンガ心理学って何だろう

マンガ心理学って何だろう

サブカルチャーを中心に心理学と結びつけた話を書きます。
「マンガ心理学」の確立に向けて頑張りたい。

お疲れ様です。
 

あっという間に6月の1週が終わってしまいました・・・

平日は本当に寝る間もなく・・・。

前回の更新が5月31日!

あらぁ・・・

 

自粛に協力した企業や店舗への支援が早急に行われることを願います。

 

第2波か、東京は新型コロナの罹患者が毎日出るようになりました。

罹患された方々の早期回復、医療従事者・対応をされている方々が十分なサポートを受けられることを祈っています。

この状況、まだまだ皆で乗り越えていきましょう!
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今日は、雨瀬シオリ先生が「グランドジャンプむちゃ」で連載している

「ここは今から倫理です。」を取り上げます。

コミックは現在4巻まで発刊。

 

 

このマンガを知ったのは、昨年の春。

新入生たちに好きなマンガを教えてもっらたときに、一人の学生が示したのがきっかけでした。

その学生は、このマンガから様々な価値観を知ることができると言っていました。

 

「倫理」 人と人とのともがらのことわり

確かに、様々な価値観を知ることできそうな予感から手にとりました。

結果、それ以上だったと思います。

 

このマンガの主人公は、高校で政治経済と兼任する倫理担当の

教員 高柳。

高柳になんらかの救いをもらった生徒からは「たかやな」と呼ばれています。

 

倫理の先生が、悩める思春期の高校生たちを救っていく。

一見、そんな風に見えますが、事は単純ではありません。

 

この学校で、高3の選択科目となっている「倫理」。

(息子の学校では、高1で必修です)

担任を持っていない高柳は、この授業を選択してきた生徒たちと、真剣に向き合おうとしていきます。

 

ただし、淡々と冷静に。優しい言葉やふれあいはない。

熱血教師マンガではない。けれど、人がよりよく生きていく選択ができるように導いていく。

 

タイトルの「ここは今から倫理です。」は冒頭に出てくるセリフ。

選択教室で、セックスをしてた高校生たちに、普通に教室に入ってきて、動揺するもなく、淡々と

「別に悪いこととは言いません。真剣なお付き合いなら結構。

ただ時間と場所が悪い。ここは今から倫理です。」

(ここは今から倫理です」巻 #1知らない事より)

と言い放ちます。

 

そこから物語が始まっていきます。

1回目の授業で、高柳は生徒にこの授業の概要を説明します。

 

倫理は 学ばなくても将来 困る事はほぼ無い学問です

地理や歴史の様に生活する上で触れる事は多くないし

数学の様な汎用性も 英語の様な実用性もありません

この授業で得た知識が役に立つ仕事は ほぼ無い

 

この知識がよく役に立つ場面があるとすれば

死が近づいた時とか・・・

倫理は主に自分がひとりぼっちの時に使う

信じられるものがなくなった時 死が目前に迫った時 人は宗教によるる救いを求める ”宗教とは何か”

 

人間関係がうまくいかない

他人を羨んで妬んでうまく生きる事が出来ない

”よりよい生き方を考える”

 

悩みが絶えず苦しい・・・憂鬱・・・私は何の為に生きている?

昔の哲学者たちは生涯をかけ悩み続けた ”幸せとは何か”

 

「男はこうあるべき」とか「女はこうしなきゃダメ」とか・・・

そんな事誰が決めた?  ”ジェンダーについて”

 

「死にたい・・・」 ”いのちとは何か”

 

どうですか

別に知らなくてもいいけれど 知っておいた方がいい気はしませんか

(ここは今から倫理です」巻 #1知らない事より)

 

 

最初にこれを読んだとき、「あれ似てる・・・」なんて奢って思ってしまいました。

私が心理学のオリエンテーションのときに、話す内容に少し似ていたのです。

読んでいて分かりました。

私が哲学的な説明をしていたのだと(笑)

 

宗教のことはほぼ心理学で触れることはないのですが、その他のことは触れていきます。

 

心理学は哲学が源。

まぁ、全ての学問の源流は哲学ですから。

古代ギリシャの哲人たちは、実験も調査という概念もない中で、

「思索」を通して学問を拡げていった。

本当にすごいことだなとしみじみ思います。

 

戻ります。

教科の説明で触れているように、授業内容だけでなく、

実際に高校生たちが経験する事柄を通して、高柳は「よく生きる」

ことを、考えることを、選択することを導いていきます。

 

しかし、この高校生たちの経験はなかなか凄いものです。

そして、思春期の一方向の思考回路も、独りよがりの有様も、

だからこそ悩むことも、実に興味深く描かれています。

 

例えば、性に目覚め、セックスフレンドとおもしろおかしく過ごし、何も考えず体を差し出す女子。学校でもどこでも求められればセックスしてしまう。自分を大事にすることを知らない生徒がいました。

