徒然なるままにアミスルピリドとロナセン | kyupinの日記 気が向けば更新

徒然なるままにアミスルピリドとロナセン

ロナセンも徐々に処方を増やし、既に20名近くに使ってみた。一度、このブログで全然脱落者が出ないなどと書いたが、確かにジプレキサやエビリファイのように処方した翌日か翌々日くらいに止めざるを得ないようなパターンがほとんどない。

今のところ脱落者は5~6名ほどだが、新薬は何かあれば早めに中止するのでこの程度になっている。止めた人でも1週間くらいは服用を続けていることが多く、今までの薬物と一風違う。ロナセンは、あまり鎮静をしないわりに急激な悪化を来たさないところは好感が持てる。

あと、ロナセンは追加で処方した時、患者さんにとって少ない量ならそれほど飲み応えがないように見える。よく聴いてみると、幻聴は減りましたなどと言うので陽性症状には効いてはいるのだろう。

まだ少ない量しかまだ処方していないが、EPSがあんがい出ない。(8mg以下だけど)ある患者さんは非常に振戦が出やすかったのだが、ロナセンを上乗せ追加しても振戦の悪化もなく陽性症状が減少している。

効果を及ぼすポイントがジプレキサやコントミンのようにドロドロと広くなく、ピンポイントな感覚。その点で軽い印象がある。

ある患者さんは表情がかなり良くなっているので、やはり非定型っぽい薬だと思った。ただ、この患者さんは本質的に良くなっているのかどうかがまだ判断できない。

アミスルピリドという日本で未発売の非定型抗精神病薬がある。これはベンズアミド系でドグマチール(スルピリド)と同じ系統に属する。これは低力価の薬物で数百ミリ単位~時に1000mgを超えて使うらしく、高プロラクチン血症や肥満がみられる点でもドグマチールに似ている。

アミスルピリドはドパミンD2、D3受容体の選択的拮抗薬と言われている。このD3受容体についてはまだよくわかっていないのであるが、近年なっていろいろな精神症状と深い関係があることが知られるようになった。

抗パーキンソン薬で特にD2に比べD3に親和性が高い非麦角系ドパミンアゴニスト、ビ・シフロールは不安感を改善し気分を明るくするといわれる。しかしこの薬は幻覚妄想などの副作用がやや多いとされている。一方やはり非麦角系ドパミンアゴニストでD2、D3の親和性の比がドパミンに近いレキップは、幻覚妄想などの副作用が出にくいといわれている。つまりD3受容体は良くも悪くも精神症状に大きく影響していることが推定される。

僕は時々ブログでも書いているが、近くの総合病院にリエゾンに出かけている。そこでは神経内科もあるが、レビー小体型認知症が正しく診断されているのを見たことがない。レビー小体型認知症とは、ここ10年くらいで言われるようになった精神疾患であり、ごく簡単に言えば、「アルツハイマー型認知症」「パーキンソン病」「幻視」をたして3で割ったような疾患である。

この疾患は、僕がリエゾンに行っている病院の神経内科ではたいていパーキンソン病(症候群)と診断されているが、これはこれで必ずしも間違いとは言えない。典型的な神経内科医の木を見て森を見ないパターンであるが、「レビー小体型認知症は存在しない」と言う人もいるくらいなので、もしそうなら「パーキンソン病」で間違っていない。なぜなら、パーキンソン病は書物を見ると、幻覚妄想も出るし認知症も出ると書かれているからだ。(というか、こっちも新しい病名にはいい加減うんざりしているというのも相当にある)

レビー小体型認知症の幻視は「子供が来ている」というのが多い。彼らは子供の幻覚を見るのである。僕は「お坊さんが来ている」というのも聞いたことがある。お坊さんは一休さんだったのかもしれない。(一般にアルツハイマー型認知症では女性が多いが、レビー小体型認知症では男女、五分五分なので相対的に男性をよく診る感じになる。)

