トピナ12.5㎎ | kyupinの日記 気が向けば更新

トピナ12.5㎎

トピナが発売された当時、積極的には使っておらず(今でも積極的には使っていないが・・)、僕にとって、よくわからない薬の1つであった。今でも100%わかっているわけではない。

トピナは実に不思議な薬で、最初、処方した時、こんなにワケのわからない薬も珍しいと思った。処方し始めた理由は、たまたまかつてのオーベン(指導医)に会った時、トピナは非常に興味深いという話を聞いたからである。

その後、使い始めたが、たしか5人くらい連続で失敗に終わった。やっと1人うまくいき、更に4人くらい連続で失敗に終わったと思う。

呆れ果て、しばらく処方を止めていた。

このようにうまく行かないのは、僕の手が悪いのではないかと思った(参考)。

その後、再び使い始めたのは過食症の根本治療を意識し始めた頃である。僕の場合、やはり究極の薬物療法家なので、過食症のような疾患でも薬でなんとかしたいという気持ちが強い。(過去ログの通り)

そうして、過食症をターゲットに再び使い始めた。その時、気付いたのは、トピナはちょっとわかりにくい薬ではあるが、さまざまな精神症状を改善することである。問題は、「精神症状や身体症状を悪化させることも良くあること」であった。

悪化させることもあるなんて、今の非定型精神病薬、SSRIなどの抗うつ剤も同じデメリットはあるので、それをもって欠点という意識はなかった。

過食症へのトピナのポイント

①必要量には個人差がある。比較的少量でも効くのがポイントである。一方、200㎎程度必要な人がいる。

②ごく少量でも効果が出る人たちが存在する。時に12.5㎎~25㎎で十分な人がいる。

③薬物としての毒性が高い。感覚的にはラミクタールを上回ると思う。

④てんかん発作への効果は高い。トピナは切れが良い(発作が消失する確率が高い)。副作用もあるが、力がある。


④であるが、トピナは長期になると発作への効果に耐性ができるのか少し効きが悪くなる。だから副作用をあわせ、定着率という点ではラミクタールが上回るのではないかと思われる。

過食症については、12.5㎎服用でさえ、1日1食くらいしか食べられなくなる人がいる。このような人は身体的にもかなりダメージを及ぼしていると感じる。だいたい、トピナが全く服用できない人たちもいるのである。てんかんの人でさえ。

ある人はトピナを50㎎から始めたところ、激しいめまいが生じ、車の運転どころではなくなったと言う。この人はてんかんの人である。(抗てんかん薬デパケンRに上乗せ)。

ふらついてろくに歩けないと言う人もいた。トピナの副作用で「しびれ感」というのがあるが、これは少量ですら出現しうるものであり、本人が副作用と気付かないこともある。

中毒疹はラミクタールよりずっと少ないが出ることもある。精神科では、抗てんかん薬のカテゴリーに入る薬物は最も中毒疹が出やすい。

トピナは少量処方しても、患者さんが何かあったと言って電話をしてくる人が多い薬である。たぶん、向精神薬の中では高い方と思われる。

トピナの比較的現われやすい副作用で、「会話障害」というものがある。これは軽いものでは「会話がスローモーになる感じ」がみられるが、呂律が回らないという人はあまり経験がない。僕はいつも少量から始めるので、スローモーになる人は多めに服用すれば呂律が回らないかもしれないと思う。

トピナの頻度の高い副作用は、(10%を越えるもの)

①傾眠
②めまい
③摂食障害
④しびれ感
⑤電解質異常
⑥体重減少
⑦倦怠感
⑧肝機能障害


5%~10%程度の中等度の副作用として、頭痛、思考力低下、会話障害、複視、白血球分画異常、血中重炭酸濃度減少などがある。

更に頻度の低い副作用として、易刺激性、抑うつ、幻覚、妄想、不安、不眠、自殺企図ほか、多彩な副作用がある。(全ては挙げていない)

一方、50~100㎎程度飲んでも過食症の改善どころか、全く効果が現われず、副作用もこれといったものがない人もいる。服用できるできないで言えば、今は処方し始めた当時に比べてずっと成功率が高い。

トピナは結局、服用できるかどうかが重要であり、服用できれば、60~80%の人には過食に効果がある。過食が改善した人の精神症状をいろいろ聞いてみると、さまざまな精神症状に好影響を及ぼしていることを発見する。

例えば、PTSD的な苦痛な記憶の改善である。特に過去の嫌な記憶などが想起しなくなったりする。侵入記憶にも有効なのであろう。

トピナは気分安定化薬的な効果が乏しいと言われているが、服用を継続している人にはそうでもない。例えば、冬季のうつ状態の悪化がほとんどみられなくなったりする。

今回のタイトルの12.5㎎だが、この女性は広汎性発達障害的なかんしゃく、物を破壊する行為などがほとんど消失している。彼女はこの症状にずっと悩まされていたので、非常に喜んでいる。彼女が、どこの病院でもここまで良くなったことはなかったと言ったほどである。

また、トピナは全般の精神症状が改善すると、タバコの本数が減少する人も多い。禁煙薬ではないが、精神症状を改善することで2次的にタバコが減るのであろう。

過去ログで、いったん他の病院に転院したが、体重が増えたのでまた帰って来た女性の話が出てくる。彼女はブプロピオンでうつ状態がかなり改善し仕事をするようになったが、その後、仕事のストレスで、過食が出てきたと言う。しかし体重が劇的に増えることはなかった。彼女にトピナ50㎎から増量し、200㎎追加したところ、ぴったり過食が収まった。(ただしトピナを減量すると過食が再現する)

半年して、他の症状についていろいろ聞いてみた。彼女によるとトピナを服用し始めて、つまらないことで怒らなくなったという。子供に些細なことで腹を立てて、叱責した後に自己嫌悪に陥っていたが、そういう風なことが全然なくなったらしい。やはりトピナで精神症状が改善する人にとって、なかなか良い薬なのである。彼女は既に1年くらい働いている。ある日の彼女の言葉である。

過食は全くなくなった。仕事は順調です。1日、立ちっ放しの仕事。もう半年以上になる。これだけ続けて働いたのは生まれて初めて。

やはりお休みの日は疲れが出ますね。1日バタンキューです。たまに仕事で失敗があると落ち込みますね。トピナを飲み始めて、すぐに過食が減った。

子供を自分の感情に任せてしかったりするのがなくなった。今は部屋で音楽を聴いていること多いです。体は軽い。体重は43kgになった。もうこれ以上は減らないみたい。タバコも減った。今は2本です。


彼女はこれまで継続して働いた事がなかったようなのである。社会復帰させる能力の高い薬は、

ラミクタールとブプロピオンが傑出している。

それに準じる薬は、ノリトレンとアモキサンである。


トピナの過食に対する作用は早期に出現するが、他のちょっとした精神所見の改善はあまり目立たない。だから、ラミクタールに比べ精神面では切れ味が鋭い印象はない。

また、トピナは過食には全然効いていないのに、上記のような他の精神症状をかなり改善していることがある。これは本人は過食が改善していないので不満だが、なかなか扱いにくい精神所見が改善するので、トピナの成功例と言える。

いずれにせよ僕にとって、ラミクタールに比べトピナのほうがずっと決断が必要な薬なのは確かである。

このエントリを読むとわかるが、トピナのような薬は、使い慣れない医師が使っても、そうそう効果が出るものではない。

参考
精神科医と薬、エイジング
不思議なブログ(後半)
トピナは精神療法をするのか?
貴方が来るのを待っていました
105kgから62kgまで減量した人
精神科受診マニュアル(上級編)