寛解のクオリティについて
今回のエントリは「統合失調症の人の表情の改善(前半)」「統合失調症の人の表情の改善(後半) 」の2つの続きである。
これらの記事では、単剤処方であっても、良好な寛解状態に至っていなければ何にもならないことを指摘している。
「統合失調症の人の表情の改善(前半)」から。
特に大学病院などで治療後の人で、エビリファイ単剤で寛解している人たちは、表情の改善が今ひとつだったりする。情緒が表情にあまり出ないような感じなのである。これはたぶん2つ原因があると思われる。1つは無理に単剤処方をしているために、エビリファイの量が多すぎること。もう1つは気分安定化薬の併用などの工夫が足りないことがある。
ある時、エビリファイ24㎎単剤で処方されている人を紹介され治療したことがある。その人は体の動きもぎこちなく、表情も硬く、全然笑うことがなかった。その人は良くはなっているものの、ああ言うのは寛解とは言わない。寛解は陽性症状だけでなく陰性症状も含めるからである。
その人は本を読んでも全然頭に入ってこないなどの思考障害も訴えており、はっきりとした幻覚妄想こそないだけで、陽性症状的な所見も残遺していると言えた。その人はリボトリールとデパケンRを追加し、徐々にエビリファイを漸減していった。デパケンRを追加するだけで少しだけ情緒が出るようになった。エビリファイを時間をかけて12㎎くらいまで減量した。これだけで、この人は笑顔が出るようになり、診察中の会話も以前に比べ自然になった。その人が数ヵ月後に実家に帰った時、その変化に家族が驚いたと言う。発病後、碌に喋らない人になっていたのに、自然に会話ができるようになったからである。
「統合失調症の人の表情の改善(後半)」から
前回のエントリで最初に出てきた患者さんは、エビリファイの減量後、更に12.5㎎のラミクタールを隔日で追加したところ、信じられないほど改善するに至った。長時間の読書や勉強が可能になったのである。本を読んでもスイスイと頭に入ってくるようになったという。また、大学での受講科目の試験が合格できるようになった。大変な「機能改善」である。それまでは不合格続きで、自分に失望していたらしい。
この患者さんの転院時の処方は以下のようである。
エビリファイ 24㎎
レキソタン 10㎎
シンプルだけど、あの結果では良いとは言えない。「単剤主義」は治療の基本としては間違っていないが、医師が治療の工夫をしなくなる欠点があると思う。さまざまな処方のバリエーションを試みることで、更に良好な寛解状態が望めるのに、それを放棄しているからである。
時間をかけて以下の処方に変更。
エビリファイ 12㎎
レキソタン 10㎎
デパケンR 400㎎
ラミクタール 25㎎(隔日)
一時的にリボトリールを処方していたが、レキソタンを処方していることもあり、整理している。この処方のレキソタンは初診以前から入っているが、結構キモである。
この患者さんは後期の試験でかなり挽回し留年を免れた。前期の時点ではほぼ絶望的だったが、集中力や思考力が急回復し、試験勉強ができるようになったからである。(この人は元々知能が高い。)
最近の診察時の言葉。
調子が良い。今は何でもできそうです。学校が楽しくなってきた。実習も苦にならなくなった。色々な技術も身についてきた感じです。前は震えがあったけど、今はあるかもしれないけど気付かないくらい。
集中力はある。何かにのめり込んでいける感じです。試験にはよく追われているけど、前よりも頭がまわる。普通に試験を受けられる。水泳をしたり、サッカーをしたり、クラスメートとバーベキューもしている。とても忙しいので、実家にはなかなか帰れないですね。
参考
統合失調症の人の表情の改善(前半)
統合失調症の人の表情の改善(後半)
これらの記事では、単剤処方であっても、良好な寛解状態に至っていなければ何にもならないことを指摘している。
「統合失調症の人の表情の改善(前半)」から。
特に大学病院などで治療後の人で、エビリファイ単剤で寛解している人たちは、表情の改善が今ひとつだったりする。情緒が表情にあまり出ないような感じなのである。これはたぶん2つ原因があると思われる。1つは無理に単剤処方をしているために、エビリファイの量が多すぎること。もう1つは気分安定化薬の併用などの工夫が足りないことがある。
ある時、エビリファイ24㎎単剤で処方されている人を紹介され治療したことがある。その人は体の動きもぎこちなく、表情も硬く、全然笑うことがなかった。その人は良くはなっているものの、ああ言うのは寛解とは言わない。寛解は陽性症状だけでなく陰性症状も含めるからである。
その人は本を読んでも全然頭に入ってこないなどの思考障害も訴えており、はっきりとした幻覚妄想こそないだけで、陽性症状的な所見も残遺していると言えた。その人はリボトリールとデパケンRを追加し、徐々にエビリファイを漸減していった。デパケンRを追加するだけで少しだけ情緒が出るようになった。エビリファイを時間をかけて12㎎くらいまで減量した。これだけで、この人は笑顔が出るようになり、診察中の会話も以前に比べ自然になった。その人が数ヵ月後に実家に帰った時、その変化に家族が驚いたと言う。発病後、碌に喋らない人になっていたのに、自然に会話ができるようになったからである。
「統合失調症の人の表情の改善(後半)」から
前回のエントリで最初に出てきた患者さんは、エビリファイの減量後、更に12.5㎎のラミクタールを隔日で追加したところ、信じられないほど改善するに至った。長時間の読書や勉強が可能になったのである。本を読んでもスイスイと頭に入ってくるようになったという。また、大学での受講科目の試験が合格できるようになった。大変な「機能改善」である。それまでは不合格続きで、自分に失望していたらしい。
この患者さんの転院時の処方は以下のようである。
エビリファイ 24㎎
レキソタン 10㎎
シンプルだけど、あの結果では良いとは言えない。「単剤主義」は治療の基本としては間違っていないが、医師が治療の工夫をしなくなる欠点があると思う。さまざまな処方のバリエーションを試みることで、更に良好な寛解状態が望めるのに、それを放棄しているからである。
時間をかけて以下の処方に変更。
エビリファイ 12㎎
レキソタン 10㎎
デパケンR 400㎎
ラミクタール 25㎎(隔日)
一時的にリボトリールを処方していたが、レキソタンを処方していることもあり、整理している。この処方のレキソタンは初診以前から入っているが、結構キモである。
この患者さんは後期の試験でかなり挽回し留年を免れた。前期の時点ではほぼ絶望的だったが、集中力や思考力が急回復し、試験勉強ができるようになったからである。(この人は元々知能が高い。)
最近の診察時の言葉。
調子が良い。今は何でもできそうです。学校が楽しくなってきた。実習も苦にならなくなった。色々な技術も身についてきた感じです。前は震えがあったけど、今はあるかもしれないけど気付かないくらい。
集中力はある。何かにのめり込んでいける感じです。試験にはよく追われているけど、前よりも頭がまわる。普通に試験を受けられる。水泳をしたり、サッカーをしたり、クラスメートとバーベキューもしている。とても忙しいので、実家にはなかなか帰れないですね。
参考
統合失調症の人の表情の改善(前半)
統合失調症の人の表情の改善(後半)