ルーラン12mg | kyupinの日記 気が向けば更新

ルーラン12mg

今、診察に行っている病院の外来で診ている女性患者さん。この人は何回かこのブログで紹介されている。

セカンドオピニオン」から
エビリファイ12mgで治療されていた若い女性患者さんだが、エビリファイのために次第に病状が悪化していた。エビリファイの場合、処方したその夕方か翌日くらいにはっきりわかるように悪化するケースと、徐々にタイタニックが沈むように静かに悪化していくケースがある。(中略)その女性は以前ロドピンやリスパダールで治療されていたようであった。過去のカルテによると、リスパダールは悪くはないように見えた。僕は直感的にはその女性はジプレキサが良いように思った。理由はなんだと言われても困る。これは感覚的なものだ。僕は、それまでの薬をすべて中止するように指示し、夕食後にジプレキサザイディス10mgとセレネース液2mlだけ服用するように伝えた。この量も感覚的なものなのである。次回の受診時には、それまでの病状が嘘のように回復していたのであった。

ジプレキサ5mg」から
この患者さんだが、ジプレキサザイディス10mgで様子を観ていたのであるが、体重が1.5kg増えたというので少しジプレキサを減量することにした。体重はジプレキサの用量に依存しないという話なのだが、もう少し減量してみる価値はある。彼女にはジプレキサを5mgにするので、2~3日に1回くらい適当にセレネース液を1~2ml服用しておくように伝えた。(中略)彼女はジプレキサザイディス5mgしか服用しなかったらしい。曖昧な言い方をしたのもあるが、何も変化がなかったのでセレネース液は必要なかったという。かくして、結局、ジプレキサザイディス5mgになったのである。

「オイ見たか、コラ。ジプレキサは5mgで良いようになっているんだ」

と言うのは冗談。ところで、彼女にとってジプレキサはどうみても既発売の抗精神病薬のなかで最も合っていると思われる。なぜなら軽度にお腹がすく以外に副作用が皆無だし単剤で完結しているから。この処方だと、今後、よほどのことがないと増悪しそうにないのもある。彼女に、「すべての薬の中で、貴方にはジプレキサが最も合っているから」と極めて断定的に言った。だって、エビリファイも失敗しているし。そんな風に言うと、彼女は思わず笑い始めたのである。なぜそんな風に言ったかというと、これは事実だし、そういう風に思うから、体重増加は自分で工夫してなんとかしてほしいという気持が込められているのである。


この後の経過なのだが、精神面は非常に安定していたのに、体重51kgが55kgにまで増えてしまった。彼女によれば食事を注意していても増えるのだという。体重を増加させる抗精神病薬では、直接、食欲を亢進させ増やすものと、そう食欲は変化がないのに自然に体重が増えていくものがある。これは吸収や代謝を変化させているのかもしれない。

数ヶ月で体重1割増しというのは放置できない。彼女はもう服用したくないというので、ジプレキサを諦めることにした。僕はこういう患者さんの希望がある場合、出来る限りそれなりの対応をすることにしている。しかし彼女の場合、既にエビリファイで失敗しているわけで、選択肢は限られていると言えた。

結局、ルーランに切り替えることに決めた。

ジプレキサ5mgに相当する精神病薬
リスパダール  2mg、
ルーラン    16mg
セロクエル   132mg
エビリファイ  8mg
セレネース   4mg
トロペロン   2.6mg
コントミン   200mg
クレミン    66mg
プロピタン   400mg


大日本住友製薬はルーラン16mg処方を推奨している。この水準はD2受容体遮断率が最も治療的に適切な量になるらしい(統計的な意味)。これまでのジプレキサ5mgは偶然、この推奨量のルーラン16mgに相当している。最初、半分だけジプレキサを変更する方法もあるが、一刻も早くジプレキサをやめたいという希望があったので、完全に切り替える方法にした。これはややリスクが高いが、ルーランは他の非定型に比べ酷い失敗が少ない薬物なのである。16mgに変更してしばらく様子をみていた。

診察時にいつも同伴している母親によれば、ルーランに切り替えた後、ずいぶん外出するようになったという。それと、家の手伝いを良くするようになったらしい。こういう風な話を聞くと僕は素直に喜べない。この気持は精神科医でないとなかなかわからないと思うが。

こんな感じで賦活していって安心していたら、そのまま墜落してしまうことも多いのである。とりわけエビリファイは。とにかくその時点では、はっきりと悪くなっているわけではないし、このまま不安を感じつつ様子を見ることにした。精神科医は、こういう不安感にも耐えなければならない。もうジプレキサに戻ることはできないからだ。

それから2週間ずつ様子を診ていたのであるが、どうもかなり良くなっているようなのである。ジプレキサより更に高いレベルで。

良くなっていること。
① 自覚的には体が軽くなった。手伝いも苦にならない。
② 本がすごく読めるようになった。
③ 頭の中が軽くなった。
④ 外出も多くなった。古本屋さんなどにも良く行く。
⑤ よく笑顔が出るようになったという(母親の話)


彼女によれば、8月中に15冊も本を読んだという。ちょっと興味があったので、どのような作家の本を読むのか聞いてみた。吉本ばななさんなどの著作を読んでいるらしい。結果的にはルーラン16mgでもジプレキサとほぼ同じような精神症状を維持できていると言えるが、彼女と母親の話を総合すると、ジプレキサよりルーランはやや賦活的なのがわかる。体重だが、ジプレキサを中止した時点から3kgくらい減少している。今は52kgくらいなので、これを見るとルーランは体重への影響が少ないことがわかる。

ルーランとジプラシドンはセディールの派生薬物で兄弟といえるが、僕はジプラシドンは使ったことがないが、なんとなくルーランの方がより優れているような気がしている。QT延長の副作用がないだけでも。

最近、ルーラン16mgは少し彼女には多すぎるような気がしたので12mgに減量してみた。これは最終的に4mgを目指す含みもある。まあ4mgは無理かもしれないが、8mgくらいは可能のような気がしている。とりあえず12mgは問題ないみたい。本人に変更の感想を聞くと、自覚的には変化がないらしい。8月に本を15冊読んだという時期はもう12mgになっていたので、ひょっとしたら少し関係しているのかもしれない。

自覚的にはルーランは12mgでも全く副作用がないらしい。眠剤や下剤も彼女には必要がないので、今はルーランだけ服用している。

参考
ルーランの謎(前半)
ルーランの謎(後半)
セディール
今は楽しみにしていること