非定型精神病像と免疫系疾患
「双極1型とリボトリール」のエントリの続きを希望している人もいると思う。簡単にその後の経過に触れておきたい。実はここまでアップが遅かったのはあまり書きたくなかったからである。
前回のエントリでは
僕の患者さんで、双極1型が回復し、遂にリボトリールのみの処方になった人がいる。この人は謎の女性で、その経過も不思議で腑に落ちない点がいくつかあり、今回エントリとしてアップすることにした。
といった書き出しである。彼女はリーマスで寛解状態であったのだが、ある時、急に非定型病像を呈した。その症状は不思議なもので、歩けない、喋れないといったものである。ただ、意思の疎通はできる。吃音が生じており、円滑に話せないだけなのである。特に関節の疼痛を訴えており、普通の歩行も容易でない。こういう非定型病像のパターンは過去ログにも出てくる(参考)。
最初、この症状が出現した時、本人の躁うつ病としての症状推移(非定型的な色彩)とリーマスの双方が関与しているように思った。少なくとも、この状態だとリーマスは中止すべきと思った。徐々に悪くなって昏迷になるかもしれないからである。リーマスの代替薬としてリボトリールを選んだ。
その日、僕は彼女にこのように言ったのである。
貴方は躁うつ病の非定型病像を呈しているが、こういう症状は稀にみられることがある。これは身体的なものが影響している。今のところはそれが何かわからないが、のちに正体を現すこともある。
今の状態が良くなった時、貴方に限れば、躁うつ病は治癒か、それに近い寛解状態になるような気がする。しかしこの様子だと、なんらかの免疫に関わる慢性疾患が発病してもおかしくはない。疾患としては例えばリウマチ。しかし、その代償と言うのも変な言い方だけど、躁うつ病はもはや問題にならなくなるだろう。
それから数週間で非定型病像は脱したが、その後2~3ヶ月後くらいで手の朝のこわばりが出現したのである。僕が学生時代の恩師がリウマチ専門医だったため、そのクリニックでよく調べて貰うように伝えた。そのドクターは診察を受ける時、並みの整形外科医とは全然違うようなプロフェッショナルさを感じる。診察時の所見を重視しており、無駄な検査をほとんどしないのである。あれほど、X線などを使わない整形外科医はあまり見たことがない。
最近のリウマチの検査は検体を東京?まで送って調べるような方法があるらしい(僕は詳しく知らない)。かくして診断は、
早期関節リウマチ
ということがわかったのである。僕は彼女にあんなことを言わなければ良かったと思った。縁起が悪すぎ。まさに
ブラックな世界
その診断以降、彼女はシオゾールなどの薬物治療をしている。精神科薬はリボトリールのままだ。今のところ、リウマチ自体の症状はまだ軽いようである。リウマチを早期に発見できたとして、それが予後にどのように関係するのかは僕は詳しくない。
僕は彼女に、整形外科のドクターに、このようにリウマチに先行する謎の精神症状が生じることがありうるのか聞いてみてほしいと伝えていた。
彼の返事だが、そういうのはないということだった。まあ、そういうオカルト的な研究をする人はあまりいないと思う。
免疫系にせよ、そうでない疾患にせよ、あらゆる疾患はビーカーに水を注ぐことに例えると、ある臨界点を突破して水が溢れるように発病するような気がしている。
その9.5合目くらいで、なんらかの別の所見が出現してもおかしくないと思うのだが・・
僕は精神科医だからかもしれないが、そういう発病のイメージを持っている。
補足
後でちょっと思ったこと。
躁うつ病がリウマチが発病したために軽くなるなんて聞いたことがない。僕も通常はそう思っていない。むしろ精神面は悪くなることの方が多いかもしれない。しかし彼女はそうなるような気がしたので、ああいう風に言ったのだと思う。中期的な精神疾患の見通しである。これは今考えると、ホメオパシー的な発想だと思った。「アトピーを究極に治療すると喘息になる」と言うような考え方である。
参考
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎
前回のエントリでは
僕の患者さんで、双極1型が回復し、遂にリボトリールのみの処方になった人がいる。この人は謎の女性で、その経過も不思議で腑に落ちない点がいくつかあり、今回エントリとしてアップすることにした。
といった書き出しである。彼女はリーマスで寛解状態であったのだが、ある時、急に非定型病像を呈した。その症状は不思議なもので、歩けない、喋れないといったものである。ただ、意思の疎通はできる。吃音が生じており、円滑に話せないだけなのである。特に関節の疼痛を訴えており、普通の歩行も容易でない。こういう非定型病像のパターンは過去ログにも出てくる(参考)。
最初、この症状が出現した時、本人の躁うつ病としての症状推移(非定型的な色彩)とリーマスの双方が関与しているように思った。少なくとも、この状態だとリーマスは中止すべきと思った。徐々に悪くなって昏迷になるかもしれないからである。リーマスの代替薬としてリボトリールを選んだ。
その日、僕は彼女にこのように言ったのである。
貴方は躁うつ病の非定型病像を呈しているが、こういう症状は稀にみられることがある。これは身体的なものが影響している。今のところはそれが何かわからないが、のちに正体を現すこともある。
今の状態が良くなった時、貴方に限れば、躁うつ病は治癒か、それに近い寛解状態になるような気がする。しかしこの様子だと、なんらかの免疫に関わる慢性疾患が発病してもおかしくはない。疾患としては例えばリウマチ。しかし、その代償と言うのも変な言い方だけど、躁うつ病はもはや問題にならなくなるだろう。
それから数週間で非定型病像は脱したが、その後2~3ヶ月後くらいで手の朝のこわばりが出現したのである。僕が学生時代の恩師がリウマチ専門医だったため、そのクリニックでよく調べて貰うように伝えた。そのドクターは診察を受ける時、並みの整形外科医とは全然違うようなプロフェッショナルさを感じる。診察時の所見を重視しており、無駄な検査をほとんどしないのである。あれほど、X線などを使わない整形外科医はあまり見たことがない。
最近のリウマチの検査は検体を東京?まで送って調べるような方法があるらしい(僕は詳しく知らない)。かくして診断は、
早期関節リウマチ
ということがわかったのである。僕は彼女にあんなことを言わなければ良かったと思った。縁起が悪すぎ。まさに
ブラックな世界
その診断以降、彼女はシオゾールなどの薬物治療をしている。精神科薬はリボトリールのままだ。今のところ、リウマチ自体の症状はまだ軽いようである。リウマチを早期に発見できたとして、それが予後にどのように関係するのかは僕は詳しくない。
僕は彼女に、整形外科のドクターに、このようにリウマチに先行する謎の精神症状が生じることがありうるのか聞いてみてほしいと伝えていた。
彼の返事だが、そういうのはないということだった。まあ、そういうオカルト的な研究をする人はあまりいないと思う。
免疫系にせよ、そうでない疾患にせよ、あらゆる疾患はビーカーに水を注ぐことに例えると、ある臨界点を突破して水が溢れるように発病するような気がしている。
その9.5合目くらいで、なんらかの別の所見が出現してもおかしくないと思うのだが・・
僕は精神科医だからかもしれないが、そういう発病のイメージを持っている。
補足
後でちょっと思ったこと。
躁うつ病がリウマチが発病したために軽くなるなんて聞いたことがない。僕も通常はそう思っていない。むしろ精神面は悪くなることの方が多いかもしれない。しかし彼女はそうなるような気がしたので、ああいう風に言ったのだと思う。中期的な精神疾患の見通しである。これは今考えると、ホメオパシー的な発想だと思った。「アトピーを究極に治療すると喘息になる」と言うような考え方である。
参考
リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