「チェルビ」第三話 恋愛連載小説
「チェルビ」第一話 (テーマ:チェルビ)はこちらから(クリック)
「なんか、あったんかな?」
僕の声は、少女に届いていなかった。
赤い光に向かって、少女は早歩きをはじめた。
小走りで追いかけて、すぐに追い付いた。
「どうした?」
真剣な横顔は、こちらを見ようとしなかった。
「多分、あれ、うちのマンション・・・」
「えっ?」
警察官がマンションの入口に二人。
一人は無線でなにか話している。
少女は歩く速度をゆるめず、もう一人の前まで早歩きを進めた。
「ここの入居者なんですけど、なにかあったんですか?」
派手なバックプリントのシャツに細く黒いパンツの後ろ姿。
華奢な体つきには不釣り合いな、堂々とした口調だった。
「さっき、ここのマンションの管理人が、金属バットを持った男に襲われたんですよ。
幸いなにもケガはなかったんですけど、そこの壁のタイルがバットで割られてしまったみたいですね」
グレー色の十センチメートル角ほどのタイルが壁から剥がれて、割れた状態で地面に落ちていた。
「不審な男を見かけませんでしたか?」
警察官が問いかけてくると、少女は振り返って僕を見た。
僕は、思わず、首を大きく横に振っていた。
少女は、警察官のほうに体を向けなおした。
「見てません。
あのー、部屋に帰ってもいいですか?」
「いいですよ。警察官が二人、建物内を調べてますが、気になさらないでください」
「はい。ありがとうございます」
軽く頭を下げ、それから僕を振り返った。
何かを決心したような目をして、こちらを見ている。
僕は、軽く首をかしげた。
少女は、目をつむり、軽く頷いた。
「中に入っていいって。行こっ」
言われるまま、マンションの中に入っていく少女の後ろ姿を追いかけた。
警察官の前を、軽く会釈しながら通りすぎた。
四階に向かうエレベーターの中、少女は扉の上の光る数字を見つめている。
この狭苦しい空間に、普段は全く気にならない機械音がやけに響いてくる。
エレベーターが静かに到着した。
自動的に開く扉をくぐり、少女は右の方向に歩いていく。
奥から二つ目のドアの前で止まった。
「五分。待ってて」
白い手のひらを僕に見せながら、パンツの前ポケットから鍵を取り出した。
ほとんどなんの音も聞こえてこないマンションの廊下の壁にもたれて、状況を整理しようと試みた。
コンビニで見かけた少女と、ファミレスでご飯を食べて、たった今物騒な事件のあったマンションの中にいる。
そして、一人、廊下で待たされている。
名前も知らない少女の部屋の前で、ひどく現実味を失った感覚と薄っぺらい期待感が上手くまとまらない。
頭の中の独り言がうるさくなってきて、収拾がつかなくなりはじめた。
「どうぞ。お待たせ」
開いたドアの端から、幼い顔が覗いた。
ほんの数名、もしくはいらっしゃらないかもしれませんが、「おっちゃん王国」の続きをお待ちの重傷者をはじめとする被害者(読者)の皆様。
ホンマスンマセンフォルテシモ。
「チェルビ」が止まりません。どんどん、続きが頭の中に出てきちゃいます。
書いていかないと、頭が変になりそうです。(←ここにはツッコミ禁止)
当分、「チェルビ」を続けそうです・・・。
※「チェルビ」は、わたしが作った、語感が気に入ってる言葉です。意味は、今後の展開の中でわかるかも?