「チェルビ」第二十話 恋愛連載小説
※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪
少し間が空いてしまいました。よかったら、前回(第十九話)をどうぞ(クリック)。
イチゴが一つ乗ったショコラと鮮やかな色のオレンジムースが、ガラスのティーポットと一緒に運ばれてきた。
ユイがティーカップに注ぎわけて、砂糖を一杯ずつ入れた。
熱い紅茶を少しだけ口に入れた。
「店からのプレゼントです」
女性スタッフが微笑みながら、テーブルの上にハートの形の金皿を置いた。
バニラアイスとピンクのシャーベットが並んでいる。
その斜め前に、チョコ文字で誕生日を祝う英語が描かれていた。
「えっ?ありがとうございます」
僕はスタッフに、言葉だけの礼を言った。
店には、ユイの誕生日を伝えていない。
「お誕生日おめでとうございます。その指輪、すごく綺麗ですね」
「はい。ありがとうございます」
指輪を見せながら、ユイはスタッフに笑顔を向けた。
この女性スタッフが、僕たちの会話を店長に伝えたらしい。
ご馳走のあとのデザートは、とても豪華なものになり、ユイはとても盛り上がっていた。
「全部、めっちゃおいしかったね」
黒い革ブーツを前に蹴りだして歩きながら、ユイが僕の左腕に絡まってきた。
駅の前の広場では、二人組の少年がギターを鳴らして歌っていた。
高校生ぐらいだろうか。最近よく聞く流行りの曲だ。
僕たちは、なんとなく立ち止まっていた。
曲が終わり、僕は少年たちの前にある口を大きく開けたギターケースに、財布の中の小銭を全部入れた。
二人にユイが誕生日であることを伝え、ユイの隣に戻った。
ユイはすぐに手を繋いできて、僕を軽く引っ張った。
「行こっか」
「ちょっと、待って」
ユイを引き止めるのと同時に、演奏が始まった。
誕生日を祝う優しい歌声がギターの音色に乗って流れてきた。
「えっ?」
驚いた表情で僕を振り返るユイ。
「オレより、あの子らのほうが、歌、上手やろ?」
「今度、カラオケ行こ」
ユイは、僕の左側から完全に抱きついてきた。
僕の右腕まで両手をしっかりと回している。
感触だけで触れているものがわかり、僕の左腕は意思とは無関係にかなりの力が入っている。
ゆらゆら。
安定感に乏しくなった二人は、音楽に揺れている。
少年たちのハーモニーが終わり、アコースティックが派手に幕を降ろした。
「おめでとうございます!」
少年たちは、僕たちを指差して、拍手をはじめた。
周りにいた十人ほどの観客からも、まばらに拍手が起こった。
二人で周りの人たちに軽く頭を下げ、最後に少年たちに手を振った。
切符売場に向かう僕たちの背中から、少年たちの歌声が聞こえていた。
改札を抜けて、ユイが帰る側のホームへ向かった。
「ありがと」
「うん、こちらこそ。ありがと」
「めっちゃ、楽しかった。人生で一番楽しい誕生日かも」
駅のホームの大きな柱にもたれたユイが、指輪を見ながら満足した表情だ。
「明日も会える?」
「パソコンスクールのあとでもいい?」
「うん。会いにいくよ」
二人で周りを見渡した。
今は、完全に周りからは死角になっている。
貴重な時間は、落ち着かないキスに費やされた。
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