いきなり幻聴で発病する器質性の人 | kyupinの日記 気が向けば更新

いきなり幻聴で発病する器質性の人

初発の症状が幻聴で、その後、統合失調症に発展しない人がいる。これは音楽が聴こえるとか病理性が低いものではなく、もっと鬼気迫るというか深刻な幻聴である(参考)。世界没落体験を伴うこともある。

これは最初から統合失調症ではないのであるが、なにしろ幻聴は統合失調症の典型的な症状なので、統合失調症と診断されることも多いと思われる。特に若者だとなおさらである。

しかし、統合失調症と診断されないこともある。

これは当初から対人接触性がそれと異なっているからであるが、診断に困るので家族にはとりあえず「統合失調症が疑わしい」くらいに曖昧に告知する医師もいるようである。「典型的ではない」とか、「どうも変ですけど・・」くらいに言われることもある。

ある患者さんはアメリカに留学中に激しい症状が出現したという。特に初めて幻聴があった日に、

見ていた老人の顔が、みるみるホラー映画のように変化した。

という。彼はここはアメリカだからそうなのだろうか?と思ったらしい(←マイケル・ジャクソンのスリラーみたいな・・)。その日に幻聴も出現しているが、同日だから幻聴が初発といってよいと思う。ダラダラなんとなく発病したのではなく、○年○月○日○時とわかるのが特徴である。

このホラー映画のような所見は「不思議の国のアリス症候群」であるが、これは器質性疾患に出現することが多い(てんかん、症状精神病など)。統合失調症であったとしても器質性色彩の濃い所見である。

こういうタイプの精神疾患はスパッと短期間に寛解または治癒するか、長引いて精神疾患の重さ的に統合失調症とあまり変わらなくなるかどちらかである。初期にそれを予測するのは難しいが、治療を始めて数日経てば、なんとなく行方はわかる。初発してすぐ来院した場合はなおさらである。(参考1参考2

この疾患が統合失調症と異なる根拠の1つは、治療を勧めていくと対人接触性や目の動きが統合失調症とは異なっていることがある。良くなったときの様子が全く違うのであった。

初診時に昏迷状態かそれに近い状態だったりすると、その診断を保留することがある。霧が晴れないと前は見えない。

2~3日たって、全く統合失調症っぽくない人は、もう統合失調症に発展することはない。(つまり、このような幻聴の人は初診時に診断が確定しているようなものだ)。

器質性の幻視、幻聴は長引くと、なかなか消失させるのが難しいのは過去ログでも触れている。

だいたい、このタイプの人は抗精神病薬が奏功しないケースも多々ある。精神症状とメジャー・トランキライザーが噛みあわない。往々にして処方量が多くなるのである。

参考
ときどき頭のなかで音楽が聞こえます
海外で発病する人
統合失調症の発病の謎
死生命あり、富貴天にあり
現代的幻視・幻聴と希死念慮は似ているのか?
短期決戦に構える
待合室の若い女性患者
アスペルガーと前頭前野