統合失調症かどうかを診断してほしいと言う依頼
今回と次回のエントリは少し繋がりがある。今回は前半といえばそうだが、前半、後半は関係が深いというほどではない。
稀に現在、診ている人が本当に統合失調症なのか診断してほしいと言う依頼を受けることがある。リエゾンでの診察依頼なので、相談主は患者さん本人ではなく精神科以外の担当医である。
その患者さんが統合失調症かどうかは他科の医師にとって重大なことではない。一般病棟で穏やかに過ごされているなら尚更である。何か治療上の問題があって相談されることがほとんどで、学問的興味で相談された記憶はない。
例えば、
①抗精神病薬をこちらの判断で止めてしまったが、どうなのでしょうか?
②前医で、統合失調症の診断がつけられているが、薬は必要でしょうか?
などである。この文脈で診断の依頼が来る場合、統合失調症のことも、そうでないこともある。
例えば、内科科病棟で大変な精神症状を呈しているような状況で、「統合失調症かどうか」を相談されることはない。相談されるのはなんとか鎮静する方法である。病棟内適応をなんとか改善してほしいと言われるか、精神科病院への転院を依頼されることが多い。
他科の主治医が、自分の判断で薬を中止してしまうほど落ち着いている患者さんは、統合失調症でないこともしばしばである。これは必ずしも誤診ではなく、例えばセロクエルなどの穏和な非定型抗精神病薬が投与されておりレセプト的に診断名が挙がっているだけのこともある。紹介状の内容を見てもそんな感じだ(前医が誤診しているように思えないという意味)。
また、エピソード的に幻覚妄想が出現したため統合失調症と診断を受けている人もいるが、年配の人であるほど、統合失調症ではないことが多い。総合病院はなんだかんだ言ってお年寄りが多いからだ。これはたぶん誤診だが、操作的に診断するとそう言えなくもないので、真に誤診かどうかは謎である。少なくとも、僕は統合失調症とは言わない。
ある日、そういう相談があったので、病棟婦長(師長というべきか)と一緒にベッドサイドに診察に行った。その時、患者さんは床頭台で食事を摂っていた。声かけした瞬間、彼女はぱっと振り向いた。
振り向いた瞬間に統合失調症でないのがわかりますよね。
苦笑いで婦長にそう話したが、彼女は専門ではないので、何がなんだかわからなかったと思う。それにしても、まさに笑ってしまうような瞬間である。(うちの病棟婦長なら2人で大笑いになるんだけど、ここは内科病棟なのでそうならない)
エピソード的な幻覚妄想の履歴があり、しかも統合失調症でない人では、非定型精神病の幻覚妄想のエピソードの人たちが一部にいる。このような人たちは良い時は全く統合失調症に見えないし、幻聴があっても統合失調症に見えない。これらはスペクトラム的に統合失調症に繋がっているといえばそうなのだが、遺伝的にはそこまで関係が深くない。
総合病院ではやはり、もう一歩、身体的要因を持つ症状精神病が多い。この身体因の原因疾患は膨大であるが、自己免疫系疾患の派生の疾患群がけっこう多い。また筋肉系のものもみられる。(過去ログで出てくる全身打撲の人の幻覚妄想など)
免疫異常系疾患で入院中の人は落ち着いていれば、抗精神病薬を中止しても何も起こらないこともしばしばである。これは総合病院に入院していることがけっこう大きい。しかし、長期的には幻覚妄想が再燃する可能性がある。
だから中止すべきかどうかの判断には、悪くなった時の程度や症状の内容の吟味が必要であろう。内科病棟で看護できないほどの悪化を来たしうるなら、服薬しておいた方が良い。逆に昏迷系の人は悪化しても内科ではむしろ看護しやすいケースもある。
たまに統合失調症が誤診で、むしろ服用しない方が良い薬が入っていることがある。そういう時は薬を次第に整理し、例えばデパケンシロップだけだとか、抗うつ剤だけにすることもある。
薬物変更中、爆発的に悪化した場合、リエゾンの理念を考慮するに相当に失敗である。だから、わりあい慎重に変更するようにしている。
総合病院では、けっこうリスパダールOD錠が便利であることを学んだ。
僕は実は1回も処方したことがないのだが、看護師さんがOD錠を服用させたら、速やかに落ち着いたと言う話はかなり聴いたからである(もちろん主治医の処方)。
リスパダールは液剤よりOD錠の方が寝たきりに近い人たちには扱いやすいのかもしれないと思う。(臥床したまま服用させやすい)
リエゾンをしていて重要なことが1つ。
症状性の幻覚などは、実は内科的、あるいは外科的な疾患が現われるずっと前に出現していることも多いこと。たまに5年後に正体が現われることすらある。こういう場合、当初の幻覚妄想は症状性と診断するのは難しい。しかし統合失調症ではないという文脈で、たぶん症状性であろうと予見できることもあるのである。
アンダーグラウンドに免疫異常?が進行している時、その潜伏期に既に精神は変調を来たしていることもよく見られるのであった。
参考
非定型精神病像と免疫系疾患
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
パキシルはコーティングするのか?(のコメント欄参照)
アスペルガーと前頭前野
突然副作用が出てくるという謎
稀に現在、診ている人が本当に統合失調症なのか診断してほしいと言う依頼を受けることがある。リエゾンでの診察依頼なので、相談主は患者さん本人ではなく精神科以外の担当医である。
その患者さんが統合失調症かどうかは他科の医師にとって重大なことではない。一般病棟で穏やかに過ごされているなら尚更である。何か治療上の問題があって相談されることがほとんどで、学問的興味で相談された記憶はない。
例えば、
①抗精神病薬をこちらの判断で止めてしまったが、どうなのでしょうか?
