てんかんの寛解、治癒の謎
いつかも書いたが、一般の精神病院ではてんかんの初診を診ることが非常に少ない。てんかんは子供の場合は小児科、大人でも脳神経外科や神経内科が初診を診ることが多いと思われる。
したがって精神科医はてんかんの人は初診より治療を引き継ぐことが多いのである。(ある総合病院で大変な数の新患を診ていても、初診のてんかんを診ることは非常に少ないと過去ログに書いている)
引き継ぐ理由はいろいろあるが、1つはてんかん性精神病の治療をまかされること。また障害者施設に入所者のうち、てんかんも伴っているケースも同様である。
てんかんだけで精神症状がないか、あるいはないに等しい人たちのうち、けいれん発作のコントロールの良い人たちは、普通に働いている。もちろん、障害年金も受給していない。このような人は車の運転免許も持っており、実際に運転もしている。(自立支援法を受けるのは可能)
てんかんで精神症状がないに等しい人たちは、薬を貰うためだけに通院しているため、概ね3ヶ月までの処方が許されている。リボトリールが90日処方可能なのはそういう理由である。(新薬は別)
以前は眠剤は14日までしか処方できなかった。これは濫用の恐れがあるためと、悪用されかねないからである。ところが、患者さんからすると1ヶ月に1回の通院が難しくなるため、眠剤もなんとか1ヶ月処方できるようにしてほしいという要望が強かった。これは精神病院協会もずっと国にお願いしていたこともあり、現在は眠剤も特別なものを除き30日処方が可能となった。
これは良く考えると、この方がずっと医療費の削減になる。(のべの再診料、通院精神療法などの技術料が減るため)
例えば、パキシルの処方日数の上限は、ひょっとしたら存在しないのかもしれない。だから際限なく大量に処方できるように思うが、非常識と見なされる日数分を処方した場合、社会保険事務所から指導を受けそうな気がする。
パキシルなどの上限がなくなった時、クリニックを開業している友人が嘆いていた。患者さんは何か月分でもできるだけたくさん処方してほしいと希望するという。(日々の延べ受診人数が減少するため減収になる。)
パキシルやデプロメールなどは、それ以外の眠剤なども貰っている人も多く、そこで律速段階となり現実的には上限が生じる人が多いのではと思う。
いつだったか、クリニックを代診したとき、県外からの通院者が多いことに驚愕した。あれだと、何か月分でもできるだけ多くの量を貰いたいという人が多いことに納得する。(クリニックの立地にもよる)。
いよいよ本題に入るが、これは最近気付いたこと。
僕の患者さんで、てんかんの人が治癒ないし、てんかん発作が全く消失してしまう人が多いというか、ほぼ全ての人がそうなっていることに気付いた。
ある音楽家の人は、ずっとテグレトールを服用していたが、遂にテグレトールがゼロになり、そのまま何ヵ月ごとかに来てもらっている。今や服薬していない上、発作も生じておらず、精神症状もないので治癒と言って良いと思われる。
その人に聞いてみた。
薬を止めて、何かこれが変わったってことはないですか?
その人は首を振り、
全然ないです。
なんだか、これって拍子抜けしないか?
テグレトールを漸減とは言え、中止したんだから、何らかの印象の変化くらいあってもおかしくないでしょ。別にそれがいけないというわけではないけど。本人にとって、薬を止めたことの身体的変化は何も感じ取れないようであった。(これは一般的意見と相違がある)
てんかん発作が減少しやがて収まる経過だが、非常に興味深い。
30歳頃から発作が生じ、ずっとてんかん性の精神病状態があり家庭内適応レベルの人がいた。精神症状の悪化のため、過去に10回以上の入院歴がある。重積発作は若い頃には起こったことがあるが、近年は見られなくなっていた。もう70歳近い人である。しかし、どうやっても月に2~3回はてんかん発作があるという。
ところが、ある時、とてつもない重い夢幻様状態が生じた。
身の回りのことも何もできないような状態である。そのまま入院させるほかはなかった。自分で食事すら摂れないからである。てんかん発作は起こりかねないので薬は中止はできないが、このまま悪性症候群に移行すれば、中止せざるを得ないんでしょうなぁ・・と思っていた。
そういう状況は徐々に全身状態が悪くなるもので、少しずつ抗てんかん薬を減量してみた。もちろん減らせそうなものだけである。
そのはっきりしない状態は際限なく続き、いつ収束するかも不明であった。そうして遂に10ヶ月を超えたのである。油断すると褥瘡が起こりかねないので、看護的にも気をつけないといけない。
そうして1年くらい経ち、何かの拍子に原因も不明だが、急速に意識が清明になってきた。そして霧が晴れたように精神症状も治まったのである。なぜかけいれんも消失していた。(服薬はしているのでこれは寛解と言うべきなのでしょう)
そして元気に退院していった。
この人の場合、以前より服薬量はむしろ減少している。なぜ40年も続いた発作が消失したかは謎だが、統合失調症の人のECT後の寛解のパターンや、悪性症候群後の寛解パターンに非常に似ている。
どうも何らかの方法でけいれんを止めた後、超絶に精神症状が出現する一群の人がいるようなのである。また、その絶望的な精神症状はかなり長期に続くが、最終的には脱出するようには見える。(脱出できなかった人がまだいないため)
結論
長年続いていたけいれんを止めると、時に大変なことになる。しかしその先には、寛解・治癒が存在する。
