「チェルビ」第十話 恋愛連載小説
※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。
意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪
磨きぬかれた光沢を放つ、太いリング。
もしかしたら、大きな石かオブジェが乗っかっていたのかもしれない。
台座の部分が切り取られたように平たくなっている。
平らの部分は、化学反応の跡なのか、綺麗な銀色の上をまばらに青や赤の粒状が光っている。
(めっちゃ、綺麗・・・)
美しさと見た目どおりの重量が、単純に格好良かった。
「お待たせ」
ユイの言葉に応えるのが一瞬遅れるほど、魅入っていた。
指輪を元の場所に戻した。
「ここの商品って、全部、一点物なん?」
「うーん・・・。どうなんかな。でも、ほとんどが、そうやと思う」
この店に置いてある物は、あまり有名でないデザイナーや、無名ブランドのメーカーが、自分たちで値を決めて並べていくらしい。
試作品や失敗作もあり、他の店では見ることのないデザインの物ばかりなのはそのためだ。
中には、学生や一般の人たちの作品もあるという。
僕は、あの指輪に惹かれてはいるが、手に入れるためには何か決定的な理由が欲しかった。
「あっ。これ、めっちゃかわいい」
ユイが棚に置いてあった携帯電話ストラップを見つけた。
「ほら、かわいくない?」
手に取って僕に見せてくれた。
黒い革紐に粗い木彫りの丸型がぶら下がっている。
ガタガタした黒い丸の中に、少しいびつな白いハートがあった。
「色違いもあるよ」
僕は白い丸に黒いハートのものをユイに見せた。
「こっちも、いいね」
僕の手から、それを受け取るしなやかな白い指。
反射的に、僕の頭の中をいくつかの考えが走り回りだした。
「どっちか、プレゼントするよ」
「えっ?いいの?」
「うん。でも、どっちか一つね」
「ありがと。うーん。どっちにしよっかな」
ユイが悩んでいる間に、さっきの指輪を左手の中に隠し込んだ。
「こっちにする」
ユイは黒に白いハートを選んだ。
「ちょっと、待ってて」
ストラップと指輪を持って、 店員のいるところへ向かった。
ストラップと指輪を別々の梱包にしてもらい、指輪をジャケットのポケットにしまった。
壁のイラストを眺めているユイのもとへ戻り、ストラップを入れたチョコレート色の包み袋を渡した。
「はい」
「ありがと。めっちゃ、嬉しいです」
店の外に出ると、ユイは早速ストラップを携帯電話に付けたいと言い出した。
歩道のガードパイプにもたれて、袋からストラップを取出した。
自分の携帯電話から、元々付いていた白黒のチェック柄のベルトストラップを外した。
そして、器用に新しいストラップを付けだした。
その指先を、見ていると自分の鼓動が早くなっていくのがわかる。
あの指輪は、この白くしなやかな指を飾るために、僕に見付かったのだと確信した。
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