レビー小体型認知症は、パーキンソン症状を治療しようとすると精神症状が悪化し幻覚を治療しようとするとパーキンソン症状が悪化するという、いわゆる将棋で言うところの詰んだ形になっている。

パーキンソン症状に最も影響しないような抗精神病薬といえば、セロクエルがあるが、これでさえ、レビー小体型認知症の人には副作用が出るので、セロクエルもやはりD2遮断作用があると気付くのであった。(セロクエルはプラセボとEPSの出現において有意差がないと言われている)

レビー小体型認知症の人はセロクエルの処方で背中が曲がりやすい。おばあちゃん、背中を叩きましょうか?と言ったところである。結局、精神症状にはツムラ抑肝散くらいが無難だし、わりあい効果があるのである。レビー小体型認知症の人たちにはセロクエルでさえ重荷である。仕方なく使うこともあるのであるが。神経内科では、ビ・シフロールなどの抗パーキンソン薬の副作用もあるのだろうが、精神症状が更に悪化して僕に相談が来るパターンも見られる。いずれにせよ、こういう患者さんは治療が難しいのである。

レビー小体型認知症はアリセプトの有効性が高い。この反応性の高さが逆に診断の根拠にもなりうるくらいである。しかしながら、総合病院の療養型病棟に在住するレビー小体型認知症の患者さんにはアリセプトが処方されていることがあまりにも少ない。というのは、必死でパーキンソンへの薬物療法のみ実施され、アルツハイマー型認知症とは思われていないからである。(実はアリセプトにはレビー小体型認知症への正式な適応はない)

さて、アミスルピリドはシナプス前受容体に作用し、低い用量でドパミン伝達を増加させる。こういう少量での通常との逆の作用はドグマチールにもあるような感覚がある。(自信なし)

ロナセンは薬物プロフィールを見ると、とてつもなくD2遮断作用が大きいように書かれており、D3の記載すらない。ロナセンのD3受容体への作用はこのような円グラフでは語られないが、D3受容体への親和性が大きいことも特徴のひとつなのである。きっと、D2、D3、D4はD2系ドパミン受容体として、ひとくくりにされていて、まとめて書かれているのだと思う。大日本住友製薬はD3も含めた円グラフを提供すべきだったと思う。というか、僕が本社の営業部長ならそうした。

だからアミスルピリドが合っている人が、ロナセンがフィットすることは十分にありうる。

余談だが、抗パーキンソン薬のビ・シフロールには「病的賭博」なる恐ろしい副作用がある。よくもまあ、薬の副作用にこのようなものがあると思わないか?

賭博の嗜癖状態を強力なD3受容体アゴニストが生じさせるとしたら、逆に「病的賭博」のようなGA(ギャンブラーズ・アノニマス)くらいしか良い方法がないような精神疾患?にすら、良い薬物療法が出現することを暗示している。

僕は一度だけ、双極性障害の治療中にジプレキサによる「病的賭博」の副作用を経験したことがある。「病的賭博」なんて普通、薬による副作用なんて気付かない。なぜなら、何も薬を飲んでいない人にもそんな人がたくさんいて、薬物との因果関係を思いつかないからである。

その人は「病的賭博」の出現に異和感があった。不連続に突然に出現したからだ。ジプレキサの中止後、急速に収束し90%は収まったが、完全には消失していない。しかし病的というほどのものではなくなっている。これはいったん生じたら、希死念慮のように癖になるようなものなのかもしれないと思った。双極性障害はアルコールやギャンブルなどの依存を来たすことがあり、きっと疾病特異的な親和性もあったのだろう。

今回のエントリはドストエフスキーの「賭博者」のタイトルにしようかと思っていた。しかし、あまりにも内容からかけ離れているのでやめた。実は今のタイトルも相当に変だと思う。だから「徒然なるままに」を頭に付けたのであった。

(このエントリはロナセンやアミスルピリドが病的賭博に有効と言う意味ではない。読者の「さ」さんへのアンサーになっている。「連休の間の平日」のコメント欄参照)