妖怪 「酒呑童子」(その1)-茨木童子ー |         きんぱこ(^^)v  

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「酒呑童子」その1-茨木童子ー


 ここは摂津茨木(大阪府茨木市)。


 とある民家で出産があった。妊娠16ヶ月。
「うー痛いー」
「がんばるんじゃ」
「うー」
 難産の末にようやく子供が生まれた。



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 その子は産声を上げなかった。産婆は子供を抱えたまま絶句していた。
「赤ちゃんは、私の赤ちゃんは」
「…」
「どうなされたのですか」
「見ぬほうが良い」
「どうしてですか、だめだったのですか」
「生きておる」
「ならば、どうして…」
「とはいえ実の母、見せねばなるまいのう」
 産婆は振り返って子供を母親に見せた。


 赤ん坊は赤ん坊とは思えないくらい大きくて、すでに生えそろった歯を見せてニヤッと笑った。
 産婆の心配は当たった。母は絶句して、そのまま息絶えた。


 困った父はそれでも子供を育てた。村の女性に頼んで母乳を貰おうとした、しかし一度に飲む母乳の量が多すぎて乳を分けてくれる女性がいなくなった。
「童子よ、どうしておまえはこんな子供に生まれてきたのじゃ、ワシはお前が不憫でならん」
 父は童子を必死で育てた。しかし貧しい家庭には童子を育てる余裕すら無くなってしまった。

「童子よ、すまん。許してくれ。もう食うものすら無くなった」
 父は、意を決して童子を籠に入れてうちを出た。
 童子は籠の中で大きな顔を微笑ませて父を見た。父の目は涙で溢れていた。
 やがて父は床屋の前でその籠をそっとおろした。
「童子、すまない。許してくれとは言わない。なんとか幸せになってくれ。本当にすまない」
 そう言って父は去っていった。


 翌朝早く、床屋の主人が目を覚まして家の外に出てみると、大きな子供が大きな籠に入っていた。
「おい、ちょっと出て来いよ」
 しばらくして嫁が出てきた。
「まあ、どうしたのでしょう」
「誰がこんなことを、かわいそうに」
「これは、ひょっとして御仏様の贈り物でしょうか、私達に子供がいないのを…。きっとそうでしょう。ねえ、この子を育てましょう」
「そうだな、そうしよう」

 床屋夫婦は童子を育てることになった。童子が異様な顔をして、顔も体も大きいのも判っていたが床屋夫婦は童子を大切に育てた。


「やーい、お化け童(わらべ)やーい」
「鬼の子やーい」
 童子は近所の子供から揶揄され続けた。とうとう怒って喧嘩をすると、子供とは思えぬ怪力で誰も逆らうものはいなくなった。しかし逆に子供達はこの奇怪な童には近づこうとはしなかった。
 子供どころか、近所の家からは「気持ち悪い子」と敬遠された。


 童子はどうして自分がそんなに言われるのかが理解できなかった。相手にされなくて毎日が孤独だった。


 床屋の主人はまだ小さいが店の仕事を手伝わそうとした。
 童子は仕事が面白かった。一生懸命に頑張って、客の髭を剃れるまでになった。


 しかし、ある日童子は大きな失敗をした。
 客の髭を剃っている時に謝って血を出してしまった。客は怒って出て行った。

 童子は泣きながら手についた血を舐めた。鉄を含んだ血を舐めるとなぜかもっと舐めたくなってきた。
 その後客が来るとわざと手を滑らせて怪我をさせた。童子はそのたびに血を舐めた。


 とうとう、床屋の客は誰もいなくなった。
 床屋の主人は我慢出来ずに童子に怒ってしまった。


 童子はひどく落ち込んで床屋を出た。とぼとぼと河の畔に来て水面を眺めた。
 水面には見たことも無いような怖い顔が映っていた。
 大きな顔で、顔が赤くて、口は避けたように大きく眼が飛び出そうなほど大きくて吊り上り鼻が大きかった。
「これが、僕の顔…」



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http://machikomi.zaq.ne.jp/view/ibaraki/319/37064/


 翌日、童子は床屋にはいなかった。

(誰がこんな顔に…、何でみんなは俺を嫌うんだよ。)


 童子は憎しみと口惜しさを心の中で何度も何度も思いながら北へ向かった。


 歩きながら、何も悪いことはしていないのに逃げてゆく都人を憎むようになって行った。


(嫌うなら、嫌えばよい。)


 老の坂峠(おいのさかとうげ)を越える頃、辺りは闇となった。それでもなぜか夜目が利き怖くは無かった。
 しばらく行くと、焚き火の明かりが見えた。童子は明かりの中に無造作に躍り出た。
 明かりの周りには本当の鬼が座っていた。


(続く)



 


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