②前医で、統合失調症の診断がつけられているが、薬は必要でしょうか?
などである。この文脈で診断の依頼が来る場合、統合失調症のことも、そうでないこともある。
例えば、内科科病棟で大変な精神症状を呈しているような状況で、「統合失調症かどうか」を相談されることはない。相談されるのはなんとか鎮静する方法である。病棟内適応をなんとか改善してほしいと言われるか、精神科病院への転院を依頼されることが多い。
他科の主治医が、自分の判断で薬を中止してしまうほど落ち着いている患者さんは、統合失調症でないこともしばしばである。これは必ずしも誤診ではなく、例えばセロクエルなどの穏和な非定型抗精神病薬が投与されておりレセプト的に診断名が挙がっているだけのこともある。紹介状の内容を見てもそんな感じだ(前医が誤診しているように思えないという意味)。
また、エピソード的に幻覚妄想が出現したため統合失調症と診断を受けている人もいるが、年配の人であるほど、統合失調症ではないことが多い。総合病院はなんだかんだ言ってお年寄りが多いからだ。これはたぶん誤診だが、操作的に診断するとそう言えなくもないので、真に誤診かどうかは謎である。少なくとも、僕は統合失調症とは言わない。
ある日、そういう相談があったので、病棟婦長(師長というべきか)と一緒にベッドサイドに診察に行った。その時、患者さんは床頭台で食事を摂っていた。声かけした瞬間、彼女はぱっと振り向いた。
振り向いた瞬間に統合失調症でないのがわかりますよね。
苦笑いで婦長にそう話したが、彼女は専門ではないので、何がなんだかわからなかったと思う。それにしても、まさに笑ってしまうような瞬間である。(うちの病棟婦長なら2人で大笑いになるんだけど、ここは内科病棟なのでそうならない)
エピソード的な幻覚妄想の履歴があり、しかも統合失調症でない人では、非定型精神病の幻覚妄想のエピソードの人たちが一部にいる。このような人たちは良い時は全く統合失調症に見えないし、幻聴があっても統合失調症に見えない。これらはスペクトラム的に統合失調症に繋がっているといえばそうなのだが、遺伝的にはそこまで関係が深くない。
総合病院ではやはり、もう一歩、身体的要因を持つ症状精神病が多い。この身体因の原因疾患は膨大であるが、自己免疫系疾患の派生の疾患群がけっこう多い。また筋肉系のものもみられる。(過去ログで出てくる全身打撲の人の幻覚妄想など)
免疫異常系疾患で入院中の人は落ち着いていれば、抗精神病薬を中止しても何も起こらないこともしばしばである。これは総合病院に入院していることがけっこう大きい。しかし、長期的には幻覚妄想が再燃する可能性がある。
だから中止すべきかどうかの判断には、悪くなった時の程度や症状の内容の吟味が必要であろう。内科病棟で看護できないほどの悪化を来たしうるなら、服薬しておいた方が良い。逆に昏迷系の人は悪化しても内科ではむしろ看護しやすいケースもある。
たまに統合失調症が誤診で、むしろ服用しない方が良い薬が入っていることがある。そういう時は薬を次第に整理し、例えばデパケンシロップだけだとか、抗うつ剤だけにすることもある。
薬物変更中、爆発的に悪化した場合、リエゾンの理念を考慮するに相当に失敗である。だから、わりあい慎重に変更するようにしている。
総合病院では、けっこうリスパダールOD錠が便利であることを学んだ。
僕は実は1回も処方したことがないのだが、看護師さんがOD錠を服用させたら、速やかに落ち着いたと言う話はかなり聴いたからである(もちろん主治医の処方)。
リスパダールは液剤よりOD錠の方が寝たきりに近い人たちには扱いやすいのかもしれないと思う。(臥床したまま服用させやすい)
リエゾンをしていて重要なことが1つ。
症状性の幻覚などは、実は内科的、あるいは外科的な疾患が現われるずっと前に出現していることも多いこと。たまに5年後に正体が現われることすらある。こういう場合、当初の幻覚妄想は症状性と診断するのは難しい。しかし統合失調症ではないという文脈で、たぶん症状性であろうと予見できることもあるのである。
アンダーグラウンドに免疫異常?が進行している時、その潜伏期に既に精神は変調を来たしていることもよく見られるのであった。
参考
非定型精神病像と免疫系疾患
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
パキシルはコーティングするのか?(のコメント欄参照)
アスペルガーと前頭前野
突然副作用が出てくるという謎