妖怪 三鬼(大江山と妖怪伝説3/3-1) |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ

酒呑童子の話をする前に、実はもうひとつ鬼の話があるのです。


 三上ヶ嶽(現在の大江山)に、英胡(エイコ)・軽足(カルアシ)、土熊(ツチグマ)の三鬼を首領とする沢山の鬼が棲みついていました。

 いつの頃かと言うと、皆さんご存知の聖徳太子の頃です。



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(これは「鬼の岩屋」と呼ばれて、ここに鬼が住んでいたそうです)


 英胡 「都から1万人もの大群がこちらに向ってるそうな」

 土熊 「誰に聞いた」

 英胡 「この間捕らえた都人が言うとったでよ」

 土熊 「多いな、逃げるか」

 英胡 「何を言う土熊、お前は青葉山の土蜘蛛の子孫ではないか、逃げるもんか、この山は神の山や、わし等が先祖より守ってきた山や、わしらは守神となってこの山の神を守り、銅を採り民が持つ米や魚と交換して生きてきた。捕らえるのは我が山を盗らんとする都人だけだ。なにが鬼か。」

 軽足 「そうや、わし等は修験を積んだ守り神じゃ、わし等の魔力を持って都人など蹴散らしてくれるわ」


 日子坐王(崇神天皇の弟、聖徳太子の異母弟でもある)率いる1万騎は都よりはるばる、北北西の鬼門と言われる大江山に近づきつつあった。

 「もうすぐ、あの山でございます。」

 「うむ、三千騎を山の裏側へ移動させよ。残りはこの千原にて陣を敷こう。」

 都から来た軍勢の内3千騎は、由良川に沿って山の後ろに移動すべく河口に向かって移動を始めた。


 都の軍勢を山の上から見下ろしていた鬼は笑った。

 英胡 「おうおう、見よ、千原に陣を張っておる。あそこは昔土蜘蛛匹女陸耳御笠(クガミミノミカサ)様を助けるために犠牲となったところじゃでよ、軽足よおぬしの術で蹴散らしてはくれまいか。」

 軽足 「ようし、思い知らせてやる」


 軽足は山頂の草木を寄せ集めて火をつけた。生木を燃やして燻った黒い煙が天へと舞い上がる。しばらくすると青い空に灰色の雲が現れた。雲は見る見る高くなり都の軍勢が陣を張る千原上空を黒く覆い出した。


 しばらくして雷が鳴り出し、激しい雨が千原を襲った。


 「鬼の仕業やー」

 「鬼の祟りやー」


 「あわてるでない、ほれみよ川向こうの蓼原(たでわら)は晴れておるでわないか、ただちに全軍移動せよ」


 都の軍勢は由良川を渡って蓼原という地に移動を始めた。


 英胡 「次はわしの番じゃ。」


 英胡は岩穴から真っ赤な大きな四角い布を出してきた。その布に竹を骨組みとして取り付けて、山の風を利用して空中に飛び上がった。蓼原に着いた都の軍勢は青い空に、山陰(やまかげ)から真っ赤な四角い物体が飛んでいるのを見つけて浮き足立った。


 「なにやろ、あれは」

 「鬼や、鬼に違いない。」

 「今に祟りがやってくるぞ」


 「慌てるでない、まやかしだ。見ておれ、ほれ、一向に攻めては来ぬだろう」


 一方、由良川を迂回した3千騎はようやく大江山の後ろ側にたどり着いた。


 山頂からは休むまもなく山を登ろうとしている都郡が手に取るように把握できた。


 「土熊(ツチグマ)よ、おぬしの部下を使ってひとつかく乱してやれ」と、英胡が言った。


 「わかった、そうしよう」


 土熊は、肩に乗っていた(とんび)を山の裏に放った。は青い空を悠々と飛び上がり「ピュールルルルル、ピュールルルルルル」となきながら同じ場所を旋回し始めた。山の中腹でそれを見ていた土熊の手下の鬼は、山に上がる道をどんどん隠して枝葉の道に誘い出した。都軍3千騎は見る見る枝葉の道に紛れ込み、皆が上も下も北も南もわからなくなってしまった。「まやかしやー、逃げろー」


