「チェルビ」第七話 恋愛連載小説
「チェルビ」第一話 (テーマ:チェルビ)はこちらから(クリック)
※「チェルビ」は、わたしが作った”語感”が気に入ってるだけの言葉です。意味は、今後の展開の中でわかるかもしれません。
※感想をコメントしづらい方。「読んだよ」の一言だけでもいただけると、嬉しいし励みになります♪
お互いの素性なんか、どうでも良かった。
突然はじまった、想定外の恋。
無邪気に盛り上がる僕たちに、信用という言葉は意味を成さない。
それだけ、二人は自分たちの感覚だけを信じきっていた。
惹かれ合っているのは事実だが、裏付けるものは何一つなかった。
人が人を好きになるのに理由なんかいらない。
世間にふれ回っている噂は、どうやら本当だったようだ。
根拠がない分、二人の出会いも、はじまりも、お互いの気持ちも、全ては本物なんだと、強く、強く思い込んだ。
自分たちに足りないものは何もない。
偶然の出会いには、何かしらの意味があるはず・・・。
二人は、絶対うまくやっていける。
大人になりきれていない二人は、全力でそう信じ込もうとしていた。
僕たちの恋は、あるかどうかもわからないゴールに向かって、まっすぐ突き進もうとしていた。
それは、ペース配分を考えない長距離ランナーの心境と同じなのかもしれない。
無謀で、馬鹿げていて、とても危険な賭けであることに気付いていなかった。
現実の時間が過ぎていく。
お互いの気持ちを確認できた後、二人は必要最低限の会話だけで、幸せな時間を過ごすことができた。
この頃は、メールがまだ一般的に普及していない。
僕たちは、お互いの携帯電話の番号を交換した。
「帰ります」
もっと一緒にいたい気持ちを、ありったけの理性で押さえつけながら、僕は立ち上がった。
「お疲れさま」
ユイがかけてくれた言葉に、思わず笑ってしまった。
本当に疲れた。
あらゆるものを総動員した後の疲労感は、今まで感じたことのない満足感でもあった。
玄関で靴を履きながら、思い出した。
「もう、警察の人ら帰ったかな?」
「どうかな。でも、もう大丈夫。帰り、気付けてね」
「ユイ・・・さん」
「ん?」
「お別れのキスは?」
「調子にのるな」
ユイの最後の一言は、警察がいなくなっていた帰り道でも、あまり混んでいない電車の中でも、僕を有頂天にさせていた。
結局、僕は、眠りに就くまで、ユイのこと以外考えられないでいた。
↓無謀にもランキング参加しました。押していただきますよう、よろしキュン。