統合失調症とエゾウコギ
今回の話は「アルプスの少女ハイジ」の続きになる。エゾウコギが統合失調症にどのように関与するか興味がある人もいるであろう。彼女の今までの臨床経過はエゾウコギの統合失調症への影響について、いろいろなことを暗示していて非常に興味深いと思った。
当初、エゾウコギを用いた理由は慢性的倦怠感があったからで、とりわけ統合失調症に対しての積極的な治療の意識はなかった。とにかく、大量の抗精神病薬を減量して小康状態になって以降、倦怠感が出て体調不良になっていたためだ。
エゾウコギの開始日、僕はカルテにこのように書いている。
体のきつさをずっと訴えているため、エゾウコギを使用する。
この日の処方
ジプレキサ 2.5mg
クレミン 50mg
ドグマチール 100mg
プリンペラン 2T
メトリジン 2T
ハルシオン 0.25mg
デパス 2mg
他便秘薬
(リスパダール換算 3mg)
その後ジプレキサを中止し、クレミンとルーランで治療を行うようになった。彼女は毎日15ccずつエゾウコギを飲み始めたが、最初は大きな変化がなかった。
ところが、1ヶ月目でめまいが改善してきたのである。これについて、当時はエゾウコギとの因果関係はあまり意識していなかった。その理由だが、毎月のように薬物変更をしていたので、そのためだろうと思っていた部分が相当にある。かなり時間が経って、それは重大な意味を持つと思うようになった。
彼女がエゾウコギで大きな変化が出現し始めたのはエゾウコギを開始後9ヶ月目からである。この頃から、どうも落ち着きがなく、いてもたってもいられないと頻繁に言って来るようになった。
この当時の処方(入院13ヶ月目)
クレミン 25mg
ルーラン 16mg
プリンペラン 2T
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
(他下剤)
(リスパダール換算 2.75mg)
約1年前に82kgで転入院してきて、約1年で65kgまで体重減少していた。あまり食事が取れず食が細かったのも無関係ではない。当初、不穏状態が出現した際、本人はイライラして他の人を蹴りたくなると言っていた。また朝9時頃に体がワーッとなる感じで、どうしようも自分がコントロールできない感じになると言うのだ。
僕は当初、エゾウコギのせいかどうかはともかく、相対的に薬が多い感じになり、薬と体のバランスが崩れてしまっているように感じた。EPS的な要素がかなりあると思った。リボトリールを追加し、特に興奮が酷い時はセレネースとアキネトンを0.5~1アンプルずつ筋注していたが、これは非常に即効性があると言えた。なぜなら注射針を指した瞬間、もう治っていたからだ(笑)
アカシジア的に捉えるなら、ルーランが最も悪いように見えるので、徐々にルーランを減量していったのである。
いつも朝が悪く、実際に殴りはしないが、「人を殴りたくなる」と言っているので、こんな場合、むしろ薬を増やす医師もいるかもしれない。僕は、彼女をもう1年も診ていたので、彼女の体の方が薬を減らしてくれと訴えているように感じた。しかし、急に減らすと脱抑制でかえって興奮を酷くする可能性もあり、セレネース、アキネトンを注射しつつ、時間を稼ぎながら減量して言ったのである。
彼女の興奮状態は容易には改善せず、しばらくの期間は頻繁に注射を実施している。減量とリボトリールやレキソタンの併用で約1ヶ月で注射治療からは脱出した。
当時の処方(14ヶ月目の終わり頃)
クレミン 25mg
ルーラン 8mg↓
リボトリール 1.5mg↑
プリンペラン 0.5T
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 1.75mg)
彼女は一時的な興奮状態を治めるために、セルフ・コーピングと呼んでも良いのかもしれない、編み物をするようにしたようだ。何かに集中すると、少し興奮が和らぐのだと言う。その時の作品がけっこう残っている。なかなかの出来栄えである。その後、そうしてもアカシジアっぽい症状がどうしてもとれないのでルーランを更に減量しセディールを追加している。
当時のカルテから
朝が興奮しやすいです。○月の終わりからです。昔の病院を思い出すとイライラする。ずっときついです。自分が自分を見えません。編み物はしている。どんどん痩せていっています。
レキソタンも悪くはないが減量中止する。ルーランは更に減量。いったんほぼ0に近くしてみる。
当時の処方(15ヶ月目の終わり頃)
クレミン 12.5mg
セディール 20mg
リボトリール 1.5mg
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 0.38mg)
体重は62.5kg程度まで減量。ほぼ毎日、なんらかの理由でセレネース、アキネトンを筋注している。アキネトンだけでよい場合もかなりある。本人はとにかく頭が興奮して本が読めなくなると言う。やはりこの量では統合失調症の治療は無理と思われるので一時クロフェクトン25mgを追加している。しかし鎮静が必要と思われたので、すぐにクロフェクトンを中止し、EPSも考慮しプロピタンに変更。その際にデパケンRも追加している。セディールは意味不明なので中止。
16ヶ月目
デパケンR 200mg↑
プロピタン 100mg↑
リボトリール 1mg↓
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 0.5mg)
この処方で急速に落ち着き、セレネース、アキネトンの必要がなくなった。デパケンRもプロピタンもいかにも中多半端な量だが、最初もう少し多めに入れたところ、長い期間の薬の少なかったのも大きいのか、倦怠感が出るのである。この量でほぼ十分と思われた
当時のカルテから
最近は注射をしていない。頭はすっきりしている。本は読めます。まだ集中力はない。きついのはきついですね。
今ひとつ、倦怠感が十分に取れていないので、クロフェクトンを追加し、プロピタンを減量した。
17ヶ月目
デパケンR 200mg
プロピタン 50mg↓
クロフェクトン 25mg↑
リボトリール 1mg
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 1mg)
リスパダール換算でジャスト1mgではないか!
