第五章 最期の夜~胸騒~
私はたまらなく不安だった。
一人でいることが怖かった。
姉に何度もメールした。
不安を紛らわせるように、スマホばかり触っていた。
今思えば、あの時の私は逃げていたのかもしれない。
怖くて、母から目を逸らしていた。
そんな私を、母はどんな気持ちで見ていたのだろう。
しばらくして姉からメールが来た。
「子どもたちいるんやから、早く帰りなさい」
私はまるで駄々をこねる子どもみたいに返信した。
「イヤだ。帰りたくない」
子どもたちにも連絡した。
「今日はまだ帰りたくないねん。ごめん」
そう送りながらも、私は何もできなかった。
ただそこにいただけだった。
看護師さんがオムツ交換に来てくれた。
私は廊下で終わるのを待った。
病室に戻ると、母は眠っていた。
声をかけても、もう目を開けることはなかった。
二十一時十八分。
私は何度も振り返りながら、病室を出た。
帰宅してからも、ため息しか出なかった。
胸騒ぎが止まらなかった。
やっと食事を始めようとした、その時だった。
父から電話が鳴った。
(23/30)
