「チェルビ」第十四話 恋愛連載小説
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※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
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僕たちは、駅に向かった。
ここから地下鉄で場所を移動して、大きな雑貨屋のショップビルに向かうためだ。
電車内は、休日を楽しんでいる若者や家族連れで混雑していた。
出入口横の狭い壁を背にユイが立ち、僕と向かい合った。
「とりあえず、ベッドと布団だけ見てみる」
「うん。いいのがあるといいね」
僕は新しい部屋の家財道具を、まだ調達していなかった。
今住んでいる寮では、生活に必要なものは全て用意されていた。
食堂があり、食事の用意も必要なかった。
雑貨屋の入り口付近には、すごい人だかりができていた。
ラジオ番組のイベントが開催されている。
司会の女性タレントと、最近出てきたばかりの男五人組のロックバンドのメンバーが、仮設ステージ上で面白くないフリートークをしていた。
ユイを先頭に、人だかりのすそを通り抜けて店内に入った。
寝具売場の五階までエスカレーターで昇ることにした。
「今度の部屋、結構広いから、セミダブルぐらいのベッドにしよっかな」
「いいなあ。わたしの部屋、めっちゃ狭いやろ?」
「でも、マジですごくカッコいい部屋と思ったよ」
「ありがと」
セミダブルのベッドは三種類しか用意されていなかった。
どれも結構いい値段だ。
結局、ベッドと布団はホームセンターで買うことにした。
「これ、どう?」
ユイが、布団と枕のカバーがセットになったものを手に取った。
濃紺の荒い繊維をラフな縦横の生地目にしてあるデザインが僕好みだ。
「それにする」
「はやっ。他に見なくていいの?」
「いいよ。こういうのは、第一印象が大事やから」
「もしかして、女の子も?」
意地悪い目つきを僕に向けて、ユイが笑う。
不思議な感覚だった。
五日前までは、完全に他人だった二人。
コンビニで初めて出会い、その数時間後にお互いの名前も知らないままキスをした。
そして、今。
雑貨屋の寝具売場で、この笑顔を独占している。
お互いに気持ちの確認はしていたが、確証は何ひとつない。
僕はユイが好きだ。
それは、わかりきった事実だ。
ユイはどうだろうか。
急に、なんとも言えない気色の悪さが胸の奥に広がりだした。
喉のあたりの神経が過敏になり、口の中が嫌な温度になっていく。
無意識のうちに、ため息が出てしまう。
この不安感は、完全に本気の「恋」をしている証拠だ。
久しぶりの感覚に、僕の身体は軽い拒絶反応を起こしている。
多分、表情にも現れていたのだろう。
ユイが心配そうな目をしている。
「どうした?さっき、からかったから、怒ってるの?」
「ううん。ごめん、ごめん。一階で、なんか飲もっか?」
「うん。あっ、アイスが食べたい」
布団カバーのセットを購入してから、下りのエスカレーターで一階へと向かった。
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