第五章 最期の夜~後悔~


二〇一四年四月六日 二十二時五十分。

死亡確認。

母は亡くなった。

最期の時、誰も間に合わなかった。

父は十五時まで母と話して帰ったらしい。

もし予定通り十六時に病院へ行っていたら。

あの時、手を握り返してくれたのは何を伝えたかったのだろう。

どうして私は帰ってしまったのだろう。

おかしいって、わかっていた。

いつもと違うって、ちゃんとわかっていた。

それなのに。

心のどこかで、明日また会えると思っていた。

当然のように。

あの時間、もっと母だけを見ていればよかった。

もっと話しかければよかった。

もっと手を握っていればよかった。

大切な時間を、なんて無駄に過ごしてしまったんだろう。

最期まで、母に寂しい思いをさせてしまった。

そしてまた、思ってしまう。

一月五日。

あの日、母の言う通り救急車を呼んでいたら。

違う病院へ搬送されていたかもしれない。

違う未来があったのだろうか。

あんなにも悲しい三か月が待っているなんて、あの日の私は思いもしなかった。

母は、もともと人工透析の終末期患者だった。

たくさんの患者さんたちの最期も見てきた人だった。

だから私たちは、勝手に思い込んでいた。

母の死は突然やってくるのだと。

透析中に、その時が来るのだと。

こんなふうに、三か月かけて少しずつ弱っていくなんて想像もしていなかった。

母に限って。

本当に、まさかの三か月だった。



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