この生徒は高柳に興味を持ち、お色気で落とそうとするも、

教養を身につけ、どんなにお金を積まれてもただでは抱かれない「花魁」のことを教えられ、「知る」ことに目覚めていきます。

 

高柳のことが好きになるのですが、そこでの高柳が秀逸。

”愛こそ 貧しい知識から豊かな知識への架け橋である” と

マックス・シェーラーの言葉を引用します。

愛や憧れは、今の自分を変えていこうと、学び努力するきっかけとなります。

 

また、周囲の生徒や大人がくだらなく馬鹿に見てしまう大人びた生徒。

自分は勉強している、なんでも知っている、知る術を知っていると奢った考えを持っています。

大事な事は本を読めばわかる。ネットで調べればわかる、と。

高校生でなくても、大学生や社会人にも、そういう人はいますよね。

周りを馬鹿にしているから、ちょっと違う対応をされると、自分が馬鹿にされた、見下されたと思う。

自分が見下しているからなのですが。

自分の「視野の狭さ」には気がつけない生徒。

 

その生徒が、友人がレイプされたことを悩み、学校の屋上から飛び降り自殺しようとする場面に出くわします。

自分の知らない世界。知らない状況。

 

レイプされて、普通に結婚できなかもしれないと思い悩み、死のうとする友人に、その生徒は「バカじゃないの。死ぬ事、命の重さに比べたら

小さい事だ」を言います。

しかし、高柳は「どんな理由でも命に換わる程重い絶望になる」と

「あの網の向こうに行く為にどれほどの覚悟が必要なのか」と

大きな声を出します。

 

友人は、飛び降り自殺をやめます。

理解されたこと、「絶対、結婚できます」と言われ安心したこと、心配してくれる人がいることを通して、死ぬことをやめたのです。

高柳はその生徒と友人にフランシス・ベーコンの言葉を贈ります。

 

”なんといっても 最上の証明は経験だ” と。

頭でっかちに知識だけを得ても、生きる場面に適応できなければ意味がない。

知らないことはたくさんある。

だから、たくさん勉強して、いろんな知識を得て、たくさん遊んで色んな経験をすることで、視野が広がることを教えます。

 

他にも、

いじめられっ子を脱却し、生徒を助けることが出来る教師を目指す生徒

 

ぬいぐるみに悩みを話していたら、いつしかぬいぐるみの声が聞こえるようになり、そのぬいぐるみを恋人とし、いつも離れず一緒にいようとする僕少女の生徒

 

授業で毎回ベタ寝をする生徒。

(正直、私もベタ寝は不快には思います笑)

きっと理由があるだろうと高柳は思い、話をしようとし、心の不安や寂しさに気づいていく姿。

 

姉への劣等コンプレックスから、周囲の大人を振り向かせたく、陰湿な仕掛けをして楽しむ生徒。

 

愛着障害と心の病、刃物恐怖症に苦しむ生徒。

 

ちょっと悪な兄に憧れ、よくないことに利用されていることに気づかず、危ない目にあう生徒。家庭環境も切ない状況。

 

SNSで別人格を作り、賞賛を得たい生徒。

 

リストカットをすることで安心すると条件づけられた生徒。

 

本当に、色々な生徒が出てきます。

「そんな子ども居るの???」と疑いたくなるような場面もありますが、

実際にあります。

ただ、教員が気づけるような立場にあるかどうか・・・

それは些か問題がありますが、こういった生徒や学生はいます。

それに向き合っている先生もいます。

 

高柳は表情をあまり変えずに生活していますが、生徒の窮地には人間らしい喜怒哀楽の表情が出てきます。

 

そして、淡々としているように見えますが、心では深く自問自答し、

「正しさ」を選択しようと努力し、できなかったことに悔いて、思い悩んでいます。

救おうとする側もまた悩むのです。

 

真面目な人だな、と感じます。

真面目に、人にも自分にも向き合おうとする。

それによって、自分が疲弊しても、生徒の心を救いたいと願う姿。

 

「心を救う」とは本当に難しいものです。

相手の望みを叶えてあげることではない。

自分がよかれと思ったことだけをすることでもない。

人の心が解放されるのは、結局その人にしかできないと考えます。

解放となるきっかけは他者が与えることはできる。

 

不器用で生真面目すぎるのですが、「生きること」を真剣に考えていることが伝わります。

 

アリストテレスが述べた euzen 善く生きること

これを追求しているように読めます。

 

善く生きる」とは何か

これに明快な答などないと考えます。

だけど、「善く生きる」ことを考えて生活する、行動を選択することは

できると思います。

でも、その選択が正しかったかは、後にわかる。

でも、その選択が正しかったかは、わからないこともある。

 

まさに哲学。

このマンガは、哲学的視角から、物事を捉えて考えることに十分な迫力があります。

 

読みながら、自分の思考・行動を見返ることのできる良書だと感じています。

 

また、これを取り上げたいと思います。

 

では、また。

心燃やして取組みます。