参考
何らかの薬を投与、失敗しその後寛解するパターン
非定型精神病のテーマ
悪性症候群のテーマ
したがって精神科医はてんかんの人は初診より治療を引き継ぐことが多いのである。(ある総合病院で大変な数の新患を診ていても、初診のてんかんを診ることは非常に少ないと過去ログに書いている)
引き継ぐ理由はいろいろあるが、1つはてんかん性精神病の治療をまかされること。また障害者施設に入所者のうち、てんかんも伴っているケースも同様である。
てんかんだけで精神症状がないか、あるいはないに等しい人たちのうち、けいれん発作のコントロールの良い人たちは、普通に働いている。もちろん、障害年金も受給していない。このような人は車の運転免許も持っており、実際に運転もしている。(自立支援法を受けるのは可能)
てんかんで精神症状がないに等しい人たちは、薬を貰うためだけに通院しているため、概ね3ヶ月までの処方が許されている。リボトリールが90日処方可能なのはそういう理由である。(新薬は別)
以前は眠剤は14日までしか処方できなかった。これは濫用の恐れがあるためと、悪用されかねないからである。ところが、患者さんからすると1ヶ月に1回の通院が難しくなるため、眠剤もなんとか1ヶ月処方できるようにしてほしいという要望が強かった。これは精神病院協会もずっと国にお願いしていたこともあり、現在は眠剤も特別なものを除き30日処方が可能となった。
これは良く考えると、この方がずっと医療費の削減になる。(のべの再診料、通院精神療法などの技術料が減るため)
例えば、パキシルの処方日数の上限は、ひょっとしたら存在しないのかもしれない。だから際限なく大量に処方できるように思うが、非常識と見なされる日数分を処方した場合、社会保険事務所から指導を受けそうな気がする。
パキシルなどの上限がなくなった時、クリニックを開業している友人が嘆いていた。患者さんは何か月分でもできるだけたくさん処方してほしいと希望するという。(日々の延べ受診人数が減少するため減収になる。)
パキシルやデプロメールなどは、それ以外の眠剤なども貰っている人も多く、そこで律速段階となり現実的には上限が生じる人が多いのではと思う。
いつだったか、クリニックを代診したとき、県外からの通院者が多いことに驚愕した。あれだと、何か月分でもできるだけ多くの量を貰いたいという人が多いことに納得する。(クリニックの立地にもよる)。
いよいよ本題に入るが、これは最近気付いたこと。
僕の患者さんで、てんかんの人が治癒ないし、てんかん発作が全く消失してしまう人が多いというか、ほぼ全ての人がそうなっていることに気付いた。
ある音楽家の人は、ずっとテグレトールを服用していたが、遂にテグレトールがゼロになり、そのまま何ヵ月ごとかに来てもらっている。今や服薬していない上、発作も生じておらず、精神症状もないので治癒と言って良いと思われる。
その人に聞いてみた。
薬を止めて、何かこれが変わったってことはないですか?
その人は首を振り、
全然ないです。
なんだか、これって拍子抜けしないか?
テグレトールを漸減とは言え、中止したんだから、何らかの印象の変化くらいあってもおかしくないでしょ。別にそれがいけないというわけではないけど。本人にとって、薬を止めたことの身体的変化は何も感じ取れないようであった。(これは一般的意見と相違がある)
てんかん発作が減少しやがて収まる経過だが、非常に興味深い。
30歳頃から発作が生じ、ずっとてんかん性の精神病状態があり家庭内適応レベルの人がいた。精神症状の悪化のため、過去に10回以上の入院歴がある。重積発作は若い頃には起こったことがあるが、近年は見られなくなっていた。もう70歳近い人である。しかし、どうやっても月に2~3回はてんかん発作があるという。
ところが、ある時、とてつもない重い夢幻様状態が生じた。
身の回りのことも何もできないような状態である。そのまま入院させるほかはなかった。自分で食事すら摂れないからである。てんかん発作は起こりかねないので薬は中止はできないが、このまま悪性症候群に移行すれば、中止せざるを得ないんでしょうなぁ・・と思っていた。
そういう状況は徐々に全身状態が悪くなるもので、少しずつ抗てんかん薬を減量してみた。もちろん減らせそうなものだけである。
そのはっきりしない状態は際限なく続き、いつ収束するかも不明であった。そうして遂に10ヶ月を超えたのである。油断すると褥瘡が起こりかねないので、看護的にも気をつけないといけない。
そうして1年くらい経ち、何かの拍子に原因も不明だが、急速に意識が清明になってきた。そして霧が晴れたように精神症状も治まったのである。なぜかけいれんも消失していた。(服薬はしているのでこれは寛解と言うべきなのでしょう)
そして元気に退院していった。
この人の場合、以前より服薬量はむしろ減少している。なぜ40年も続いた発作が消失したかは謎だが、統合失調症の人のECT後の寛解のパターンや、悪性症候群後の寛解パターンに非常に似ている。
どうも何らかの方法でけいれんを止めた後、超絶に精神症状が出現する一群の人がいるようなのである。また、その絶望的な精神症状はかなり長期に続くが、最終的には脱出するようには見える。(脱出できなかった人がまだいないため)
結論
長年続いていたけいれんを止めると、時に大変なことになる。しかしその先には、寛解・治癒が存在する。
参考
何らかの薬を投与、失敗しその後寛解するパターン
非定型精神病のテーマ
悪性症候群のテーマ