この処方で、倦怠感が次第に薄れており、本人も今は元気になっていると言う。体重は62kg。最近は自然な感じで口紅をぬっている。服装も今は薄手のワンピースっぽいものが多い。彼女は前よりは淑女になっているのである。(なんだそりゃ?)
まとめ
エゾウコギは脳の神経細胞を活性化し、おそらく以前より少ない薬物量で治療可能になっていったのだと思われる。徐々に副作用が見られるようになり、従来の抗精神病薬がはじき出されたからである。
真っ先にはじき出されたのがルーランだったのが笑える。ルーランはいつも思うが、役割を終えると自ら去るのである。この辺がファンタジスタなのであろう。(←謎)
僕は自分の考えでいったん薬物をゼロ近くまで減量している。やはりゼロに近いと、彼女もコントロールが効かない感じになると訴えて抗精神病薬を再開している。当初、彼女は興奮についてよく訴えていたので、プロピタンを選択したが、その後、賦活目的でクロフェクトンを追加し併用としている。
今の状態は非常に落ち着いていて、ずっと以前よりずいぶん女性らしくなった。その意味では、エゾウコギの陰性症状、ジプレキサのような非定型精神病薬的な作用も見て取れる。
最近、彼女の父親に宛てた手紙を見せて貰った。そろそろ暑くなったので、衣類を持ってきてほしいと言った内容であった。統合失調症では、そういうのも陰性症状の改善に含まれるのである。
彼女はまだ治療継続中なのである。
当初、エゾウコギを用いた理由は慢性的倦怠感があったからで、とりわけ統合失調症に対しての積極的な治療の意識はなかった。とにかく、大量の抗精神病薬を減量して小康状態になって以降、倦怠感が出て体調不良になっていたためだ。
エゾウコギの開始日、僕はカルテにこのように書いている。
体のきつさをずっと訴えているため、エゾウコギを使用する。
この日の処方
ジプレキサ 2.5mg
クレミン 50mg
ドグマチール 100mg
プリンペラン 2T
メトリジン 2T
ハルシオン 0.25mg
デパス 2mg
他便秘薬
(リスパダール換算 3mg)
その後ジプレキサを中止し、クレミンとルーランで治療を行うようになった。彼女は毎日15ccずつエゾウコギを飲み始めたが、最初は大きな変化がなかった。
ところが、1ヶ月目でめまいが改善してきたのである。これについて、当時はエゾウコギとの因果関係はあまり意識していなかった。その理由だが、毎月のように薬物変更をしていたので、そのためだろうと思っていた部分が相当にある。かなり時間が経って、それは重大な意味を持つと思うようになった。
彼女がエゾウコギで大きな変化が出現し始めたのはエゾウコギを開始後9ヶ月目からである。この頃から、どうも落ち着きがなく、いてもたってもいられないと頻繁に言って来るようになった。
この当時の処方(入院13ヶ月目)
クレミン 25mg
ルーラン 16mg
プリンペラン 2T
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
(他下剤)
(リスパダール換算 2.75mg)
約1年前に82kgで転入院してきて、約1年で65kgまで体重減少していた。あまり食事が取れず食が細かったのも無関係ではない。当初、不穏状態が出現した際、本人はイライラして他の人を蹴りたくなると言っていた。また朝9時頃に体がワーッとなる感じで、どうしようも自分がコントロールできない感じになると言うのだ。
僕は当初、エゾウコギのせいかどうかはともかく、相対的に薬が多い感じになり、薬と体のバランスが崩れてしまっているように感じた。EPS的な要素がかなりあると思った。リボトリールを追加し、特に興奮が酷い時はセレネースとアキネトンを0.5~1アンプルずつ筋注していたが、これは非常に即効性があると言えた。なぜなら注射針を指した瞬間、もう治っていたからだ(笑)
アカシジア的に捉えるなら、ルーランが最も悪いように見えるので、徐々にルーランを減量していったのである。
いつも朝が悪く、実際に殴りはしないが、「人を殴りたくなる」と言っているので、こんな場合、むしろ薬を増やす医師もいるかもしれない。僕は、彼女をもう1年も診ていたので、彼女の体の方が薬を減らしてくれと訴えているように感じた。しかし、急に減らすと脱抑制でかえって興奮を酷くする可能性もあり、セレネース、アキネトンを注射しつつ、時間を稼ぎながら減量して言ったのである。
