「チェルビ」第十二話 恋愛連載小説
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※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
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「こちらへどうぞ」
案内されるまま、ついて行った。
壁の高い位置に大きなガラスがある。
樹木と樹木の間から、九月の陽光が差し込む店内。
数名の男女スタッフが、感じのいい挨拶で笑顔を向けてくる。
僕たち以外に他の客は若いカップルが一組だけだった。
「あっ。すみません。二階でもいいですか?」
僕は、前を歩く女性スタッフに尋ねた。
「いいですよ。お好きなところで、お待ちください」
木製の階段を昇り、上のフロアへ向かった。
吹き抜けの二階フロア。
十席の四人掛けのテーブルがニ列に並んでいる。
下のフロアが良く見渡せる席に着いた。
「どう?」
「めっちゃ、お洒落。すごい、いい感じ」
すぐに、先ほどの女性がやってきた。
水の入ったグラスをテーブルに並べて、今日のランチを説明してくれた。
サーモンとほうれん草のクリームソースと、キノコと鶏肉のパスタを二人で分けることにした。
どちらにも、焼きたての白パンとバターロールが付いてくる。
下のフロアで働くスタッフを眺めていた。
相変わらず、格好良い動きで、見ていて気持ちがいい。
「あっ。忘れないうちに・・・」
ユイが何かを思い出して、胸の前で両手を軽く叩いた。
小豆色のメッセンジャーバッグから、乳白色のビニール袋を取り出した。
「はい。プレゼント。さっきのお返しになっちゃった」
「くれるの?」
「うん。中、出して見て」
袋の入口から、たたまれた白い布地が見える。
取り出して、広げてみた。
半袖のシャツだった。
真中の胸の部分にプリントしてあり、それが鮮烈に目を引くデザインだ。
青と緑の幾何学的なドット柄で、右斜め前から見たシマウマの顔を形作っている。
「これって・・・。部屋にあったポストカードと同じ・・・」
「うん。わたしが描いたやつ」
ユイの部屋に飾ってあったポストカードは、全てユイ自身が作ったものだと教えてくれた。
てっきり、どこかで売られているものだと思い込んでいた。
「すごい。めっちゃ、カッコいい。ありがと。めちゃめちゃ嬉しい」
「よかった」
ユイは、恥ずかしいので、僕にこれを渡そうかどうかすごく迷ってしまったらしい。
お世辞抜きに、本当にカッコいいデザインだと思う。
同時に、目の前にいる不思議な才能を持つ少女が、よく分からなくなってきた。
シャツをたたんで袋に入れなおしながら、ユイの「本当の正体」が気になっていた。
運ばれてきたサラダが美味しくなければ、きっと僕は彼女の過去について質問していただろう。
「ドレッシング、めっちゃ美味しい」
鮮やかな緑色のリーフレタスを器用にフォークで刺しながら、ユイはサラダの味に感激していた。
ゴマ風味のドレッシングは、少しフルーツのような爽やかな酸味と甘味があり、確かにいい味だ。
カリカリのベーコンとも相性がいい。
僕たちは、あっという間にサラダを平らげた。
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