統合失調症の人の表情の改善(後半) | kyupinの日記 気が向けば更新

統合失調症の人の表情の改善(後半)

統合失調症の人の表情の改善(前半)の続き。

たぶん、統合失調症の人の表情の改善には2段階があり、1段階は陽性症状の消失によるところが大きい。しかし、この時点ではまだ無表情だったり、空虚さが見える場合も多く、表情の特異さがさほど改善していない。初診時の極端な険しさ、硬さが改善しているだけである。この点で、陽性症状が改善しない人は表情だけとっても深刻と言える。前に進めないからである。

2段階は、何かしらの神経伝達物資を増やすことが必要であり、この点で非定型抗精神病薬が定型抗精神病薬より優れる面を説明できる。ECTの直後、一時的に信じられないほど表情が改善するのは、この1段階と2段階をまとめてしていることが関係ありそうである。

つまり、抗精神病薬は遮断するだけでは能がない。

表情を改善する点で、気分安定化薬が重要なのは、この2段階に関与しているよう思うが、そこまでの自信はない。少なくとも、寛解の質には大いに関係しているようには見える。

ラミクタールは、躁うつ病や非定型精神病のうつ状態をかなり改善することがある。また器質性幻聴や器質性うつ状態に奏功することもしばしばある。(特にレビー小体病の幻覚や広汎性発達障害のうつ状態、幻視・幻聴など)

ラミクタールは、何らかの作用機序で脳内伝達物質に干渉しているのかもしれない。あるいは神経伝達物質以外の作用を及ぼしている可能性がある。

前回のエントリで最初に出てきた患者さんは、エビリファイの減量後、更に12.5㎎のラミクタールを隔日で追加したところ、信じられないほど改善するに至った。長時間の読書や勉強が可能になったのである。本を読んでもスイスイと頭に入ってくるようになったという。また、大学での受講科目の試験が合格できるようになった。大変な「機能改善」である。それまでは不合格続きで、自分に失望していたらしい。

ラミクタールは実に不思議な薬で、人により必要量が2相性になっており、12.5㎎~25㎎しか必要がなく、しかも劇的に改善する一群の人たちがいる。一方、100㎎以上必要な人もいるので、真ん中の用量がすっぽり抜けている。

ラミクタールは基本的に抗てんかん薬であるが、海外では双極性障害の適応も認められている国もある。つまり、気分安定化薬の1つなのである。ラミクタールは単剤で処方できる国はまだ少ない(つまり他のてんかん薬の併用が必要)。アメリカは可能であり、単剤のほうが他の薬の影響を受けないので好評価だったらしい。

ラミクタールは他の薬物の血中濃度をあまり変動させない。しかし他の薬の影響は受ける。例えばデパケンRはラミクタールの血中濃度を上げるため、同時に使う場合、25㎎隔日から服用することが推奨されている(推奨というより必須)。ラミクタールの薬物としての有用性を考えるに、早急に増量して中毒疹が出て使えなくなるほどバカらしいことはない。治療上、その方がずっと痛いからである。(参考

てんかんで精神症状が出ている人にラミクタールを使うと、まずてんかん発作に効くが、同時に慢性的な不愉快な気分を改善する。いわゆるてんかん的な不機嫌である。またてんかん的な思考面の渋滞も改善する。人によれば滑舌(呂律の悪さ)も良くなることがある。また、睡眠状態が一気に改善して、眠剤が全く必要なくなる人がいる。

ラミクタールは患者さんの表情をはっきりさせる。これは気分安定化と関係があるのかもしれない。ラミクタールで特に目が変化し普通になってくるようである。この改善の質はエビリファイとはいくらか異なっているように見える。

デパケンRとラミクタールの相違点だが、デパケンRは基本的にデフェンシブな薬であるのに比べ、ラミクタールは積極的に前に出て行くタイプであること。賦活系なので、いかなる疾患であれ、合わない人は病状が更に悪化するか不安定になる。その点では、ラミクタールは中毒疹の出現率も含め、合わない確率はやはりデパケンRよりは高い。(治癒・寛解への爆発力や改善の質に相違がある)