彼女の興奮状態は容易には改善せず、しばらくの期間は頻繁に注射を実施している。減量とリボトリールやレキソタンの併用で約1ヶ月で注射治療からは脱出した。
当時の処方(14ヶ月目の終わり頃)
クレミン 25mg
ルーラン 8mg↓
リボトリール 1.5mg↑
プリンペラン 0.5T
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 1.75mg)
彼女は一時的な興奮状態を治めるために、セルフ・コーピングと呼んでも良いのかもしれない、編み物をするようにしたようだ。何かに集中すると、少し興奮が和らぐのだと言う。その時の作品がけっこう残っている。なかなかの出来栄えである。その後、そうしてもアカシジアっぽい症状がどうしてもとれないのでルーランを更に減量しセディールを追加している。
当時のカルテから
朝が興奮しやすいです。○月の終わりからです。昔の病院を思い出すとイライラする。ずっときついです。自分が自分を見えません。編み物はしている。どんどん痩せていっています。
レキソタンも悪くはないが減量中止する。ルーランは更に減量。いったんほぼ0に近くしてみる。
当時の処方(15ヶ月目の終わり頃)
クレミン 12.5mg
セディール 20mg
リボトリール 1.5mg
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 0.38mg)
体重は62.5kg程度まで減量。ほぼ毎日、なんらかの理由でセレネース、アキネトンを筋注している。アキネトンだけでよい場合もかなりある。本人はとにかく頭が興奮して本が読めなくなると言う。やはりこの量では統合失調症の治療は無理と思われるので一時クロフェクトン25mgを追加している。しかし鎮静が必要と思われたので、すぐにクロフェクトンを中止し、EPSも考慮しプロピタンに変更。その際にデパケンRも追加している。セディールは意味不明なので中止。
16ヶ月目
デパケンR 200mg↑
プロピタン 100mg↑
リボトリール 1mg↓
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 0.5mg)
この処方で急速に落ち着き、セレネース、アキネトンの必要がなくなった。デパケンRもプロピタンもいかにも中多半端な量だが、最初もう少し多めに入れたところ、長い期間の薬の少なかったのも大きいのか、倦怠感が出るのである。この量でほぼ十分と思われた
当時のカルテから
最近は注射をしていない。頭はすっきりしている。本は読めます。まだ集中力はない。きついのはきついですね。
今ひとつ、倦怠感が十分に取れていないので、クロフェクトンを追加し、プロピタンを減量した。
17ヶ月目
デパケンR 200mg
プロピタン 50mg↓
クロフェクトン 25mg↑
リボトリール 1mg
デパス 2mg
ハルシオン 0.25mg
補中益気湯 7.5g
他下剤
(リスパダール換算 1mg)
リスパダール換算でジャスト1mgではないか!
この処方で、倦怠感が次第に薄れており、本人も今は元気になっていると言う。体重は62kg。最近は自然な感じで口紅をぬっている。服装も今は薄手のワンピースっぽいものが多い。彼女は前よりは淑女になっているのである。(なんだそりゃ?)
まとめ
エゾウコギは脳の神経細胞を活性化し、おそらく以前より少ない薬物量で治療可能になっていったのだと思われる。徐々に副作用が見られるようになり、従来の抗精神病薬がはじき出されたからである。
真っ先にはじき出されたのがルーランだったのが笑える。ルーランはいつも思うが、役割を終えると自ら去るのである。この辺がファンタジスタなのであろう。(←謎)
僕は自分の考えでいったん薬物をゼロ近くまで減量している。やはりゼロに近いと、彼女もコントロールが効かない感じになると訴えて抗精神病薬を再開している。当初、彼女は興奮についてよく訴えていたので、プロピタンを選択したが、その後、賦活目的でクロフェクトンを追加し併用としている。
今の状態は非常に落ち着いていて、ずっと以前よりずいぶん女性らしくなった。その意味では、エゾウコギの陰性症状、ジプレキサのような非定型精神病薬的な作用も見て取れる。
最近、彼女の父親に宛てた手紙を見せて貰った。そろそろ暑くなったので、衣類を持ってきてほしいと言った内容であった。統合失調症では、そういうのも陰性症状の改善に含まれるのである。
彼女はまだ治療継続中なのである。