 かくして都軍1万騎は、山の者に恐れてチリジリバラバラ。とうとう日子坐王を守る軍勢が数百人のみとなってしまった。日子坐王はひとまず休戦し、心を見直すために7つの仏像を彫り始めた。仏像は彫りあがった。


 「この仏像を納める7つの寺を建立せよ」


 日子坐王の部下の一部は7体のうち4体の仏像を持って都の方角へと散っていった。


 いつの頃か、日子坐王のそばに大きな白い犬が来た。毎日決まった時間に来て日子坐王のそばにある鏡をくわえたがっていた。日子坐王はこの犬が御仏の化身ではないかと思い鏡を犬の頭に乗せた。


 犬は大江山の方角に向かって歩き出した。


 「みなの者、この白犬は御仏の化身じゃ、散り去った連中を集めつつこの犬についてゆけ」


 かくして白犬を先頭に、由良川沿いを大江山へと向かって長い行列が出来た。


 大江山の入り口についた頃、白犬は立ち止まり、頭に乗せた鏡に太陽の光を受け止めて、大江山の一部分を明るく照らし始めた。(・・・・・・んな・・馬鹿な・・・)


 「みよ、あの光の先に必ず何かある。みなの者あの光の先を攻めよ。行けー」


 英胡は先ほどから一筋の強い光が自分を追っていることが気になっていた。

 「何じゃこの眩しい光は」

 土熊「何かの術とちゃうこ、あの光は危ないでよ」


 犬が照らす光を伝うように沢山の都軍が山を登りだした。まるで餌を見つけて運ぶ蟻の列のように緑の山肌を黒い筋が山頂めがけて伸びてきていた。


 軽足 「こらあかんでよ、こっちにくるでよ、逃げるこ(逃げるか?)」

 英胡 「いや、逃げん。この山は特別の山や。わしらが、わしらの先祖が守ってきた山や。この丹後と大陸に向かう海を守る神の山なんやで。」


 軽足英胡は戦った。日に焼けて茶色くなった髪の毛を振り乱し、怒りで体中を真っ赤にしなから。歯をむき出しにして戦った。「わし等はお前らに何をやったと言うんや、たとえ一人になってもお前らは許せん」

 都軍は口々に「こいつら鬼やあ。やっぱり赤鬼はいたんやあ」「ええい、ひるむなあ、みんなで一斉にかかって行けえ

 しかし、所詮は多勢に無勢。軽足と英胡は大江山の山頂付近で土となった。


 一方土熊は、岩戸の中に隠れていた。「何とか生き残らねばなるまい。女子供は裏山へ逃がした。これでは術も使えまい。


 岩屋の外で都軍が集まりだした。

 「そこに居るのはわかっておる。出て来い、こいつらを皆殺しにするぞ。」土熊が岩屋から外を覗くと、自分の家来やその家族が一塊に捕らえられていた。土熊は腹をくくって外に出ることにした。


 「待ってくれ、今から出る、しかしそいつらは助けてくれ」

 「わかった殺さない。お前も殺しはしないから出て来い。」


 かくして土熊は部下と共に捕らえられて日子坐王の前に連れて来られた。


 「そこもとはなんと言う、ツチグマか?それともツチグモか?」


 「俺の名はツチグマ。」

 土熊は確かに土蜘蛛の子孫だった。しかしこの言葉は使えないので土熊と呼ぶようにした。


 日子坐王は自分で彫った仏像を高々と上げて、「鬼を捕らえたのもすべてこの御仏のおかげじゃ、捕らえた者共を使って御仏を加護する寺院を建立させよ。」


 土熊は寺院建立の労役がたたって死んでしまう。しかし、その子供は山の中で生き抜いた。そしていつか山の人々はその子供を酒呑童子と呼ぶようになった。


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 この頃は聖徳太子の時代。聖徳太子は仏教を広めた。そのために仏教の寺院をどんどん建立している。この丹波丹後地方もそういう都の勢力が地方に浸透させようとしていた時代だったのだろうか。