失明の女性患者とルーラン | kyupinの日記 気が向けば更新

失明の女性患者とルーラン

リエゾンというのは、昔はコンサルテーションと同じような意味で言っていたけど、今は少し違うのかもね。毎週、リエゾンである総合病院に往診している。主に内科、外科、整形外科リハビリテーション科の入院患者さんを診ている。婦人科や脳神経外科はない。やはり、老人のせん妄を診ることが多いが、たまに統合失調症やうつ病などの患者さんもいる。

1ヶ月ほど前に、糖尿病性網膜症のために失明状態の女性患者さんを診る機会があった。夜間、興奮して大声を出すような患者さんだった。一般に、目の手術(白内障など)の直前に精神的に不安やうつ状態を呈する人がいる。やはり目はとても大切な感覚器官だからであろう。術前に普通の手術以上にプレッシャーがかかるのである。

今回の患者さんの場合、少し前に糖尿病のために失明していたのであった。糖尿病がなければセロクエルとかジプレキサくらいが良さそうだが、こういう風に糖尿病合併症があると処方できる薬物は限られる。(セロクエル、ジプレキサは糖尿病には禁忌) 普通ならリスパダール液くらいが良いんだけど、こんな風に老人でしかも統合失調症でもなんでもない人には少しリスパダールは強い。まあこの場合は、リスパダールの少量でも良いとは思った。

しかし、目が見えないような状況を考えるに、しかも不安状態を伴うケースは、ルーランが合いそうなのである。これはルーランの骨格にセディールという抗不安薬の骨格が入っていることも関係がある。また、女性には体重増加の副作用が少ないのと高プロラクチン血症を来たさない点でルーランは相性がよい。そういうことを考えつつルーランを選択。ちょっと量が難しいのだけど、かなり大声も出ていたというし、4mgを2錠、つまり1日8mg処方してみた。1週間後に行ってみたら、なんとすごく改善して、この人はこんな人だったんだと思えるほどしっかりとしていた。ルーランを服用し始めてからは、リハビリに行く時も看護師さんにきちんとねぎらいの挨拶をしていくらしい。

この人、感覚がすごくて僕が背後に来ただけで、気配で僕が来たとわかるんだ。行った時に目が見えないのに先に挨拶されるから、ちょっと不思議に思う。ルーラン8mgだけど、4mgでも良かったかもと思っている。この患者さんの場合、8mgでも全く副作用はない。

セディールはセロトニン1A部分アゴニストで、海外での類似の薬物として、ブスピロン(本邦未発売)が有名。セディールは抗不安作用の発現がいやに遅いけど、ルーランのこの速さは何なんだ? ひょっとしたら、ルーランの活性代謝物(ID-15036)のセロトニン2Aアンタゴニスト作用の発現はすごく早いのかもしれないと思ったりする。(抗D2作用も含め)

ルーランは不思議なことに、4mg以下で素晴らしい非定型的な抗精神病作用を発揮する。少ない量の方が良さが際立つのである。そういうわけで、うちの病院ではルーラン2から4mgでコントロール良好な人が数人いる。10人まではいないけどね。

参考
ルーラン
セディール
ルラシドン
SDA