また、躁うつ病ではデパケンRは躁状態により有効だが、ラミクタールはうつ状態に有効性が高い。

器質性疾患に有効性が高いが、内因性疾患の統合失調症にも良い人たちがいる。これは現代社会の若い統合失調症の人たちは軽微な器質性要素を孕んでいることが推測される。しかし、統合失調症の人は症状悪化のため中止に至ることが器質性疾患に比べ多い。これは、1つは軽微に賦活して、なお急速に増量できないことも関係がありそうである。(統合失調症の人の場合、少し浮いて行動が不穏になったり、情緒不安定になることがある。)

ラミクタールは、最もてんかんと双極性障害の人に向いており、次はレビー小体病や非定型精神病の幻覚妄想、うつ状態に良いように思われる。(器質性色彩のある疾患)

知的発達障害や広汎性発達障害の人たちにも良い場合があるが、つまり器質性の精神所見の部分に効いているのであろう。知的発達障害の施設で、てんかんを伴う子供達にラミクタールを処方されたところ、それまで不登校だった3名の子供が養護学校に行けるようになったという。まさに劇的な変化である。(ひきこもり傾向を改善)

ラミクタールは小児用として、2㎎、5㎎の剤型がある。(他、25㎎、100㎎がある)

ラミクタールを器質性の幻聴や幻視に処方する場合、特に有用な点は、抗精神病薬ではないのでEPSが出ないことである。これはレビー小体病の治療において極めて優れた特性といえる。

なぜなら、レビー小体病は幻覚を治療すればパーキンソン症候群が悪化し、パーキンソン症候群を治療すれば幻覚が悪化するという、将棋で言うところの詰んだ形になっているからである。レビー小体病の器質性幻覚にラミクタールが奏功した場合、非常に美しく改善する。ここが素晴らしいと思う。

それと同じ理由で、広汎性発達障害のうつ状態や器質性幻覚の治療においても、彼らが非常にEPSが出やすいことを考慮するに有用性が高い。

ただ、彼らは往々にしてアレルギー性体質であるため、ラミクタールの中毒疹も出やすいように見える。劇的に効いているのに中毒疹が出て中止せざるを得ない人もいる。一般にラミクタールは軽微な中毒疹が多く、概ね10人に1人は中毒疹で中止になる感じである。

広汎性発達障害の人にラミクタールを使っていると、その効果が春ウコンに似ていることに気付く。おそらく春ウコンはラミクタールの5~8%の効果があるような気がしている。春ウコンは器質性所見を改善するが、その幅がラミクタールに比べ遥かに狭く効果も弱い。しかしながら、ラミクタールは中毒疹で使えない人がいるので、そういう人には良いと思う。

そういう経験から、ラミクタールを処方している人の春ウコンはほとんど中止してしまった。春ウコンはたまにラミクタールを使っていない人に服用を薦めている。

当初、ラミクタールは60%~70ほどの人たちに有効率があると思っていたが、中毒疹だけでなく、初期の波乱のため、もう少し有効率が下がるようである。また継続しているうちに次第に有用性が薄れていく人たちがいることに気付いた。そういう人は次第に減量し中止している。これは腰折れとも少し異なっているように見える。

春ウコンは1年くらい使っていると効果が飽和状態になり、それ以後、使わなくてもあまりかわらない感じになる。たぶん春ウコンと同じく、ラミクタールは器質的な面を改善し、去っていくタイプの薬物なのであろう。(もちろん、てんかん発作に使っている場合は継続しなくてはならない)

ラミクタール、ルーラン、バッチフラワー、春ウコンは去っていくタイプの薬物である点が似ている。

いったい、「去っていくタイプ」とはどのようなことを言っているのだろうか?

ラミクタールをやがて完全に中止しても、臨床所見に何らかの好影響が残っていることに気付く。(それは全ての薬を止めているわけではないのだが・・)

ラミクタールは、ソフトだけでなくハードに切り込むタイプの薬物なのである。

ラミクタールはファンタジスタなのであった。

参考
ピロリ菌と除菌
内因性幻聴と器質性幻聴
デパケンRと広汎性発達障害
広汎性発達障害のように見える統合失調症は存在する
アスペルガーと前頭前野
躁うつ病は減っているのか?
統合失調症は減少しているのか?