第四章 生かされるということ~恐怖~


三月上旬。

「今晩、ワンタン作るねん」

私がそう言うと、母は少し嬉しそうに言った。

「いいなあ。食べたいなあ」

だから、差し入れをした。

母はワンタンを口に運びながら、

「美味しい、美味しい」

と喜んでくれた。

それが、母の最後の食事になった。

それ以降、母は普通に食事を摂れなくなった。

毎日のように輸血が必要になった。

起きている時間より、眠っている時間のほうが長くなっていった。

子どもの寝顔は、何度も見てきた。

でも親の寝顔を、こんなに長い時間見つめる日が来るなんて思っていなかった。

ただ静かに眠る母の顔を見ながら、いろんなことを考えた。

そして、さらに恐れていたことが起きた。

右足にも壊死が始まった。

どうなるの。

右足も切断するのだろうか。

ただただ怖かった。

ある日、看護師さんが母を車椅子へ移動させる時、切断した側の足をベッドにぶつけてしまった。

ようやく塞がっていた傷口が開いた。

また、新しい心配事が増えた。



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